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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その6 たぶん、次への一歩だと思われる何か

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レベル113 迷いも悩みも尽きませんが、日々の仕事をしなければなりません

 悩んでいたって朝は来る。

 やらねば稼げぬ日々がある。

 今とこれからについての事はとりあえず置いておき、仕事にかかっていかねばならない。

「じゃ、今日もネズミと犬で」

「はいよ」

「分かりました」

「うん」

 様々な返事があがり、行動を開始していく。

 妖ネズミについては他にまかせ、トオル達はいつも通りに犬を倒しにいく。

 餌となるネズミの死骸を持って陣地に。

 いつも通りに作業をしていかねばならない。



 作業は滞りなく進み、予定の数をあげていく。

 解体も順調に進み、必要な部分の確保は出来ていた。

 燻しもすすみ、出来上がったものから容器に放り込まれていく。

 もう妖犬に怯える者もいない。

 危険である事にかわりはないが、倒せない相手ではないと誰もが分かってる。

 防備の補強もされており、そう簡単に壊れる事もない。

 ある意味理想的な状態になっている。

 あとはタカユキとシンザブロウのレベルが上がれば……というところだ。

 そうなれば、もう少し倒せる数の見込みが増えるはずだった。

 何ヶ月か先になるだろうが。

 順調と言ってよいだろう。

 この前のような、小鬼の襲来のような突発的な事が無ければ。

 それなのだが。

 トオルは妙に不安を抱いてしまっていた。



 順調な時ほど次の準備をしておくべき。

 それを聞いたのはどこでだったのか。

 おぼえてはいないが、不意にそんな言葉が浮かんでくる。

 事が起こってから準備していては間に合わない、というのと同じような意味だとは思う。

 また、次に何が起こるか分からないから備えておけ、というのとも似てるかもしれない。

 しかし、これが結構難しい。

 何が起こるか分からないから、何が起きても良いように備えて置くべきだとは思う。

 けど、物事がそれなりに上手くいってるからどうしても危機感がない。

 そのため、考えがどうしてもまとまらない。

 今のままで良いじゃないか、という楽観に流されそうになる。

 こうなると神経や精神が鈍る。

 小鬼を相手にしてた時とは真逆で、頭に何も浮かんでこない。

 そのくせ、このままで良いのかという不安だけがもたげてくる。

 ある意味根拠のないものである。

 問題の前兆や予兆、萌芽といったものが見えてるわけではないのだから。

 しかし、なんとなく感じる悪寒のようなものが、焦りを抱かせる。

 いったい何に怯えてるのかも分からないままに。

 漠然とした不安を振り払えずにいた。



(何なんだろうな)

 答えが出ないままその日が過ぎていく。

 成果は上々で、今日も八百を超える素材を手に入れる事が出来た。

 出来ればもう少し欲しいと思うも、少ないと嘆くような数でもない。

 作業を切り上げて帰還し、妖ネズミを倒してた者達と合流する。

 そちらも順調に成果をあげたようで、まずまずの結果を出していた。

 今日も一人当たり五千銅貨以上の稼ぎになっている。

 彼らのレベルが上がれば、もう少し成果も上がるだろう。

 そうなれば収入は高い所で安定するようになる。

 レベル3あたりになれば、倒せる数が増える。

 戦闘における余裕も出てくる。

 解体の方だって、作業速度と丁寧さが上がる。

 早ければ春が来る頃にはそうなってるはずだ。

 …………そこまで見えている。



 見えているのだが、なぜか不安を抱いてしまう。

 このままなら、確実に安定した稼ぎを作り出す事が出来る。

 このままいけば、そうなるはずなのだ。

(けど)

 疑問が出てしまう。

(上手くいくのか?)

 何度もその言葉が浮かんできてしまう。



 上手くいくのかどうか。

 それが疑問として浮かんでしまう。

 軌道に乗ってるとは言い難いかもしれない、まだ改善の余地があるとも思う。

 だけど、今の状態でも悪くはないはずだった。

 稼ぎは出てるのだから。

 それに、やり方の改善や向上もこれ以上は思いつかない。

 特別秀でてはいないだろうが安定はしている。

 これを下手に崩そうとは思えない。

 そう思い込んで自分の考えに固執してるだけかもしれないが。

 それにしたって、打開するような何かが出て来るわけでもない。

 考えが堂々巡りになっていった。



 メシを食べて、風呂に入り、ベッドに横になる。

 寝転がってもすぐに眠れるわけではない。

 疲れてるのでそのうち目が閉じるだろうが、それまでまだ時間がある。

 頭はぼんやりとしてるが、寝入るという程には至らない。

 それなりに眠いのに、半端に冴えてる。

 頭も割と動いている。

 悩みがあるからだろう。

 どうしても何かを考えようとしてしまう。

 こうなったら、解決するまで頭を使うしかない。

(けどなあ)

 何をしたいのかが分からない。

(上手くいってると思うんだけどな)

 もちろん稼ぎは十分とは言えない。

 それでも、悪いものではない。

 もうちょっと上がればどうにかなる。

(あとちょっと…………いや、もっともっとか?)

 とにかく、稼ぎが増えればどうにかなる。

 今よりも多く。

(ん?)

 そこまで考えて何かが頭をよぎった。

(あれ、待てよ)

 疑問に思った事について考えていく。

 今、何を疑問に思ったのか。

 どうしてそれを問題だと思ったのか。

 何を問題にしてるのか。



 ────何を知ろうとしてるのか。



 自分が求めてる何かが何であるのかを考えていく。

 収入、安定、生活、前よりまともな今後。

 並べてみればそういったものになる。

 それでは、それらを得るために必要なのは?

(金だよな)

 安定した稼ぎ……。

 稼ぎ……。

 稼ぎ……。

 あれば有るだけ良い。

 では、どれくらい…………?

 そう思った瞬間、眠気が吹き飛んだ。

(…………そっか)

 ようやく分かった。

 何が足りないのかが。

「…………どんくらい必要なんだ?」

 口に出して呟いてみる。

 言葉にする事で、思考が具体化する。

 体を起こし、筆と紙を手繰る。

 そこに、思いつく限りの数字を書き込んでいった。



 ふと、思う。

 安定した稼ぎを得るために、どんな事をしてる?

 どんな機構を作ろうとしてる?

 どんな土台を作ろうとしてる?

 個別にやり方の改善は考えてる。

 だが、それらを統合した全体図はどうした?

 そういった疑問が今更のように浮かんでくる。

 それらの疑問の答えが見えてこなかったのが不安になっていた。

 しかし、そうではないのかもしれない。

 その疑問がある意味答えであったのかもと思う。

 それらの根幹はただ一つ。

『先々への不安』

 だからこそ、こういった疑問が浮かんでくる。

 裏を返せば、これらへの答えが未来への布石となる。

 不安は安寧になるやもしれなかった。



 そう思うと、今までの迷いが一気に晴れていった

 いや、迷いというか問題が消えたわけではない

 解決するべき課題はそのまま残っている

 だが、その課題が、何が問題なのかが今はっきりと見えてきた

(形がなかったんだ)

 一つ一つの部分ではない。

 全体としての形が。

 ただ、漠然と行動をしていた。

 闇雲に行動してたと言える。

 それはそれで仕方のない事だった。

 何をすれば良いのかすら分かっていなかったのだから。

 だが、今は数年に及ぶ活動という蓄積がある。

 それらがトオルの中にあった。

 今はそれらを用いて、今後を考える事が出来る。

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