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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その6 たぶん、次への一歩だと思われる何か
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レベル112 どうも自分を見失ってるように思えます

(どうしてこうなった?)

 いつも通り、今まで通りに戻ると思っていたが。

 そうでもなさそうな事態が起こっている。

 手頃なモンスターを倒し、手堅く稼ぎを得ていくつもりだったのだが。

 それだけでは済まなそうな事になっている。

 もちろん、不利な状況になったわけではない。

 作業をする場所を変えるだけだ。

 問題になるほど何かが起こる事もないだろう。

 しかし。

(なんかなあ……)

 釈然としないものがあった。

 上手く利用されてるような。

 それを言ったらトオルもそうなのではあるが。

 トモノリの宿舎を使わせてもらったり、食事を出してもらってるのだから。

 だが、相手のペースにのせられてるというか、相手の思惑通りに動かされてるように思えてならない。

 もっとお気楽に稼いでいくつもりだったのに、いつの間にか他の多くの物事に左右されてるような気がする。

 誰かと関わりを持てばそうなってしまうのだろうが、納得がいかない。

 利用されるにしても、もうちょっと自分の意志や思いを通しておきたかった。

 流されるままに生きて最後を迎えるのはまっぴらである。



 まず、自分がどうしたいのか?

 何をしたいのか?

 そこを考える必要がありそうな気がした。

(まあ、上手くはいってるけど)

 収入はまだ低いが、モンスター退治で稼ぎを出せるのは確かだ。

 あともう少しレベルを上げれば、更に上のモンスターを狙えると思える。

 だが、それだけでは駄目な気もする。

 最終的に稼げれば、誰に利用されてても良いのかもしれない。

 それで良いのかと思いつつも。

 また、それを拒否するなら、自分はどうするのか、どうしたいのかとも思う。

 そう考えていくと、自分がどうしたいのかという部分があやふやな気がしていく。



 稼げるようになりたい、というのは確かである。

 当初はそれだけを目的にしてきた。

 他に考える余裕もなかった。

 だが、ある程度稼げるようになり、状況もまずまずとなってきた事で見えてくる事もある。

 始めた頃には見えてなかった部分、全く関わりも出来なかった所に触れたせいだろうか。

 当初は自分の事だけ考えていれば良かった。

 それが今では、仲間の事や周りの事も考えるようになっている。

 無関係な何かではなく、実際に関わりあってる確かな存在としてそこにいるからだろう。

 いつもの生活に密着しているというのも大きな理由かもしれない。

 周旋屋に、商人に、村の者達に、トモノリ。

 仲間以外にもこれだけの者達と関わり合いになっている。

 自分達が生きていくうえで、これらとの触れ合い方も考える必要が出て来ている。

 無視して自分の事だけ考えてもいいのだろうが、それだと余計な摩擦をうみかねない。

 気の回しすぎかもしれないが、下手に事を荒立てたくはなかった。

 かといって、相手の都合に左右されっぱなしというわけにもいくまい。

 兼ね合いを考える必要がある。

 あらためて現状を考え直すとそういう事になる。

(やっぱり、面倒な事になってるな)



 稼ぎを安定させたい。

 前世のような最後を迎えないために。

 ………当初の目的はそれだけだったはずなのに。



(どうしたらいいんだか)

 悩んでしまう。

 これまでにない状況だ。

 参考にできるような経験もない。

 昔読んだ本の中に何かなかったかな、とも思うが、何が役に立つのかも分からない。

 そもそも、本になってる事が全て役立つとも限らない。

 どれほど効果的でも、トオルには扱いきれないものもあるだろう。

 そのままでは用いる事ができないから、上手く工夫しなければならないものもあるだろう。

 本当に使えないから切り捨てねばならないものもあるだろう。

 とどのつまり、トオルがそれらを考えていかねばならない。

 それに、下っ端として必要な事と、上に立った場合に必要な事には違いがあるかもしれない。

 組織の一員である事と、独立してやっていく者では求められる者が違ってくるかもしれない。

 そういった差も考えていかねばならない。

 しかるにトオルが今どの位置にいるのか。

 それすらもトオルが判断していかねばならない。

 そもそも、自分の立ち位置が今ひとつ分かってもいない。

 様々な要因の絡み合う中で、自分がどこにいるのか。

 あまり意識せずにいられたのだろうが、今はそれを把握する事も必要かもしれなかった。



(さて、どうするよ?)

 何かに向かって問いかける。

 これから何をすればいいのか、どうしていけば良いのか。

 それが今ひとつ分からない。

 何が出来るのか。

 これから何をしたいのか。

 何を目指していくのか。

 それほど大げさに考える事でもないかもしれない。

 もっと単純な事かもしれない。

 だがそれが見えてこない。

 何かを見失ってるように思えてならなかった。

 自分自身すらも。

(まいったな)

 自分を振り返って、これからの事を考えて呆れてしまう。

(何で哲学なんかしてるんだか)

 やった事は無いが、自分探しの旅でもしてるような気分になる。

 知りたいのはもっと世俗的な事であるのに。



 それが顔に出たのだろうか。

 寝転がってる二段ベッドの上からサトシが声をかけてくる。

「兄貴、何考えこんでるんだよ」

「ん?」

 呆れたような顔をしてトオルをのぞき込んでいる。

「全然似合わねえって。

 もっと、頭スッカラカンな調子じゃないと」

 その顔に枕を叩き込んでやった。

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