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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど
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レベル106 思ったよりも手こずりそうな気がしてきました

 暗がりの中は全く見通しがきかなかった。

 動きを阻害する事はないが、見えないというのは思った以上に行動を妨げる。

 目で見た景色を、目でとらえた『情報』を元に行動してるのだから当然だろう。

(そういや、目から得る情報って七割以上だったっけ)

 どこで知ったのかは思い出せないが、前世のどこかでそんな話しを聞いた事がある。

 五感と呼ばれる人間の感覚(見る、聞く、味わう、嗅ぐ、触れる)の中で、目で見る情報はそれらの七割を占めるという。

 どうやってそれを検出したのか、それがどこまで正しいのかは分からない。

 ただ、こうして目がふさがれてるに等しい状況にいると、それも正しいのかもと思えてくる。

 足下の草の感触から、ここが草むらの中であるのは確かだと分かるが。

(見えないって、本当に不便だな)

 こうなってみてよく分かる。

 特段害がないと分かっていても、小鬼達が闇の中に入っていかなかった理由が。

 突っ切ればすぐに向こう側に行けるのに、それをしようとしなかった理由が。

 何も見えない中では、まっすぐに進む事もおぼつかない。

 見えないというのは、それだけで大きな障害なのだと。

 その目に再び景色がうつるようになるまで、トオルは生きた心地がしなかった。



 ようやく闇を突っ切ったところで、足を止める。

 大きさはたかだか十数メートル四方程度である。

 なのに、何十メートルも何百メートルも足を動かした気分だった。

「…………あっ、サトシ、アツシ!

 こっちだ、早く来い!」

 まだ闇の中にいるだろう二人に声をかける。

 その声に呼ばれたというわけでもないだろうが、すぐに二人は出てくる。

「やった……」

「あー、もう……」

 トオルと同じく、その場で立ち止まって、周りを見渡す。

 自分達が元の状態に戻った事を確かめたいのだろう。

「急げ、落ち着いてる暇はない」

 冷たいとは思うが、そう言って二人を促す。

 小鬼達がどうするかは分からないが、そのうち追いついてくるだろう。

 じっとしてるわけにはいかない。

 走り出す三人は先ほどとは違い、確かな足取りで前へとすすんでいった。



 両手を大きく振ってるレンを見つけ、少しだけ安心してしまう。

 こんな状況だから、仲間の姿を見ると気持ちが和んでいく。

「お待たせ」

 サツキとレンにそう言うと、自分達の来た方向に目を向ける。

 まだ闇は存在してるが、いずれそこから敵がやってくるかもしれない。

 サツキとレンには、再び撤退の援護のために走ってもらわねばならなかった。

「それじゃ、行ってくれ」

 短い返事をして、二人が走り出す。

 トオルは弓を再び握って矢をつがえた。

 相手がどれだけ本気か分からないが、やる気があるならあの闇を越えてくる。

 それが狙いなので文句はないが、出来れば来て欲しくはない。

 どっちになるか悩みながら、相手の出方を待つ。

(どう出てくるかな)

 その瞬間を、じっと待つ。



 今回、相手は少しばかり意欲を持っていたようだった。

 闇の左右からあらわれてくる。

 消したりせず、迂回するあたりに慎重と堅実さが感じられる。

 闇を魔術で消せば消耗するし、突入して突っ切るとなると、上手く移動出来ない。

 また、いきなり視界がはっきりすると戸惑う。

 そうなると、周囲の様子を確かめるために足が止まる。

 ほんの一瞬だが、その瞬間が一番無防備になる。

 今しがた、トオル達がそうだった。

 小鬼も、どうやら暗視能力があるわけではないようなので、人間と同じように戸惑う可能性がある。

 そうならないようにという判断なのだろうか、小鬼達は一番無難な手段を選んできた。

(なんだかな)

 今まで見てきた小鬼とは動きが違う。

 大げさに驚くほど大した事はしてないが、多少はマシな行動をしてくる。

(やっぱり、指示を出してる奴がいるんだろうな)

 呪術師なのか、他の誰かなのか。

 今は分からないが、そういう者がいるだろうとは思えた。

 だとしたら、今までのように簡単にはいくとは思えなかった。

 ほんのちょっとした気遣いが出来るかどうかで、成果は変わってくる。

 それが出来る奴がいるなら、そう簡単に撃退もできない。

(きつい夜になりそう……)

 相手がどこまでやるかによるが、長い一夜になりそうだった。

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