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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど

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レベル109-1 色々ありましたが、どうにかなりそうです

 話を少しさかのぼる。



 小鬼の接近を知ったトモノリは、早速一族や近隣の領主達に状況を通知した。

 この一帯を支配するより上位の領主と中央政府への報告も含めて。

 まずは警戒を。

 かなうなら増援を。

 前者はともかく後者は全く期待できなかったが、万が一の可能性を考えてそれを盛り込んでおいた。

 ただ、それだけに留めておくわけにはいかないとも思っていた。



(さて……)

 今年一年の収支に目を通しながら考える。

 収入は確かに増えているが、余裕にはほど遠い。

 トモノリの本意ではなかったが、増大した負債が圧迫している。

 返済期限や、一回の返済で求められる金額は必要な経費をとにかく押しつぶしていた。

 やむなく借り換えをしながら領地の運営・経営をしている。

 この状況での小鬼の襲撃は、一気に破綻に進む可能性を浮かび上がらせてきている。

 田畑や家畜への被害だけではない。

 それらが避けられても、領内における防備などに用いる費用がかかる。

 例え領内の者を使うにしても、人を用いるなら相応の出費も出て来る。

 徴用という形をとるにしても、飲食や最低限の備品に消耗品は領主がまかなわなければならない。

 それらの費用がどうしても財政を圧迫する。

 そんな状態であるにも関わらず、状況打破のための手を打っていく。

 当然ながら、金がかかる。

 トモノリとしても悩みはした。

 だが、それでもトモノリは考えを実行にうつした。

(潰えてしまえば、元も子もない)

 ここで金を惜しんで損害を出せば、見込んでいた収入(税収)も手に入らない。

 作物の刈り入れと、それによる年貢。

 小鬼に田畑を荒らされてしまえば、それらを手に入れる事は出来なくなる。

 村に損害が出れば、その修復のための金もかかる。

 であるならば、事前に出来る対策に金を惜しむわけにはいかない。

 そうならないための出費は、予想される損害よりも安いのだから。

 もっとも、それが成功するかは分からない。

 味方への要請は相手の了承が無ければどうにもならない。

 法律により規定されている義務や支援も、運用する者達の承認が無ければ発動しない。

 たとえ発動しても、承認を得るまでに費やす時間で全てが手遅れになる。

 トモノリが用いた手段もそうだった。

(上手くいけばよいが)

