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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど

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レベル89-2 さすがに警戒したようで迂闊に手が出せ無くなってます

 何の動きもなく一日が終わる。

 小鬼達は群れから出る事無く終わり。

 トオル達も、監視で一日が終わった。

 辺りが暗くなり、そろそろ拠点に戻った方がよい頃合いになっていく。

 出来れば夜間も動きがないか監視をしていたい。

 しかし、人がいない。

 トオル達と同じくらいの技量の者がいればそれも考えただろう。

(無いものねだりしてもしょうがないけど……)

 やむなくトオルは、仲間を引き連れて拠点へと戻っていった。



 尾行の可能性を考えて、帰り道はわざと遠回りする事にしている。

 途中、何度も背後を振り返り、監視を置いて帰還をしていく。

 そのため、移動速度は極端に遅くなる。

 ただでさえ移動しにくい森の中である。

 移動だけで一時間以上はかかる事になってしまう。

 安全にはかえられないので文句も言えなかったが。



 戻った拠点で、遅めの食事を腹におさめ、順番を決めての就寝に入っていく。

 解体担当の者達による拠点の拡張作業は続いており、丸太による柵と盾代わりの板は更に増えていく。

 さすがに内部の居住部分はどうにもなってないが、防備は確実に改善されていた。

 光が外に漏れないよう、板や切り落とした枝葉をかぶせたテントの中で、サトシ達が毛布の中に入っていく。

 その中であれば、ランプを灯しても外に漏れる事は無い。

 だが、ここで夜更かしするような者はいない。

 早朝に起き出す必要のある者達はさっさと目を閉じて、少しでも体を休めようとする。

 余計な事に体力・気力を使おうとする者はいない。

 最前線の緊張が不毛な行為を拒絶させていた。



 見張りについたトオルは、暗い森の中を見渡そうと柵の外を眺めていた。

 小鬼がここにやってくるかは分からない。

 だが、モンスターがやってくる可能性はある。

 それに備える必要はあった。

 接近する敵を知らせる鳴子などの罠は張ってある。

 木を伝ってきたり、飛行するモンスターを警戒して、拠点の上には屋根のように板を巡らせてもいる。

 それでも、人による監視を怠る事はできなかった。



 そんなトオルの隣に、同じように見張りに入ってるサツキがやってきた。

「お疲れ様です」

「ああ、おつかれ」

 隣に立つサツキは、トオルと同じ方向に目を向ける。

「何か来てますか?」

「いや。

 多分いない。

 この暗さだから、よく分からないけど」

「夜目がきけばいいんですけどね」

「まあね。

 だんだんと慣れてくるけど、こればかりはどうにもならないからな」

 そんな事を言いつつ外に目を配る。

 幾分暗がりの中を見通す事は出来るようになっている。

 だが、それでも遠くまではっきりと見通せるわけではない。

 暗がりはどこまでいっても暗い。

「何も出なけりゃいいよ、本当に」

 弱気に思える言葉も出て来る。

「そうですね。

 それもそうなんですけど…………」

「ん?」

「あの、昼の事ですけど」

「うん…………」

 何か言いたそうな様子に、言葉を促す。

 サツキは、幾分躊躇う素振りをみせた。

 聞いて良いのか悩んでるのだろうか。

 最近は割と発言が多くはなったが、やはり誰かに話しかけたりするのは苦手なようだった。

 生まれ持った性質なのだろう。

 こればかりは仕方ない。

 それでも、こうして話しかけたり、何かを聞き出そうとするだけ進歩している。

 そんなサツキの言葉をトオルは待った。

 無理に促しても、逆に萎縮させてしまうから声は出さないで。

 その雰囲気が伝わったのか、サツキも言葉を探しながらも口を開いていく。



「昼の、小鬼達の事ですけど」

「うん」

「本当に……このままでいると思いますか?」

「ああ、それね」

「たぶん、このままじゃないと思うんです。

 そんなに大変な事に、ご飯とかが無くなっていくなら、何かをしだすんじゃないかと。

 何をするかは分からないですけど……」

 考えながら喋ってるのだろう、言葉はそれほど早くは出てこない。

 だが、言ってる事は的確だった。

「そうだろうね」

 素直にそう答えた。

 隠しても仕方ない。

「あいつらがあのまま……って事はないだろうな。

 必ず何かをしてくる。

 何をするかは分からないけど」

「やっぱり…………」

「でもまあ、俺達に出来る事は無いし。

 もっと人数がいればともかく」

「…………」

「村の人を使うわけにはいかないし。

 せめて援軍が来てくれればって思うけど。

 それも宛にはできないし」

「…………やっぱり、無理ですか?」

「分からない。

 けど、頼んですぐにやってきてくれるとは思えない。

 トモノリ様だって、自分の兵は持ってなかった。

 普通なら、何人かの兵がいてもおかしくないのに」

 北からの脅威がなければ、そちらに力を振り分けてなければそうだっただろう。

 だが、今はそんな余裕は無い。

 トモノリに限らず、最下級あたりの領主は兵を抱える余裕のない者がほとんどだった。

 だからこそ、臨時で雇う兵隊としての冒険者に需要があるわけだが。

「こうしてる間にも、何かしら動いてるかもしれない。

 もしかしたら、俺達の想像もしてないような動きを見せるかもしれない。

 でも、今の俺達に出来る事はない。

 今やってる事がせいぜいだよ」

「…………」

 その言葉に何を思ったかは分からない。

 ただ、何ともいえない静けさが訪れてしまった。

 まずかったかな、と今更ながらトオルは思った。

 だからと言って、嘘をついてまで明るい見通しを口にするつもりにもなれなかった。

 どんなに良い話に聞こえても、嘘は嘘である。

 決して良い結果を招きはしない。

 どんなに悲惨であっても、事実を事実として伝えなければ何の意味もない。

 嘘を前提に今後を考えれば、必ず間違った方向に進んでしまう。

 失敗や衰退が待ってるだけだ。

 正解や成功に向かうには、事実に基づいて考えていかねばならない。

 その事実から現状の打破を見いだせないから困ってしまうが。



「でも、どうにかしないといけないですよね」

「ああ」

 奮い立たせよう、といった強さはない。

 声に震えが感じられる。

 それでも、サツキからはこの状況をどうにかしよう、乗り越えようという意志も見えた。

「どうにかしないとな」

 トオルもそう応じた。

 今の状況では、気持ちを保つ事に専念するしかない。

 これが折れてしまえば、くじけてしまえばそこで全てが終わる。

 どうなるか分からない中で、これだけはどうにか保っていなければならない。

 いつかこの状況が終わるまで。

 それをよりよい状態で迎えるには、ここで出来る事を積み重ねるしかない。

 そのためには、気持ちを保たねばならなかった。

「まあ、どうにかしよう」

 つとめて前向きな言葉を発する。

 とりたてて大きな事をいってるわけではない。

 奮い立つような意味があるわけでもない。

 だが、サツキには伝わったようだった。

「はい」

 続く声には、さっきよりも力強さが宿っていた。



 翌朝。

「あ、兄貴」

 交代ですれ違ったサトシは、トオルに声をかける。

「昨夜はサツキと一緒だったよね。

 上手くいった?」

 返事の代わりに無言で頭に拳骨を飛ばした。

 最近購入した兜に威力の大部分は阻まれたが、衝撃の全てを吸収はできない。

 寝ぼけた頭を揺さぶる振動に、サトシは二歩三歩とよろめいた。

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