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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど

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レベル110 事が終わりとりあえずはこんな所で

「さて……」

 大雑把に算出した数値を見て、トモノリは頭を抱えたくなる。

 今回、村人にも参戦してもらい、小鬼への対抗のために動いてもらった。

 村に襲いかかってきた場合を考えて、多少は防備を構えてもみた。

 小鬼が来襲してきた時には、動ける者には武装をして前に出てもらった。

 冒険者の雇い入れを除いても、やはり大きな出費となっている。

 幸い死者や重傷者が出なかったから良いものの、今後のやりくりを考えると頭が痛い。

 脅威を排除できたと言ってもそれで終わりというわけではないのだ。

 損傷や損害が出ればその補填も必要になっただろう。

 幸いな事に今回の出来事において、それはいたって軽微なものであった。

 言ってしまえば、最初に家畜を襲われた時に出た被害だけが村における損害の全てであるのだから。

 それでも出費がなくなるわけではない。

 抑える事は出来ても。

「どうしたもんだか……」

 今後の見通しを考えると暗くなってしまう。

 いずれやろうとしていた防備を前倒しで作る事になっただけ……そう思って自分を納得させるしかない。

 また、こういった事態にどれだけの費用と手間が必要になるのか。

 それを知る良い機会だったとも。

 そう思えば、被害は少なく、結果は満足すべきものと言える。

 こじつけでしかないが、思わねばやってられなかった。



 ただ、被害らしい被害を出さずに済ます事が出来たのはありがたい。

 田畑の被害もなく、収穫は何とか予定通りに行えそうだった。

 税収は予定通りになりそうだったので、今後の見通しが立つ。

 収入の基盤である田畑が無事であるなら、今後の目処が立つというもの。

 奪われた家畜はどうしようもないが。

 それを踏まえて今後の事を考えていかねばならない。

 その為にも、今回どこで何があったのかを知っておかねばならない。

 特に村の外での事を。

 それだけはトオル達に話しを聞かねば分からない。

 報告書を求め、聞き取りも必要になるだろう。

 配下ではなく冒険者なので、トオル達にそういった義務はない。

 だが、起こった出来事についての詳細は知っておきたいところだった。

 さしあたって懸念する事は一つ。

(…………これも料金が発生するのかな)

 義務ではないから依頼という形になってしまうのだろうかと心配してしまう。



 拠点に残してきた解体組を荷馬車で迎えに行く。

 踏み倒された草のおかげで進みは結構早かった。

 そろそろ拠点から出ようとしていた解体組は、迎えの出現に驚いた。

 それは、わざわざ歩かなくて済む事への感激へと変わっていく。

 拠点にある荷物もある程度は持ち帰る。

 特に食料あたりは置いていけなかった。

 それにつられてモンスターがあらわれる事もありえる。

 テントなどはすぐには無理だが、これも後日回収する事にした。

 事が終わったとはいえ、やる事はあるんだなとあらためて感じる。

(終わったはずなのにな……)

 これでお役ご免、とならない事にトオルは嘆きたくなる。

 後片付けはいつでも面倒で億劫なものだった。

 明日からやらねばならない事を考えると気が重い。

 小鬼の脅威がなくなった事で、気分は幾らか晴れてはいたが。

 ただ、悪い事だけでもない。

 村に戻ったトオル達は、そのままとある場所に直行となった。



「あー、すげー気持ちいいー」

 年齢にそぐわぬ台詞を漏らしながら湯気に身を任せていく。

 村にある共同浴場に連れていかれたトオル達は、体の汚れと疲れを洗い流していった。

 二週間近く野外にいた事で蓄積されたものは結構大きく、肌から黒い汚れがどんどんと浮かんでいく。

 その為、まずは足湯と湯気で体の汚れを落とす事を優先した。

 真っ先に浴槽に突撃しようとするサトシを押さえつけて。

 室内に用意された焼け石に水をぶっかけて湯気を出し、室内の温度と湿度を上げていく。

 底の浅い足湯専用の浴槽に膝から下を浸けながら。

 最初に足をお湯に入れた時の、強ばりが解けていく感触が最高だった。

 自覚しなかった疲れや緊張がどれほどだったのかを思い知る。

 あらためて、事が終わった事を実感する。

「がんばって良かった……」

 でなければ、今こうして湯気にひたってる事も出来なかっただろう。

 今回、収入らしい収入はほとんどない。

 素材は回収出来なかったし、苦労の割に得られるものもほとんどなかった。

 だが、こうして浴場でゆっくりしていると、頑張って良かったと思う。

(せめてレベルアップくらいはしてて欲しいけど)

 それくらいのご褒美はあっても良いんじゃないかとは思ったが。

 何せ今回の小鬼退治でもレベルは上がってない。

 どういう条件でなされるのかいまだに分かってないが、いくらなんでもあんまりだろうと思う。

(目的達成のボーナスとか無いのかねえ……)

 かつてのゲームではそういったものもあったのだが。

 どうもこの世界にはそういったご褒美は無いようである。

(ま、明日から頑張るか)

 またモンスター退治の日々が始まるだろう。

 それで日銭をどうにか稼いでいくしかない。

 ただ、今回の一件で、自分達がそれなりにやっていける事も分かった。

 もう少し仕事の範囲が拡げられないかと考えていく。

(それも明日からだな)

 今はとにかく風呂を楽しむ事にした。



 そんなトオルに、

「なあ、兄貴」

 邪悪な笑みを浮かべたサトシが寄ってくる。

「いま、隣でサツキとレンが……」



 ゴスッ



 言わんとしてる事を察したトオルは、容赦なく鉄拳をたたき落とした。

「おおおおおお…………」

 脳天に拳槌を受けたサトシは、頭を抱えてその場にうずくまった。

「いい加減、成長しろ」

 いつもの漫才をくりひろげながら、トオルはため息を漏らす。

 何せ長期間、生死の境目にいたのだ。

 自然と生存欲求が高まっている。

 それは同時に、種族と自分の遺伝情報保存の本能を強く刺激する事になる。

 そんな事を考え出したら、体の一部は激しく自己主張してしまう。

(落ち着け、落ち着け、落ち着くんだ……)

 反応しそうになってる自分をなだめるために、前世で見てきたオゾマシイものを頭に浮かべていく。

 …………効果は絶大で、トオルは煩悩の退散に成功し、悪寒と吐き気を覚えることとなった。



 身につけていた衣類も洗濯してくれたので、結局村には二日ほど滞在する事となった。

 あらためて領主の村に戻り、必要な報告を済ませるのに更に数日。

 モンスター退治も大変だったが、何が起こったのか、どういう行動をしたのかを伝える事も辛いものがあった。

(事務作業の仕事をしててよかった……)

 さっさと抜け出したいと思っていた仕事だが、まさかこういう所で役立ってくれるとは思わなかった。

 その技術をもとに作成した報告書を提出し、聞き取りに応じていく。

 それが必要なのは分かっているが、早く終わってくれないものかと思ってしまった。



 そして、それらの最後に。

 トオル達はトモノリから仕事の報酬を受け取った。

 家畜泥棒調査などの契約が延長されたという事で、一日一銀貨。

 また、諸々の成果報酬という事で上乗せもあり、合わせて二十銀貨。

 税金を抜いた手取りとしてである。

 それがトオル達一人あたり支払われた。

 タダ働きだと思っていただけに、これは本当にありがたかった。

章の終わりに。

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