 あとは祈るしかなかった。



「おう、新しい仕事だ」

「モンスター退治だ」

「出られる奴はいるか?」

 トモノリの名前で出された募集が周旋屋に張り出される。

 受付の者達も、手当たり次第に冒険者に声をかけていく。

 仕事の依頼一覧を貼り付けた掲示板には、広間にいた者達が一人二人と集まっていく。

 ……小鬼の集団発生。

 ……これの撃退。

 ……期限は二週間。

 ……報酬は一人あたり総額二十銀貨。

 ……期間内の寝食は保証。

 並べられた条件に、集まった者達は顔をしかめる。

 そこに書かれた条件は分が悪いものだった。

 相手は数百匹と思われる集団で、それに対して報酬がこれだけ。

 決して好条件ではなかった。

 モンスターの群れに対して加勢が求められるのは珍しくもない。

 こういった場合、対応するのは冒険者だけでなく、村人も参加する。

 それにしても分が悪い事になるのが普通だった。

 ろくろく訓練も受けてない村人では戦力になりづらい。

 必然的に冒険者が中心になってしまう。

 領主の兵隊が加われば良いが、見れば末端の地方領主。

 この程度では自前の兵士もいないのが当然。

 報酬も二十銀貨となると実に難しいところだった。

 行商人の護衛やモンスター退治の依頼であれば、これくらいの値段が普通になる。

 といっても、それは相手が単体か少数の群れである事が前提である。

 小鬼とはいえ数百という敵と戦う場合の値段ではない。

 誰もがその条件を見て立ち去っていく。

 周旋屋としても無理強いは出来ない。

「どうしたもんかな」

 受付のオッサンも、村には同情するが冒険者の意志をどうにかする事は出来ない。

 仕事を受けるかどうかは各自の自由である。

 強制する事はできない。

 また、例え意志があっても技量の足りない者を送り込むわけにもいかない。

 それで冒険者が死んでは元も子もない…………というより店の信用にかかわる。

 使えない人間を送り込んでしまえば、今後の受注にかかわる。

 もとより人がすぐに集まるわけでもないが、オッサンをはじめとした周旋屋の者達は頭をかかえてしまう。

 状況は切迫し、すぐにでも人が必要なのを理解していたのだから。



「ふーん」

 掲示板の張り紙を眺めながら考える。

 仕事が終わって帰ってきたとたんに、受付のオッサンにつかまった。

 とりあえずこれを見るだけ見てくれないか、と言われて掲示板の前に連行。

 示された張り紙を眺め、条件を確認。

「なるほどねえ」

 オッサンの短い説明も随所で聞いたので、どういう事が起こってるのかは理解した。

「こりゃ、大変だ」

「だろ?」

「それで人手は?」

「全然」

「だろうなあ」

 この条件なら当たり前だと思った。

「どうかな、無理は分かってるが」

「うーん」

 オッサンの言いたい事は分かる。

 こんな状況なのだから、どうにかしてやりたいのは人情だ。

 だが、命を天秤にかけるとなると考えてしまう。

 相手が小鬼だとしてもだ。

「そうさなあ…………」

 どうしようかと考える。

 この概要を見る限りでは、勝算自体はあっても生還率の方が低くなる。

 勝つには勝てるが、誰かが必ず犠牲になってしまう。

 それをこの値段で納得するのは難しい。

「そもそも、この村まだ残ってるの?」

「さあな。

 俺達に依頼が来てる間に襲われてるかもしれんし」

 だとすれば、引き受けるだけ無駄である。

 ただ、どの村からの依頼なのかと、あらためてその部分に目を向ける。

 仕事内容と報酬が気になってそちらを飛ばしていた。

「ん?」

 どこかで聞いたおぼえのある名前があった。

「なあオッサン、ここってあいつのいる村じゃないのか?」

「ああ、そうだな」

「そっか…………」

 それを聞いて、考えが変わっていく。

「じゃ、久しぶりに見に行ってみるか」

 こうやってマサトは、この依頼最初の受注者となった。



 それが呼び水となって、他の冒険者の参加もあった。

 時間が無いのでゆっくり募る事は出来なかったが、それでも最終的に十七人の冒険者が依頼を受注した。

 トモノリが用意できる依頼料の限界もあったので、どのみちそれ以上増やす事は出来なかったが。

 急ぎの馬車に乗って村に向かった彼らは、村への移動を始めた小鬼が到着する三日前に到着。

 既にタカユキとシンザブロウから小鬼の接近が告げられた頃である。

 トオル達が上げた狼煙を目にする事が出来た。

「なんだ、ありゃ?」

 抱いた疑問に村人達が答えをよこすと、

「へえ」

 面白そうに笑った。

「相当まずい事になってんのかな」

 可能性は大きい。

 森の中に作ったという拠点に攻め込まれたのか、小鬼達によって深手を負ったのか。

 追い詰められていたら大変な事になる。

 ただ、村に報せをもってきたという二人の話からすると、そこまで追い込まれるとは思えない。

 それ以外の何かが起こってる事を伝えたいのかもしれなかった。

 狼煙は、何かしらの合図にはなるが、内容を伝えるほどの情報を持ってるわけではない。

 ただ、事前にもたらされた情報などから幾らかの推測はできる。

「なあ、坊主。

 お前さん達は、小鬼達を襲撃しまくってたんだよな」

「あ、はい」

 聞かれたタカユキが返事をする。

 返事から色々と考える。

 トオル達の戦果は、おそらく一百匹くらいにはなってるだろう。

 もともと何百といるようだが、それだけの損害を受けたら相当な損害になってるはずだ。

 少なくとも、外に出て活動する男手は減っている。

 戦力として見れば、格段に落ちてるはずだった。

 それなら、立てこもる以外にも選べる道がある。

「なあ、みんな」

 とりあえずその場にいる者達に声をかける。

「たぶん、トオルの所で何かが起こってるはずだ。

 手をこまねいてるわけにもいかないだろう。

 ちょっとばかり危険だが、皆で迎えに行きたい」

 半分は嘘である。

 トオルが心配なのは確かだが、そちらの救出は口実でしかない。

 それを持ち出せば、話しが有利に進むだろうという思惑による。

「ただ、小鬼の連中との遭遇は避けられない。

 いっそ、こっちから打って出ようと思うんだ。

 救出のついでにな」

 そちらが目的だった。

 相手の戦力が激減してるなら、何も村に籠もる必要はない。

 もちろんそうした方が損害を減らせる。

 だが、村が受ける被害も何かしら出てくる。

 防御の手薄な所から侵入されて、田畑や家屋が荒らされるかもしれない。

 それを避けたいとも考えていた。

「他の皆にも伝えてくれ。

 こっちから仕掛けるって。

 トオル達を助けるにも、その方がいい」

 利用するにはもってこいの情報をちゃんと付け加える。

 村の者達がどう思ってるかは分からないが、ここまで頑張ってるトオルを見殺しにはすまいと。

 もちろん、「仕方のない犠牲」として割り切る可能性もある。

 身内のために結束するのが人間なら、身内という大集団を守るために少数の犠牲を見捨てるのも人間だ。

 それがどちらに傾くかは、運の要素になっていく。

(出来れば、出撃になってくれればいいんだが)

 迎撃に出ている村人の数と、マサト達のレベル。

 それらを組み合わせれば、迎撃も荒唐無稽な考えではないのだから。



 翌朝。

 話がまとまった事で、マサト達は村から出て小鬼を迎え打つ事になる。

 相手がどこまで進撃してるかは分からないが、おそらくそう遠くにはいないはずだった。

 マサト達冒険者を先頭に村から出発した一行は、やがてくる接触に緊張しながら足を進めていった。

 続きを13:00に投稿予定。

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