レベル116-2 周りの者達の意識も一つの方向を向いてないといけません
「戦闘と解体で二十人。
それくらいは増やそうと思ってる」
「な、えっと…………ちょっと待ってよ兄貴。
いくら何でも二十人って…………」
さすがにサトシも驚いたようだった。
「一気に十人はなあ……」
「さすがに面倒見切れないよ」
解体のマサルとコウジも同じ意見だった。
それだけではない。
他の者達も似たような反応を示している。
(まあ、しょうがないか)
何せ今のトオル達の人数の倍以上だ。
それだけの人間を一気に受け入れるとなれば、誰だって思うだろう。
無理だと。
だが、その無理を押し通さないといけない。
開拓にしろ何にしろ、この先やっていくなら人手は絶対に必要なのだから。
「落ち着け。
お前らの言いたい事は分かる」
そう言って騒いでる者達をなだめようとする。
すぐに騒ぎがおさまるとは思ってもいないが。
だから、かまわず話を進めていく。
それが無駄口を自然と減らした。
聞き逃して損をするのは自分達と分かっているからだ。
「確かに二十人も一気に受け入れたら混乱する。
新人の受け入れでもそうだったからな」
その時は、数人ずつ受け入れていき、それでどうにかこうにか動かしていた。
それが今度は一気に二十人なのだから、無茶にも程がある。
「けどな、俺達もやり方をある程度見つけてきた。
さすがに無理も大きいけど、やれないとは思えない。
以前の新人受け入れのように、今度もやっていきたいと思うんだ」
「でも、さすがに二十人は」
「多すぎると思う」
戦闘・解体問わず心配の声があがる。
新人教育でやり方はある程度分かっているつもりだが、それでも一気にその人数だと不安がある。
「まあ、また妖ネズミ相手にがんばるしかないわな」
「妖犬は?」
「しばらく休む」
こればかりは仕方ない。
「さすがにそっちまでやってる余裕は無い。
そのかわり、新人達のレベルアップはしっかりやる」
そうするしかなかった。
新人達のレベルにもよるが、最低でも戦闘技術をレベル2にするまでは妖ネズミ相手でいくつもりだった。
それでも、早ければ半年で目的は達成できる。
「それで、新人達は二つに分けて、それぞれ経験者を二人つけようと思ってる。
割り当ては新人五人って事になる」
トオル達の人数を考えればそうするしかない。
余る者も出てくるが、それは単純にどこかに入ってもらえばよいと考えていた。
それに、もう一つ考えてる事もある。
「あと、もう一つ言っておきたい事がある。
希望するなら、魔術の修行をしてきてもらいたい。
このままじゃ不足するからな」
それも考えの一つだった。
この先モンスター退治をやっていくなら、魔術師は更に増やしておきたかった。
半年ほど人手が減るが、それも覚悟の上である。
一時的に戦力や作業効率が落ちるのは痛いが、それを引き替えにするだけの価値があるのだから。
「といっても、何人もってのは無理だ。
一人か二人が限界だ。
でも、もし魔術を使えるようになりたいって言うなら遠慮するな。
この先、魔術師がもっといてくれないと困る。
ただ……」
念のために釘を刺しておく。
「戦闘の方に参加してる者は勘弁してくれ。
さすがにそこから人手が減ると困る」
そこだけはさすがに融通を利かせられなかった。
食堂が騒がしくなっていく。
誰もが色々と考えを口にしていった。
本当にそれだけ受け入れられるのか?
人手は必要だろうが、そんなに足りないのか?
上手くまとめていけるのか?
ちゃんとレベルアップ出来るのか?
そして、魔術の修行はどうするのか?
誰が行くのか?
あちこちで、俺はどうする、お前はどうする、といった話しがはじまっていく。
そんな中、
「でもさ、兄貴」
サトシが声を出す。
「なんでそんなに人を入れるの?
そこまで人手が足りないって事もないと思うけど」
根本的な疑問である。
誰もが「それもそうだ」と思った。
あまりに当たり前すぎて、逆に意識もしなかった。
その疑問にトオルは、
「これからを考えてだ」
と答えた。
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