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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど

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レベル108-3 もう策をどうこうする段階でも無いようです

「あれだな……」

 見えてきた小鬼の群れを見て、トオル達は踏み固められた道から草むらに移動した。

 予想通り、戦闘が始まっていた。

 村の外で。

 いったいどうして、と思うも見える範囲で何が起こってるのか確かめていく。

 小鬼と、それと戦ってる者達が見える。

 距離があるので細かい所までは見えない。

 だが、村の手前にまで出て来て戦闘に突入してるのは確かだった。

「行くぞ」

 迷いはしなかった。

 背後から攻撃をしかけ、小鬼達の戦力を少しでも分散しなければならない。

「サツキ、闇を作ってくれ。

 群れの中に」

「はい」

「レンは、俺と一緒に射撃を」

「分かった」

「サトシとアツシは、中に突っ込んでいってくれ。

 俺が言ったらすぐに」

「はいよ」

「うん」

「じゃあ、行くぞ」

 言いながらトオルは、草の中をかき分けていく。

 相手に気取れないように、慎重に。

 でも、可能な限り急いで。



 村の者達と戦ってる小鬼は、トオルの接近に気づいてないようだった。

 前方の敵との戦いに全力を注いでるのだろう。

 それだけ村から来てる者達が脅威なのだろう。

 ろくろく訓練もしてない村人がそれほど強いわけもないが。

 モンスター退治に出てる兵士が中核になってるのかもしれないが。

 そこは大きな疑問だった。

(どうなってんだ?)

