レベル107-2 今度の連中はちょっと違います
先ほど自分達が闇に包まれた時には、どちらに進めばよいか混乱してしまった。
これが小鬼達だとどうなるのか。
それが気になった。
混乱をきたして、まともに行動がとれなくなるのか。
しっかりと状況を把握して、暗がりから抜け出してくるのか。
今までとは何かが違うこの連中がどう動くのかは興味があった。
もしさほど混乱もせずに動くなら、小鬼はそれほど愚かというわけではなくなる。
より手強い相手として認識しなおさなければならない。
出来れば、愚鈍と言われる小鬼らしく、愚かな所を見せてもらいたいところだった。
ある意味期待通りで、それでいて予想外な形になる。
時間は少しばかりかかったが、左に回った者達はさほど混乱する事無く外に出て来た。
そいつらは、すぐにはトオル達の方に向かって来ず、その場に留まる。
トオル達の方を警戒はしてるようだが、細かい所までは分からない。
ただ、そこで踏みとどまっているうちに、右側の闇がかき消された。
外を探し回っていたのだろう、分散した小鬼達の姿がそこにあらわれた。
呪術師が闇を消し去ったのだろう。
やはり、統率する者の有無が大きな違いになってるようだった。
厄介な事である。
(あいつだけは倒しておきたいんだけど……)
この状況ではかなり難しい。
弓で狙うのは、まず不可能。
敵中突破は論外。
相手が前まで出て来てくれるなら可能性はあるが、魔術を使う者は後方から影響を及ぼすのが普通だ。
例外はいるだろうが、この呪術師がそうだとは思えない。
前列に展開する戦闘員を蹴散らさない限り、そこまで到達は出来ないだろう。
基本に忠実な部隊展開に泣けてくる。
(小鬼なら、もっとメチャクチャでいてくれよ)
数だけ多い烏合の衆でいてくれれば楽が出来たのだから。
やむなく今回も逃げ出す。
その前に、弓で二回ほど牽制をしてみたが、今回は誰にも命中しなかったようだった。
走って逃げる途中で、振り向いてもう一回。
当然当たらない。
慌てず騒がずゆっくりと歩いてる小鬼達と、結構な距離が出来ていたせいでもある。
相手の動きを止める事も出来ず、矢を無駄に消費する事にもなった。
時間稼ぎにもならない。
仕方なく、そのまま後退をしていく。
追いついてくる間隔が短くなってる事に、サツキとレンの二人も不安になっているようだった。
顔はよく見えないが、雰囲気が伝わってくる。
それでもトオルは、交互に後退していくやり方を変えない。
幸い、相手はつかず離れずの距離を保っている。
攻撃を仕掛けるには、その用心深さが邪魔だが、今はそのおかげで助かっている。
「サツキ、魔術はまだ使えるか?」
「ええ、全然消耗してないので」
「じゃあ、暗闇を作りながら後退してくれ」
「大丈夫なの?」
心配そうにレンが聞いてくる。
「全然意味がないみたいだけど」
足止めとしての役目は期待出来ないのは、彼女も気づいてるようだった。
それでもトオルは、このやり方を続ける事にした。
足止めをしたいのは確かだが、それが目的ではない。
本来やろうとしていた事を考えれば、このやり方で何も問題はないのだから。
それに、やり方を変えようにもすぐに何かを閃くわけでもない。
相手にこちらが何かを考えてる事を気取らせないように、同じ事をある程度続けたくもある。
それらが上手くいくかどうかは分からないが、今は迂闊にやり方を変えるわけにはいかなかった。




