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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その6 たぶん、次への一歩だと思われる何か
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レベル128-2 いきなりそんな話をされたら驚きますよ、奇襲としては正しいですが

「何がどうしたんですか、いったい」

 呼び出されたトモノリの執務室で、トオルはげんなりというか憔悴というか。

 押し寄せる疲労感と困憊に肩が重くなる。

 いきなり結婚がどうのと言われたせいだ。

 考えてもいなかった事なので、何をどう言っていいのかも分からない。

「お前さんの年齢を考えればおかしくはないだろ」

「そりゃあまあ…………そうでしょうけど」

 言われてみて、確かにそうだなと思う。

 前世でも二十代の半ばになれば結婚をしててもおかしくはない。

 それ比べて結婚の早いこの世界では、トオルの年齢ならもう嫁さんがいてもおかしくはない。

 もちろん、結婚できるような状態にあればであるが。

 男で十五歳から二十歳くらいまでに、女ならそれこそ十歳で結婚というのもおかしくはない。

 実際に嫁入りするのはだいたい十二歳から十五歳くらいの間であるが、何にしても前世よりは早い。

「でも、俺が結婚って。

 そんな稼ぎもないですし」

 トオルとしてはそう言うしかない。



 前世も今世も基本は同じである。

『稼ぎがあるから結婚出来る』

 家庭を持って女房と子供を養っていく以上、これは絶対の条件だ。

 だからこそ、家を継ぐ長男が結婚をして子供を作っていく。

 財産や資産(それほどたいそうなものでもないが)を受け継いでいくから何とか家族を抱えていける。

 それを分配分与していったら、次の世代を抱えていく事は出来ない。

 次男以降の兄弟が部屋住になるのも、この為である。

 トオルもその例に漏れない。

 上の兄が全員亡くなれば家族を抱える事も出来るだろうが、既に一番上の兄は結婚して子供も出来ている。

 この場合、家を継承するにしても、トオルは残った兄嫁と兄の子供達の面倒を見る事になる。

 自分の女房子供なんて抱える事は出来ない。

 それは別にしても、今の稼ぎで家族を抱えるなんて絵空事になってしまう。

(なんでまた、いきなり)

 どうしてもそう思ってしまう。



「君なら別に何もおかしくはあるまい」

「いや、そんな事は」

 トオルは否定する。

 トモノリがどう評価してるのかは分からないが、現状を見ればとてもそんな状態ではない。

 食っていくのがやっとで、食わせていく余裕は無い。

 しかしトモノリはそうは見ていない。

「今はともかく、あと二年で次の段階に進もうとしている。

 稼ぎも増えるだろう。

 三年もすれば更に変わってくる。

 四年後、五年後はどうなってるか見当もつかない」

「買いかぶりですよ。

 俺はそんな大した事はしてません」

 少なくともそこまで先を見据えてるわけではない。

「だが、そうなるだろう。

 今より落ちる事は無いはずだ」

「上手くいってればそうでしょうけど」

「失敗するつもりはあるまい?」

「そりゃ、もちろん」

「なら、それでいい」

 とりあえずそれで十分である。

「その意気があるだけでも十分だ」

「それと結婚と何の関係が?」

「今すぐの話しじゃない」

 ここで、間を開けた。

「二年後三年後の事だ。

 その時を目処に考えてくれればな」

「……何を企んでるんですか?」

「そんな悪い話じゃないよ。

 ただ、君も身を落ち着ける事を考えてもいいと思ってね」

「はあ……」

 それだけではないとは思ったが、トモノリの考えは掴めなかった。

 ただ、どうにも嫌な予感はした。



「今はまだ余裕がないだろうが、この先ある程度落ち着いたら嫁をとってもいんじゃないかと思ってね。

 余計なお世話なのは分かってるが」

「なのに、わざわざ言うと?」

「色々考えてるからね」

 なんだか悪党みたいな事を言う。

「君が今後どうしていくかは分からないが、この辺りでやっていくならだが。

 どうかな、身を固めるつもりはないか?」

「いや、全然。

 考えた事もなかったので」

 事実である。

 結婚を考える余裕は無かった。

 人生の先々について考える事はあったが、基本的に生活を安定させる事が優先だった。

 一団の収支計算はしていても、生活一般に関わる部分についてはほとんど頭になかった。

「いきなりだったもんで、どう答えたもんかも分からんです」

「正直だな、実に」

 時にそれが相手に利用される事もある。

 だが、トオルという人間の好ましい部分だと評価してもいる。

「しかし、君がここに居場所を作っていくなら、それなりの待遇を与えねばならないだろうし。

 ならばと思ってね」

「結婚がですか?」

「ああ。

 どうだろう、うちの一族の者を迎える気は無いか?」

 直球ど真ん中に用件を投げ込んでいく。



「はい?」

 再び頭が真っ白になる。

「えっと、それって、つまり?」

「我が一族の適当な者を嫁にとらんか、と言ってる」

「そりゃ、そうでしょうけど。

 でも、俺は貴族でもなんでもないんですが」

「別におかしな話しじゃない。

 私くらいの身分なら、君らと変わらないしな。

 結婚相手が平民庶民でも何らおかしくない」

「いや、そりゃそうかもしれませんけど」

 頻繁にあるわけではないが、珍しい事でもない。

 ただ、それはそれで条件というか、慣例的な決めごとのようなものもある。

「俺は豪農でも豪商でもありませんよ。

 傭兵団を率いる英雄でもないですし」

 そのあたりがだいたいの条件だった。




 続きを20:00に投稿予定

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