レベル143-1 予定の変更もやむをえないものです
驚く事に、三ヶ月は何事もなく過ぎ去った。
兵士見習い達は順調にやり方を身につけ、妖ネズミ相手なら危なげなく戦っている。
名目だけの監督であるご婦人も、相変わらず適度な距離を置いて接してくる。
確認は出来ないが、レベルが上がったらしい見習い達は、数を更にこなす事が出来るようになっていった。
解体作業の方もやり方をおぼえたようで、手際よくさばいている。
更にあと三ヶ月もすれば、問題なく妖ネズミは倒せるようになる。
調度その頃、トオル達の所の新人達も次のレベルに上がった。
それを見て、トオルは開拓開墾の護衛に出ている者達と交代させる事にした。
開拓開墾の方に出向いている者達も、既にレベル4を超えていた。
妖犬相手でも十分に対処が出来る。
トオルの望んだ状態になってきていた。
兵士見習い達の教育はサトシとレン達に任せ、妖犬退治に戻る事にする。
レベルの上がった者達が増加するので、より確実な稼ぎが期待できる。
目標が更に近づいてくるのを感じた。
予想通り成果はかなりのものとなった。
妖犬がひっきりなしに襲いかかってくるのもあって、戦果はどんどんと上がっていく。
広めにとってある星形の陣地を利用し、餌を各所に配置してるのも効果があったようだ。
一カ所だけでなく、複数の箇所に妖犬が群がってくる。
三角形に出っ張った先に餌を吊しておくと、左右の面から妖犬が群がってくる事になる。
レベルが足りなければ対処のしようがなかったかもしれない。
それが今だと楽に倒せる。
左右から押し寄せるという事は、こちらがそれほど動き回らずに済むという事でもある。
突き出してくる頭めがけて刃を振りおろしていくだけでよい。
柵が悲鳴を上げるので手早くやらねばならないが、それが出来る程にトオル達は成長していた。
稼ぎが順調に増え、資金も貯まっていく。
それと同時に様々な考えに具体性が求められていく。
どの場所に拠点を作り、どのくらいの期間で完成するのか。
今の所、開拓開墾をしてるあたりに構えようとは思っているが、単純にそれだけでは済まされない。
開拓地の近くにしてもどの場所にするのかが求められる。
村の近くだと、開拓開墾の邪魔になりかねない。
そうでなくても、モンスターを倒してる場所が将来田畑になるかもしれない。
そうなると、拠点からモンスターを倒しにいくまでの移動時間がかかる事になる。
かといって遠すぎても今度は不便になる。
モンスターに囲まれて孤立する危険も高まる。
建築するにしても、そこまで材料を持って行く事が難しくなる。
それに建築中は現地に泊まり込みになる可能性もある。
その場合にどうやって安全性を確保するか。
問題はまだまだ山積みだった。
「まだ早いのかな」
所持金と必要になる事を書き出した紙を眺めてそう思ってしまう。
出来るかどうか分からなかった頃と違い、実際に出来ると感じられる今の方が不安が大きい。
現実性が増したせいかもしれないが、発生しうる困難が更に見えてくる気がしていた。
なぜかレベルアップしてる経営や運営関連の技術のおかげかもしれない。
今の状況ではまだまだ実現は難しいのを感じる。
(とは言っても、自分達の居所を確保はしないといけないし)
打って出るには人数が必要だし、その人数を収容する場所は絶対必要である。
変わる事のないこの事実の打破には、自分達で場所を用意する事だった。
兵士育成のための受け入れ場所である宿泊用の小屋はある。
これをいつまでも使ってるわけにはいかない。
あくまでもこれは兵士の育成用であり、トモノリやその一族の貴族達の物である。
トオルはそこを使わせてもらってるに過ぎない。
相手の都合で追い出される可能性もある。
(だとして、どうするか)
遠く離れた場所に設置するのは、様々な観点からまだ難しいと考えられる。
だとして、出来る事やしなくてはいけない事は何か。
先に進むには、まだまだ準備が必要だという事を思い知る。
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