レベル120 思ったよりは良いような、でも期待しすぎてもいけないような
(収穫……なんだろうな)
手に入れたモンスター素材の数ではない。
実際にモンスターとやりあっててみ希望者達がどう動いたか、という結果がだ。
二日にわたるモンスター退治という実地試験を経て、かなり人柄が見えてきた。
ゲームにしろ博打にしろ、人間性が出るものはいくつかある。
身近に危険が迫った時もそうであろう。
今回、それをしっかりと目にする事が出来た。
まず、逃げ出すような根性無しはいなかった。
穴に妖ネズミを誘導して、それから倒すのだから危険は無い。
はまり込んだものに武器を打ち込んでいくから手間もない。
モンスター退治と聞いて緊張していた者達も、実際にやってみて拍子抜けしたようだった。
「これなら俺でも出来るよ」
という声もあがるほどだった。
そう思って油断するのが一番危険だから、注意だけはしておいた。
だが、作業自体は順調に進んだ。
途中幾らか詰まる事もあったが、初めての事で戸惑ってるからというのがほとんどだった。
慣れてないのも大きい。
いつ餌を放り込むか、どのタイミングで別の穴に移るのか。
倒したモンスターの回収と、持ち帰って解体していく順番はどうするのか。
それらが組み合わさって、なかなかにカオスで混沌とした状況となった。
最初だったらこんなもんかと思ったので、苦笑しつつ眺めていたが。
(けどまあ、そんなに悪くはないか)
それほど上手くはいかないだろうと思っていたので、期待はずれという事は無い。
むしろ、割とうまく動いてくれた方だと感じられる。
初日の者達も、二日目に参加した者達も、どちらもそれなりに精一杯動いてくれていた。
モンスター退治のやり方もやはり大きいのだろう。
町から出て作業場所に到着するまで緊張していた者達も、やり始めたら存外良い動きを見せた。
穴に入り込んだものを狙うのだから当然かもしれない。
攻撃はなかなか当たらなかったが、自分が狙われる危険がないと分かってるから落ちついて狙える。
解体作業の方も、自分達が狙われる可能性を減らして作業が出来るので、さほど周囲に気が散ってなかった。
トオルがすぐ近くで護衛をしてるのも大きかったかもしれない。
初心者にしてはであるが、割と動きは良い方だった。
稼ぎとしてみたらそれほどでもないが、こればかりは仕方ない。
それよりも、全員がそれなりに動けた事の方が大きい。
(これならやっていけるか)
「というわけで、全員採用」
その言葉に、受付のオッサンは目を丸くする。
「おいおい、いくらなんでも」
「いや、あれだけ動けるならかまわないよ」
はっきりとトオルは言う。
「あとは、うちにいる他の連中とやっていけるかだけど。
これはやってみないと分からない。
ま、一ヶ月くらいは試用期間って事で。
その間に、駄目だと思ったら町に帰すよ」
「つっても、旅費とかは」
「こっちで持つよ、それくらい」
かなり痛いが、トオルの懐からでもそれくらいは出せる。
試用期間の間だったら、それくらいの負担はしようと思っていた。
使えない奴と縁を切るなら、それくらいの出費も我慢できる。
「あとはあいつら次第だ」
トオルの方は決まった。
それにのるかどうかは希望者達が決める事である。
実際にやってみて、自分がやっていけるかどうか。
答えを自分で出して決めてもらうしかない。
「三日待つからその間に決めてもらってくれ。
三日目の夕方までに。
四日目の朝には出発するから」
「分かった、そう伝えておく。
で、お前はその間どうすんだ?」
「そうだな……」
やる事は無い。
せいぜい荷物をまとめるくらいだ。
「休みでも堪能するよ」
他に何も思いつかなかった。