 と言っても、事が有利に動いてるならその方が良い。

 理由や原因はあとで判明するだろうし、トオルはその手伝いをすれば良い。



 群れまでの距離が詰まる。

「サツキ、闇を」

「はい」

 言われてサツキが闇を生み出していく。

 発動体に意識と魔力を集中させて。

 狙いを定める事もなく、ほとんど出鱈目にあちこちに。

 暗闇が生まれていく。

 それらが小鬼達を覆っていった。

「レン!」

「分かってる!」

 言われるまでもなくレンは投石器で石を投げていく。

 闇に覆われなかった連中に次々と当たっていく。

 トオルも弓を構えてどんどん射っていく。

 もう残りは少なかったが遠慮はしない。

 ここで使わなければ、もう使う事もないのだろうから。

 その途中で、サトシとアツシに声をかける。

「二人とも、行ってくれ」

「おう」

「うん」

 アツシが盾を構えて前に進み、その後ろにサトシが続く。

 草をかき分けて進む二人は、まだ生き残ってる小鬼へと向かった。



 二人の接近に気づいた小鬼は多くはない。

 せいぜい五匹といったところだった。

 その五匹が、集まって二人に向かっていく。

 棍棒がアツシの盾に襲いかかる。

 直接的な打撃はないものの、衝撃が腕を通して全身に響いていく。

 何度も食らったものだが、決して慣れるという事はない。

 不快な感触に顔と気分をしかめていく。

 それもすぐにサトシの槍によって終わる。

 突き出された槍が小鬼の眉間に突き刺さり、盾を殴りつけた小鬼は地面に倒れた。

 そこから横薙ぎに振られる槍が、すぐ近くにいた小鬼を打ちつける。

 まずは叩く────サトシの常套手段だった。

 何とかこらえた小鬼だが、二歩三歩とよろめく。

 サトシはそこでトドメを刺さず、槍を持ち上げる。

 剣術でいう八相の構え。

 そこから槍を、その場にいたもう一匹に振りおろしていく。

 遠心力を伴った一撃は、標的となった小鬼の肩に向かっていく。

 槍の長さと相まって、それは小鬼の肩を粉砕した。

 死にはしないが、戦闘は不可能。

 とりあえず一匹を無力化する事に成功する。

 そこに留まらず槍を構えなおし、先程よろめいた小鬼に穂先を向ける。

 瞬時に行われた一連の動きに、体勢を立て直したばかりの小鬼が対応できるわけもなく。

 細長い刃は無防備な心臓を貫いていった。



 その隣にいるアツシも負けてはいない。

 棍棒を盾で受けつつ、前へと進んでいく。

 直接的な打撃を与えるわけではないが、相手の攻撃を無意味なものとしつつの前進は圧力となる。

 攻撃しても全く効果がないと示された小鬼達は、焦りながら後退していく。

 それでも攻撃を止めないが、アツシには何の意味もない。

 アツシも有効打を与えてるわけではないが、小鬼は状況を打開できなくなっていた。

 二匹がかりであるにも関わらず。

 それどころか、棍棒を振りおろした腕にマシェットが打ち込まれるようになっていく。

 武器の長さゆえに相手の胴体までマシェットが届く事はない。

 だが、伸ばした腕には十分に届く。

 打ち込みに合わせる技量が必要であるが、盾で受ける事でそれをより簡単にする事が出来ていた。

 相手の攻撃が盾に当たった瞬間に腕を振れば良いのだから。

 それはそれで技術は必要だが、アツシは十分にそのレベルに到達していた。

 倒せなくても、相手の攻撃を無力化出来るくらいには。

 事実、腕を切られた小鬼達は、悲鳴をあげて棍棒を手放す。

 痛みだけが理由ではない。

 筋肉や腱を斬られてしまえば腕が動かなくなる。

 他が大丈夫でも、武器を握れなくなった時点で戦力として機能しなくなる。

 もちろんそこで終わるわけもない。

 相手の攻撃手段が失われたのを見計らって、アツシは盾を前にして突進をした。

 そのままぶつかり、相手を吹き飛ばす。

 よろめいて体勢を崩した小鬼は、簡単に狙える的になる。

 その脳天にマシェットを振りおろすのは造作もない事だった。

 頭をかち割られた小鬼は、よたよたとふらついて倒れていく。

 残った一匹は逃げだそうとしたが、それより早くアツシが近づく。

 振り返って逃げようとした小鬼の側頭部に、横に振り払われたアツシのマシェットが食い込んだ。

 頭蓋に食い込んだそれは、即死こそもたらさなかったが致命傷として十分なものとなった。



 サトシとアツシが前に出て小鬼を蹴散らしていく。

 全体からすれば小さな戦闘だが、それをもたらしてるのがサツキによる闇だった。

 もし周囲から小鬼が駆けつけていれば、その程度で終わる事はなかっただろう。

 その闇が戦場全体にめぐらされた事で、状況が更に大きく変わっていった。

 分断を余儀なくされた小鬼達は、あちこちで潰されていく。

 それこそサトシとアツシがやったように、数匹程度になった集団が人々によって切り伏せられていく。

 指揮を執ってる者も、全体が見渡せないので何をどうして良いか分からなくなってる。

 それが孤立した小鬼達を次々に死においやっていく。

 中には逃げだそうとする者もいるが、闇に阻まれてそれどころではない。

 逃げ出したはずが敵(人間達)の前に出てしまい、そのまま倒されるという事も起こってる。

 闇の中に取り込まれた小鬼もそうだった。

 何とか外に出たまでは良かったのだろうが、他に仲間も見つけられずに立ち尽くす。

 そこを動き回ってる人間によって捕捉され、倒されていく。

 ただ視界を奪われるという一事をもって、小鬼達は潰えていこうとしていた。



 小鬼達もすぐに手をうってくる。

 トオルの見てるまえで闇が消された。

 見れば、呪術師の姿がそこにある。

 闇に覆われていたのだろう。

 それを打ち消してすぐに周囲の状況を把握しようとしてるようだった。

 すぐにトオルは弓を引き絞り、そいつに向けて放つ。

 周りの様子を把握しようと首を左右にふっていた呪術師だが、それには気づかなかったようだ。

 いや、気づく前にトオルが動いていた。

 ほんの一瞬の差で、トオルは相手をとらえ、呪術師は矢に貫かれる。

 胸に突き刺さる痛みでトオルの存在に気づいた呪術師は、憎々しげな顔をトオルに向ける。

 だがトオルは、すぐにその横にいる者達に目を向けた。



 そいつらは他の小鬼に比べて装備が揃っていた。

 さび付いてはいるが、鉄製の剣や槍。

 革の上着を何枚か着込んだり、木の板をつなげたような鎧を身につけていた。

 体格も、小鬼の中では優れていて、一百六十センチはありそうだった。

 特にその中の一匹は、首飾りやら羽根飾りの帽子やらを身につけ、他よりたいそう目立っていた。

 すぐに悟る。

(あれか)

 それが大将である事に。

 証拠はないが、直観がそう言っていた。

「レン、ここでサツキを守れ」

「え、あ、うん」

「サツキはあいつらに魔術を。

 とにかく動きを止めてくれ」

「あ……、はい」

 その返事を聞き終える前にトオルは、目立つ一団に向かっていった。

「サトシ!

 アツシ!」

 大声で仲間を呼ぶ。

 言われた方もトオルを見るや、すぐに意図を察して走りだす。

 三人は、この群れの中心と思える連中へと向かっていった。

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