表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その6 たぶん、次への一歩だと思われる何か

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/251

レベル129-1 そこまで必死になることかと思ってしまう

 トモノリがトオルにした話しは、程なく外部に流出していく事となった。

 それは村に伝わり、仲間に伝わる。

「なんで?」

と疑問に思うも、そう思った頃には既に周りに伝播していた。

 おかげでサトシからはからかわれ、村の者達に囲まれる。

 恐ろしい事に、行商人すらも、

「なんか嫁取りの話しが出てるんだってな」

などと聞かれる事に。

 どこからこれだけ話しが流れ出したんだ、と思った。

 答えは次の月に素材を運び込んだときに判明した。

「周りに拡散しておいた」

とトモノリの正直な発言によって。

 トオルを唖然とさせるに十分であった。

「こういう事は時期を見て公表しておかないとな。

 他を牽制するためにも」

 それが上手なやり方かは分からないが、トオルの周囲に様々な動きを出現させた。



「本当にそんな話しが出てきてるのか?」

 わざわざトオルの所にやってきた村長達が、そんな事を訊ねてくる。

 ここまで広まってる以上、嘘を吐く必要もない。

「まあ、そうですね」

と適当に答えておいた。

 村長の顔色と表情はみるみる変わっていった。

「それで、返事は?」

「いや、まだしてないから。

 つーか、俺が相手になるわけないでしょ」

 これまたトモノリにしたような返事をしておく。

 しかし村長はそうは思わなかったようで、トオルの肩を掴んでつめよった。

「なあ、それならうちの娘はどうだ?

 貴族様じゃないし、変な遠慮はいらんぞ」

「は?」

 予想外の事だったので面食らってしまった。



「で、兄貴。

 どうすんの?」

 サトシも面白半分、真面目半分に訊ねてくる。

「おまえもかよ」

「だって、トモノリ様に直接聞かれたし」

「なんて風に?」

「えっと確か、『トオル君には決まった相手がいるのかな?』って感じだったと思う」

「で、なんて答えた」

「『もちろんですよ、トモノリ様。

 うちのサツキとレンは兄貴の女ですから』って…………ぐえ!」

 容赦なく拳骨を脳天にたたき落としてやった。

 毎度の事だが、どうしてこうも二人とくっつけたがるのかが分からない。

 二人がよい娘なのは分かっているが。

「けどさ、兄貴。

 あの二人じゃなけりゃ、他の誰かに決められちまうんじゃねえの?」

 なかなか鋭い事を言ってくる。

 確かに様々な手段を用いて押し切られる可能性はあった。

「兄貴は押しに弱いし」

 いらん事を言われて少々むかつく。

「のらりくらりとかわしたいよ」

「トモノリ様とか相手に?」

「……結構つらいかも」

「だよね」

 今のトモノリは何をしてくるか分からない怖さがある。

 図太くなったと言えるかもしれない。

 奥方の一件以来、何かが変わったような。

 頼もしいのは確かだが、こういう時には面倒になる。

 そうでなくても権力を持ってる相手である。

 迂闊な事は出来そうにない。



「それだと色々厄介そうだな」

 行商人の口からも

「いっそ、全く関係ない所から嫁を取るか、身内で固めたほうがいいじゃないか」

「そういう人がいればね。

 って、それよりもさ、なんで結婚する事を前提なのさ。

 しないって方向はないのか?」

「ここまで来たらなあ。

 いっそ面倒のない相手と結婚しちまったほうが、他の連中も諦めるだろうよ」

 トオルが裕福になって、妾などを囲う事が出来るようになればその限りではないが。

 行商人は、その事はあえて口にしなかった。

 言えば余計に面倒が振ると思って。

(でもなあ)

 一抹の不安はある。

(貴族様なら、別に奥方が一人にこだわったりもしないだろうし)

 側室に妾は珍しくもない。

 もっとも、実際にはあまりそういった事もない。

 貴族は貴族で色々と面倒があり、そうそう二人以上の女房を得る事もない。

 家庭内において、奥方が二人以上いるのは色々と問題もあると聞く。

 それに、奥方の背後にいる家の影響もあるので、家庭内で衝突が起きかねない。

 あえて両者を引き入れて、余計な口出しをさせないという策もあるようだが、基本的には好ましい事ではないとか。

 なので、そこまで無理強いするとも考えにくかった。

 トオル相手なら遠慮無くやるかもしれなかったが。

(こればかりはそうなってみないと分からんしなあ)

 予想は出来るが、予知は出来ない。

「ま、気をつけた方が良いな。

 本当に嫁を取る以外に対抗手段がなくなるかもしれないし」

「勘弁してもらいたいよ」

 嘆くトオルに行商人は、精算の終わった代金と領収書を渡す以外に何も出来なかった。

「それでな」

「うん?」

「どうせなら、うちから嫁をもらわんか?

 商人仲間で適当な娘を見繕って……」

「あんたもか!」

 ニヤニヤと笑いながら言ってくる行商人に、トオルは叫ばずにはおれなかった。

 それが冗談であると分かっていても。



 そんなわけで、トオルの周囲は慌ただしくなっていった。

 冗談で言ってる連中はともかく、本気で考えてる者達はトオルへの接触を増やしていく。

 特に活動場所になってる村の村長は何かとトオルの所にやってくるようになった。

 目的が見え見えだったが、接触してくるのを遮るわけにもいかない。

 話しの内容は世間話程度のもので、本題に入ってくる事もなかったが。

 しかし、言葉の端々から何かをつかみ取ろうとする気配を感じた。

 一瞬足りとて気が抜けない状況が続いていく。

 さすがに他の村の者や、トモノリが直接やってくるような事は無い。

 それだけが救いに思えた。

 素材を運ぶ時は憂鬱になるが。

 トモノリは当然として、なぜか他の村の村長達も領主の村に顔を出すことが増えたからだ。

 トオルのいる時を見計らって。

 続きを19:00に投稿予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