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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど
114/251

レベル100 相手にも同等の存在がいるとかなり厄介なものです

「サツキ、出来るだけ闇を張っていけ。

 レン、退却の援護。

 サトシとアツシは、レンと一緒に行け」

 走りながら指示を出し、適当な所で止まる。

 レンとサトシ・アツシはトオルを残して先へと向かう。



 サツキはトオルの所まで近づいて止まり、魔術を使っていく。

「いきます」

「おう」

 トオルの返事にあわせて杖をかかげる。

 意識の集中にあわせて闇が生まれていく。



 消費も少なく手軽に使える。

 更には、発動までほとんど時間がかからない。

 それがこの魔術の特徴だった。

 魔術の中では基本的な技なだけに、それほど負担はない。

 今のサツキなら特に。



 三つほど闇をうみだす。

 それなりに経験をつんだサツキには、消耗はほとんどなかった。

 走る方がよっぽど辛い。

 トオル達と一緒に駆け巡ってはいるが、どうしても体力は劣る。

 この場にいる者達の中では、残念ながら最下位だ。

 そんなサツキを気遣って、

「それでいい、先に戻ってろ」

 トオルはそう指示を出した。



「すいません、お願いします」

 サツキはそう言いながら走っていく。

 お世辞にも速いとはいえない。

 そんなサツキがある程度逃げ切るまで、トオルはその場で敵の足止めをしていく。



 生み出された闇があるとはいえ、不安はある。

 相手に魔術師がいるなら、この闇もすぐに消されるだろう。

 そうでなくても、視界を防いでるだけのものだ。

 小鬼達が恐れず通り抜けようとすれば簡単にそれはできる。



 群れの中ならテントなどもあっただろう。

 それらが障害物になってくれる。

 なのだが、ここにあるのは丈の高い草である。

 進みづらくはあるが、障害というほどではない。

 足止めのために、誰かが敵を食い止めねばならなかった。



(まあ、飛び道具が飛んでこないだけマシだな)

 矢でも石でもそれ以外でも、とにかくそれが無いのはありがたかった。

 物理的に遮る能力は無いが、狙いが定まらなければ命中する事は無い。

 まぐれ当たりは怖いが、そうなったら諦めるしかない。

 幸い、小鬼達も警戒してるのか、闇の空間を突破してこようとはしない。

 左右のどちらかから迂回してくるのを警戒してれば良い。



 そのはずだったのだが。

 唐突に、正面に存在していた闇が消滅した。

 隔てられていた向こう側がはっきりと見える。

「な…………」



 驚くトオルの目に、集まった小鬼達がうつる。

 その背後にいる、少しばかり衣装が違う小鬼も。

 通常、腰布くらいの衣装しか身につけない小鬼であるが、そいつは首に紐を通した動物の頭蓋骨をつるしていた。

 動物の頭蓋骨を先端につけた杖も手にしている所も含めて、呪術師といった風情だった。

 それが小鬼達の魔術師なのだろう。



(あいつが?)

 何となく察する。

 他と格好が違うその小鬼が、闇を打ち消したのだと。

(まずいな)

 どうにかしたてそいつを仕留めたくなった。

 だが、なにぶん距離が離れてる。

 接近して倒す事は出来ない。



 弓で狙えばどうにかなるだろうが、構えてる暇もない。

 そんな事をすれば、他の小鬼達が襲ってくる。

「邪魔だな、本当に」

 愚痴がこぼれる。

 そんなトオルの前で、衣装違いの子鬼が叫ぶ。



「せ、おた、をつい、あ!」

 何事か叫ぶそいつに従って、小鬼達が突進していく。

 やむなくトオルも刀と盾を構える。

 とはいえ、さすがに分が悪い。



 一匹二匹ならどうにかなる。

 トオルもそれくらいは出来るくらいに強くなった。

 しかし、一度に十匹となるとさすがに対処が難しくなる。

 相手が小鬼でもだ。



 これを退けるのはさすがに無理だと思った。

 分散してるなら、個別に相手にしていく事も出来ただろうが。

 一丸となって襲ってくるのでそれもできない。

(こいつは……)



 どうやって戦うか…………と考えてすぐにやめる。

 まともにやりあっても勝てるわけがない。

 ならばとるべき手段は一つ。

 じりじりと後退して、逃げる事にした。



 とはいえ、そう簡単にとんずらするわけにもいかない。

 逃げるにしても、もう少しがんばる必要がある。

 サツキがレン達と合流するまでは粘らねばならない。

 そのため、後退もゆっくりとしたものになっていく。

 時間をかせぐために。



 足下をたしかめながら、慎重に後退していく。

 下がりながら小鬼達を見渡し、つけいる隙はないかと探っていく。

 だが、これだけ数に差があると、それも見つけられない。

 一匹一匹の動きは雑で、対処に手間取る事はないのだが。

 連携して動いてくるので、その隙が消えてしまっている。

 動きは何一つ洗練されてないが、やはり数が多いと融通がきくようだ。



 出来る事といえば、それらの背後にいる小鬼の呪術師から距離をとること。

 魔術の射程に入らないようにして、より最悪な事態をさけること。

 それが限界だった。

 救いなのは、迫る小鬼達もゆっくりと動いてる事だった。

 一斉に襲ってこないのはありがたい。

(警戒してんのかな)

 ならば好都合というもの。



 そんなにらみ合い状態をしてると、目の前に暗い壁があらわれた。

 なんだ、と思ってると、

「兄貴、早く!」

とサトシの声が聞こえた。

 考えるより早く振り向いて走りだす。



 見ると、レン達と合流したサツキが、杖を突き出している。

 トオルの前に再び闇を生み出したのだろう。

 ありがたいと思った。

 だが、そう思ってるだけというわけにはいかない。



「サツキ、ここはもういいから下がれ!

 レンも一緒に」

 二人を後ろに下げて援護にまわさねばならない。

 サトシとアツシには、残って小鬼の足止めに参加してもらう事にする。

 ここで食い止めておかないと、小鬼達におしきられかねない。



 いつも相手にしていた通常の攻撃しかしない小鬼だけならさほど問題は無い。

 しかし、今は向こう側にも魔術を使う奴がいる。

 そいつの戦闘力を無視はできなかった。



 トオル達も、サツキがいたからこそここまで戦果をあげられている。

 今までほとんど一方的に戦えていたのはそのおかげだった。

 魔術。

 その影響は大きく、計り知れないものがある。

 たとえそれが、基本的で初歩的なものであってもだ。

 トオル達の強みはそこにある。



 その優位性が消えた。

 それがどれだけの不利になるのか分からない。

 今まで発生しなかった損害も、今回は避けられないかもしれない。



(どうするよ……)

 相手がどんな魔術を使い、どれほどの腕なのかによる。

 だが、サツキより劣るにしても、魔術が脅威になるのは変わらない。

 目の前の闇が消えるのを警戒しながら弓を構える。

 そこを突っ切ってくるのか、左右のどちらから迂回してくるのか。

 警戒しながら様子を見る。



 だが、その後小鬼達がやってくる事はなかった。

 五分十分と経ち、それが二十分になる。

 さすがにおかしいと思ったトオルは、まだ存在している闇を迂回して様子を伺っていった。



(…………いない?)

 先ほどまでいた小鬼と呪術師の姿はない。

 この付近に潜んでるかもしれないが、目で見える範囲では見つけられなかった。

 いったいどこに、と思うも、それ以上に安堵感をおぼえた。

(助かった……のかな)

 とりあえず、戦闘は避けられた。

 それだけで十分だった。

 続きを15:00に公開します。

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