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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど

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レベル97 慣れないことに戸惑いますが、こればかりはどうにもなりません

 騒々しかった小鬼の群れは、やがて幾らか統率のとれた形で移動を開始した。

 武装した者達を先頭に、その後ろを腰布(というか腰藁?)を巻いただけの者達が続く。

 それが村とは別の方向へだったら、トオルもレンも胸をなで下ろしただろう。

 しかし、小鬼の列は間違いなく村に向かっている。

「なんてこった」

 誰もいないどこか別の方向に向かってくれればと思っていたが。

 それももう虚しくなった。

「ねえ、どうするの」

「とりあえず戻ろう。

 森の中を通って」

「戻ってどうするの?」

「分からない」

 すぐに考えが浮かぶほど頭が良いわけでも、知識を蓄えてるわけでもない。

 妖ネズミや妖犬を倒すためにあれこれ頭をひねってきた。

 効率よくそれらをこなすために改善や改良もしてきた。

 刀剣などの武器を扱う技術も高くなった。

 しかし。

 それらは戦争をするためのものとは言えなかった。

 兵士がぶつかり合う戦争は、それとはまた別の考え方が必要になる。

 実際にその場面に接して、トオルはいやというほどその事を実感した。

 数百はいるだろう目の前の集団を、どうすれば効率よく倒せるというのか?

 その為に、どのように動けば良いのか?

 敵を引きつけての撃退とは訳が違う。

 相手に対してどう仕掛け、それからどう動くのか。

 今までやってきた事とは違った方法が求められる。

 そんなもの、すぐに思いつくわけがなかった。

 だから、こう言うしかなかった。

「とりあえず戻ろう」

 それで問題が解決するわけもないのだが。



 意外な事だったが、草原を進む小鬼達よりもトオルとレンの方が早かった。

 森の中を進むのは相変わらずつらいが、何度か行き来しているうちに慣れたのかもしれない。

 それに、大勢で移動するとなると、どうしても速度が落ちる。

 歩く速度を他の者にあわせるうちに、自然と移動速度が落ちるのだろう。

 小鬼の群れが、女子供なども連れてるせいもあるかもしれない。

 純然たる戦闘集団でないから、余計に速度が落ちる。

 どうしてもそれらに合わせての移動になる。

 それらを守りつつの。

 周囲を警戒せねばならないから、余計に速度が落ちる。

 そのおかげでトオル達は、小鬼達がやってくるより先に拠点に戻る事が出来た。



「ただいま」

 そんな事を言ってる場合じゃないが、口から出たのはいつも通りの言葉だった。

 迎える方にはそんな余裕は無かったが。

 サトシをはじめとした拠点にいる者達は、全員が顔をこわばらせている。

 蒼白とまでいってないのは救いだろうか。

「それで、村の方には?」

 すがるような表情をあえて無視して確認をしていく。

 まずは連絡。

 小鬼が動き出した事を村に伝えねばならない。

 それが起こったら、拠点にいる誰かが報せに向かう事になっている。

「さっき、タカユキとシンザブロウを出したよ」

「よし、よくやった」

 事前に決めていた通りである。

 特段褒めるような事ではないかもしれないが、まずはその事を評価した。

 問題が起これば平静さを失うもの。

 決めてあった事とはいえ、そんな状態でやる事をなしたのだ。

 それをトオルは認めてやりたかった。

 このあたり、前世の出来事が多少絡んでいたりもしる。

(…………そういや、あの野郎。

 怒鳴るだけで解決もしなかったからなあ)

 細かい部分は忘れてしまっているが、何かしら問題が発生した時にほとんど何もしなかった者がいたのを思い出す。

 マニュアル通りに何とかしようとするトオル達を、ただ怒鳴るだけで特別何もしない。

 名前ばかりの管理職で、普段から特別何が出来るというわけでもない奴だった。

 思い出すだけで腹がたっていく。

(ああはなりたくねえ……)

 それがサトシ達への接し方に影響を及ぼしてるのかもしれなかった。

 そこまで思ったところで、過去への回想を止める。

「それと、見張りは?」

「アツシが行ってる。

 解体の二人もつけたよ」

 それも想定していた事だった。

 見張りがいなければ相手の動向は分からない。

 この先どうするにしても、とにかく見張りは必要だった。

 これで、小鬼達の到着を知る事が出来る。



「そしたら…………」

 頭を働かせていく。

 一応事前に考え出していたやり方はある。

 作戦というのもはばかられるような代物であるが。

 それを実行にうつすとしても、まだ時間がある。

 思った以上に敵が遅いので、想定以上に余裕が出来てしまった。

「とりあえず、メシにしよう」

 居合わせた全員が、顔に疑問符を浮かべた。

 こんな時に悠長にメシを食べるのか、と問いたげに。

 そんな彼らに、

「さっさと食うぞ」

と更に声をかけた。

「この先どんだけ忙しくなるか分からねえ。

 今のうちに食っておかなきゃ、もう食べる余裕もなくなるかもしれん。

 だから、メシだ」

 言われて誰もがその事に気づいたらしい。

 解体の者達が、あわてて食料を取りに行く。

「あとは……」

 最後にトオルは、拠点の片隅に目を向けた。

「狼煙の準備も忘れるなよ」

 空を覆う枝葉を取り除いた一角を見てそう言った。

 何かあった場合には、そこで火をおこして煙を上げる事になっている。

 天候に左右されるが、足を使って移動するよりは早く情報を伝える事が出来る。

 村の者が気づくかどうか分からないので確実性には欠けるが。

 それでも、一応用意はしていた。

 数少ない通信手段として。

 集めた薪や葉っぱに、手の空いてる者が火種を仕込んでいく。

 様々な準備がはじまっていく。

 あとは戦闘の準備などもあるが、それはとりあえず食事の後に回す事にした。

 慌てて同時進行しても混乱をするだけだ。

 それに、トオルも腹が減っていた。

 先に空腹をどうにかしたかった。



「あ、そうだ」

 唐突に思い出す。

「メシをくれ。

 アツシ達に届けてくる」

 帰ってきてすぐに見張りに出たのなら、食事もろくろくしてないはずだった。

 そのままではさすがに哀れである。

 陣中見舞いと経過の確認も兼ねて、外に出る事にした。

 続きを9:00に公開します。

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