過去編 ~動き出す現実 4 ~
ーーーー話すと長くなるんだけど良いかなーー?
この言葉から始まった月影さんの過去の事。今現在に至るまでの話。聞いてはいけない様な……。そんな気持ちになりながらも、私は聞いた。
「あれは僕がまだ幼い頃だった……」
それから月影は、昔を思い出す様に空を見上げた。
「ある日幼い頃の僕は、僕の両親と車に乗って旅行をしていたんだ。勿論、その時の事はあまり覚えていない。だけど、これだけは今でもよく覚えている。旅行から帰る時、僕とその両親の乗った車は"何か"によって爆発された。いや、正確には"撃たれた"かな」
「“撃たれた”とは?」
新城の質問に対し、再び月影は新城を見る。
「あくまでも推測だけど"ロケットランチャー"とやらに撃たれたと思う」
「ろけっとらんちゃー……、ですか」
初めて聞く名前。そして困った顔をする新城、そんな表情に月影はくすっと笑う。
「まぁ、この世界じゃそんな物は存在しないからね。そんな顔をするのも無理ないよ」
「そうですか……。ではその"ろけっとらんちゃー"という物は一体どういった物なのでしょうか?」
そんな質問に月影は真剣な顔になり、新城を見つめる。
「難しくて理解出来ないかもしれないけど、よく聞いてね」
「……分かりました。」
「まず、その"ロケットランチャー"という物はロケット弾という物を発射する兵器の事で、ロケット弾は爆発する物で、車一つ簡単に吹き飛ばせられる程、とても危ない武器なんだ」
「なんて恐ろしい物なんでしょう……」
「そして、その兵器を何故か持っているのが"敵"だ」
「"敵"ですか……」
そこで二人の会話に少しの間が空いた。少しの間が空いた後、月影は話を戻す様に口を開く。
「話がズレちゃったけど、その時に何故か僕は生き残っていたんだ。その僕をたまたま見付けて、助けてくれて、そして育ててくれた。そして今に至るって訳だよ」
「助けてくれて、育ててくれた。というのは月影さんが居る所がですか……?」
「その通り。名は"輝箱舟"だ!」
「アーク……、シャイン……」
「だから、僕はそこのお手伝いをしているって訳さ」
「なるほど……」
そこで新城はつい先程、桐生を連れて行った長い髪の男の事を思い出す。
「そうだ、月影さーー」
新城が言い掛けた瞬間、月影は”何か”に気付き新城の口を人差し指で押させる。
「しっ、静かに」
〈こっちには居たか!?〉
〈いえ、居ませんでした〉
〈えぇい、探せ探せ!何としても見付け出すんだ!!〉
〈了解!〉
「まだ"敵"が居たのか……。今は新城が居るからこのままやり過ごすしかなさそうかな……」
「あの……、月影さん。先程から"敵"と呼ばれているあの人達は一体何者なんでしょうか? そして、髪の長い男の人が桐生さんを連れて行ってしまったのですが……」
月影は呆れた様な顔をして、ため息をついた。
「その人は多分"樹島"さんだね。そして、僕らが呼んでいる"敵"の事なんだけど、実は正体が分からないからただこう呼んでいるだけなんだ」
桐生さんを連れていったのが樹島さん。そして、正体不明の……敵……? 樹島さんは月影さんの知り合いなのは分かったけど、正体不明の敵って……。
そして新城は何かに気付き、月影の顔を見つめる。
「月影さん、それって……」
新城はいつになく真剣な顔で月影に何かを言おうとする。