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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど
105/251

レベル91-2 帰り道は危険だらけで大変です

 草をかきわけて先へと進む。

 右手に狩猟刀、左手に弓。

 矢を番える暇もなく、トオルは小走りに走っていく。

 草が音を立ててゆれる。

 夜なのでそれほど目立つ事は無いが、小鬼たちに気づかれる可能性は大きくなってしまう。

 出来るだけ離れておきたいが、相手もかなり本気になってきている。

 場所が特定されたのも痛い。

 あちこちから接近してくる音がトオルにも聞こえていった。

(結構いるな)

 一匹二匹でないのは当然だろうが、それにしても数が多い。

 見回りをしていた連中に、騒ぎを聞きつけて出てきた者達。

 それらを合わせてかなりの数になってるのかもしれなかった。

 どれだけ本気か分からないが、本格的に捜索をするつもりなら、二十や三十と数を繰り出してるかもしれない。

 確認してる余裕は無いが、聞こえてくる草をかき分ける音はかなりのものだ。

(まずいな)

 今更である。

 群れに接近する事が危険である、

 攻撃までしたのだから、相応の反撃は食らう。

 身を隠す場所には困らないからどうにかなると思っていたが。

(甘かったな)

 目論見が。

 だから危機に陥っている。

 やろうと思えば突破は出来るだろう。

 相当な代償を支払うにしても。

 それは何とか避けたいものだった。

(まあ、それならそれで…………)

 狩猟刀を改めて握りなおす。

(…………なんとかするか)



 見つからないように動いていたが、気持ちを切り替える。

 もう既に見つかっているのだから、隠れても高が知れている。

 見つかってないので包囲はされてないだろうが、小鬼もあふれている。

 それらの目に触れないのは不可能だった。

 ならば。

 自分から見つけて倒していくしかない。

 姿を隠しつつ、先に相手を見つけながら。

 狩猟刀を逆手に持ち直し、弓の弦に指をかける。

 いつでも矢を放てるようにしながら、姿勢を変えた。

 逃げから攻めに。



 今まで以上にゆっくりとしながら移動していく。

 攻めに転じたとはいえ、だからといって攻撃をすぐに仕掛けていくわけではない。

 落ち着いて見渡し、攻撃できそうなのを探していく。

 弓があるから、離れていても問題は無い。

 ただ、狙いを絞らないと面倒が増える。

(頭か心臓だよな、こういう時は)

 一撃必殺。

 でなければ、悲鳴をあげるかもしれない。

 反撃をしてくるかもしれない。

 相手が手に負える程度の数だったらかまわないが、こうも多いとそれはまずい。

 いくらレベルが上がってるとはいえ、一度に何匹も押しかけてきたら確実に死ねる。

 攻めるといっても、騒ぎ立てて暴れ回るわけにいかない。

 むしろ今まで以上に静かに、慎重に動かねばならない。

 それでも不思議な事に、トオルは心が沸き立っていた。

 どれほど勢いがあっても、それが逃げだと、気持ちが後ろ向きだと気分が萎える。

 逆にこれが攻めるためであれば、前に進むためならば、息を潜める事も苦にならない。

 気持ちのあり方次第で、行いが楽しくもなれば苦しくもなる。

 その転換をトオルは感じていた。



 焦っていては気づかない事も、気持ちが落ち着いてくれば分かる事もある。

 動いていては見定められない他の動きを、留まっていれば掴める事もある。

 敵のまっただ中にいるという事も忘れてその場に留まる事で、トオルは周りの動きが感じられるようになっていった。

 研ぎ澄まされた、というのはさすがに誇張が過ぎる。

 だが、普段よりは鋭敏な感覚が小鬼達の動きを何となく感じ取っていた。

 その感覚が、近づいて来る者、遠くにいる気配、どこからどう動いてるかの軌跡を感じ取っていく。

 それにあわせて、弓を構える。

 目立たないように気をつけながら、近づいて来る気配の方に。

 草の鳴る音が少しずつ忍び寄ってくる。

 鏃をそちらに向けて、弦を引いた。

 数秒ほど待っていると、小鬼が顔を出してくる。

 こんな間近で見るのは始めてだった。

 相手の驚いた顔が妙にはっきりと見えた。

 指を離して矢を放つ。

 意識することもなく。

 矢が小鬼の眉間を貫いて頭を貫通する。

 よたついた小鬼は、しばらくふらつくと体を倒していった。

 その体が倒れる前に抱える。

 脳天を貫かれて、ほとんど即死になった小鬼に動きはない。

 その体を音が出ないように横たえてその場を後にする。

 一匹分だけだが、包囲に穴が空く。

 そこをトオルは伝っていった。

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