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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その6 たぶん、次への一歩だと思われる何か

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レベル114 とりあえず思いつく事から考えていってみます

「これと、あれと。

 あれもあるか…………。

 それと…………これかな」

 灯りを自分のベッドの中に入れ、二段ベッドのカーテンを閉めながら呟く。

 寝てる他の者の邪魔にならないように、自分の空間を作る。

 そこで思いつきをどんどん紙に書き出していった。



 必要なのは、数字だった。

 基準や水準となる。

 今までは漠然とこれくらいは欲しいなと思っていた。

 ある程度考えて出した数字もある。

 だが、はっきりとした形になっていたかというと、そうでもなかった気がする。

 この先何年働く事が出来て、引退してから老後までどのくらいを過ごすのか。

 その間の生活はどうするのか、という事などを厳密に考えていたとは言い難い。

 危機感はあったが、具体的にそこまで考えてはいなかった。

 考えれば前世の最後を思い出してしまうので、考えたり思い浮かべる事を拒否していたのが大きい。

 だが、いつまでもそうしてるわけにはいかない。

 先々の事を考えるなら、やがて死ぬ時の事まで考えるしかない。

 どの程度が必要なのか。

 それを算出していかねばならない。

 でなければ、求める金額が分からなくなる。

 それでは目標や基準も持てない。

 持てないから、今がどの程度の位置にいるのかも分からない。

 トオルが抱いていた不安は、それが原因だった。

 目標も基準も指針もなく、漠然と『稼ぎを増やす』という事だけを考えていた。

 だから気持ちが漂流していた。

 不安を抱くのも当然だった。

 自分が今どこにいるのか全く分かって無かったのだから。



 それが分かれば簡単だった。

 まず、必要になる金額を割り出す。

 そこから、必要になる稼ぎを考える。

 一日に必要な稼ぎまで。

 思いつく限りそれらを書き出していく。

 それが第一段階だった。

 目先の生活だけではない、将来において必要になる金額を。

 死ぬまでにかかる費用を考えていく。



 なお、この世界において寿命はおよそ六十年。

 それも割と長生きしてである。

 魔術による治療はあっても、医学はそれほど発展してるわけではない。

 その恩恵を受けられるのも、それほど多くの人々ではない。

 何かあった場合に手当や治療を受けられる可能性はそれほど多くはない。



 そもそもの栄養状態や生活環境も前世ほど良くはない。

 たとえば食料は、冷凍などの保存技術がないので、新鮮な状態に保つのが難しい。

 普段の生活も冷暖房などがないので夏や冬を過ごすのが厳しい。

 洗濯も手洗いだし、水を飲むのだって水道からというわけにはいかない。

 竈の火もガスコンロのように簡単ではない。

 そういった生活のなかでかかる負担の合計が、前世に比べて大きい。

 どこまで影響があるのかは分からないが、それらが寿命というものに与えてる影響は大きいかもしれなかった。



 そういうこの世界における常識を元に色々と算出していく。

 モンスター退治を仕事とするので、その寿命すら迎えられずに死ぬかもしれなかったが。

 それはそれとして、考えられるだけの費用を割り出していく。

 とりあえず、一食にかかっていた費用と、一日の宿泊費から。

 周旋屋の宿泊所を基準に考えれば、一日三千銅貨は必要である。

 食べて寝るだけでもこれだけは最低必要になる。

 一年三百六十五日で、一百九銀貨と五千銅貨。

 トオルの年齢から、残りの人生がおよそ四十年として四千三百八十銀貨が必要となる。

 食べて寝るだけで。

 しかも、周旋屋の格安の宿代の場合だ。

 冒険者としてはもとより、作業員として働けなくなったら追い出される可能性もある。

 そうなったら賃貸の住宅を探さねばなるまい。

 費用は更にかかる。



 それだけでは無い。

 衣服や用いる様々な雑貨もあるだろう。

 怪我や病気の治療が必要になる事もあるだろう。

 村や町から移動する事もあるかもしれない。

 そういった更なる出費を加えれば、先ほどの数字は更に跳ね上がる。



「こりゃ、きついわ……」

 想定していた以上の数字に驚く。

 もっと気楽に考えていたが、ここはもっと厳しく見つめ直す必要があった。

 何せ、残り四十年として、その全ての期間働いていけるわけではないのだから。

 まともに動けるのは、せいぜい二十年といったところだろうか。

 それまでに、出来るだけの稼ぎを作っておかねばならない。

 前途多難だとは思っていたが、それを考えるとあらためて苦しい道のりだと考えざるをえなかった。



 多少なりとも明るい材料を探すなら、現在の稼ぎはそれを確かに補ってあまりある。

 一日の稼ぎはおおむね五千から六千銅貨あたりを確保している。

 今後もこの状態を続けられるなら、あと二十年がんばって蓄えを作れば良い。

 残り二十年は、細々とだが何とか生きていけるだろう。

 おまけに、トモノリの所にいるなら、衣食はかからない。

 いつまでトモノリの所にいられるか分からないし、トモノリが費用の支払いを求めるようになるかもしれないが。

 それでも、あと数年はここで厄介になれる可能性はあった。

 田畑の拡張があるので、その間の護衛などでトオル達が必要になる……かもしれない。

 未来がどうなるかは分からないので断言は出来ない。

 けれど、すぐにお役ご免になる事はないと思える。

 その間に頑張っておけば、将来の備えと言える蓄えを作れそうに思えた。



 とはいえ、装備品の補修や買い換えなどの費用はかかる。

 モンスターを倒すために設置する陣地にも金がかかる。

 大八車や解体道具なども。

 今はトモノリの館の施設を使わせてもらってるが、自前の倉庫も必要になるかもしれない。

 手に入れた素材を保管しておくために。

 なるべくそれらは既にあるものを使わせてもらうようにしていきたいが。

 いつまでも自分達だけで用いる事が出来るとは限らない。

 それこそ甘い考えであろう。

 今巡ってきてるこの状態は幸運の一つであろう。

 それがいつまでも続くとは思っていられない。

 だが、いつか終わるにしても、この恩恵は最大限に活かしたいものだった。

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