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ノンフィクションは甘くない  作者: D
第1章 ガラナ王国 ハッシュ地区

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第2話 あんまりじゃないか

「まさか外に出られないとはな……」


 外に出ようとしたら、見えない壁に顔面を強打した。

 『巻き込まれ体質』の効果で、災害が終息するまでの間、対象区域から出る事が出来ないことを完全に忘れていた。


 外に出られないので薬草を採取することが出来ない。

 『巻き込まれ体質』のことは、なるべく話したくない。

 話したところで信じてもらえなさそうな気もするが。


 仕方がない、なんとか嘘をついて誤魔化そう。

 俺は受付嬢に渋々声をかける。


「すみません、さっき受けた依頼なのですが、急用が入ってしまったのでキャンセルしたいです……」


「分かりました、それではキャンセル料の方を……」


 やっぱりペナルティはあるよな。


「実は今持ち合わせがなくて……」


「ではギルドの方で立て替えておきますね。一ヶ月以内に必ず支払ってください。支払われなかった場合、冒険者資格が剥奪されてしまうので、お気をつけ下さいね」


 受付嬢の対応がスムーズなのを見るに、ギルド側が立て替える事例は珍しくないのだろう。

 違う依頼を受けたいが、急用を理由に断った手前、今新しい依頼を受けたら不自然だ。

 あの依頼の期限は今日まで。

 今日は何処か外で適当に寝るとしよう。

 アレフの家でたらふく食べたから空腹の方も大丈夫そうだ。


 ならば今やるべき事はこれから起きる災害への対策だ。

 まずはこの世界について詳しくならないとな。

 この世界の習俗《しゅうぞく》も、魔法に関しても、詳しいことは何も分からない。

 まずは図書館に行くとしよう。


 ◆


 受付嬢にもらった地図を頼りに、俺は図書館へ向かっていた。

 ゆっくりと歩きながら、周りの景色を眺める。

 中世ヨーロッパを連想させる古風な街並み。

 

「俺って本当に異世界に来たんだなぁ」


 これで厄介な能力さえ持ってなければ素直に感動に浸《ひた》れるんだけどなぁ。


 図書館に着いた俺は、とりあえず気になっていたことを調べることにした。

【職業:冒険者について】という本を見つけ手に取ると、俺はその場で読み始める。


「冒険者カードについて。冒険者カードとは冒険者ギルドで発行される、自分が冒険者であることを証明するためのカードのこと。冒険者カードには、自分の冒険者ランク、魔力量、そして持っている特殊能力が記され……。やっぱりか、なんかそんな感じはしてたんだよな……」


 俺の冒険者カードにも本来『巻き込まれ体質』の事が書かれるはずだったのだ。

 だが、ゼウスから授かった特殊能力だから何か不具合が起きたのだろう。

 詳細は分からないがそんな気がする。

 そんなことを考えながら、俺は目についた【特殊能力について】という本を開いた。

 

「特殊能力を持つ人間が、この世界ではごく稀に存在する。危険察知や透視など、種類は十人十色。便利な能力のみではなく、命に関わる能力だったり、周りに影響が出てしまう能力なども存在する。便利な能力を持つ人間が攫《さら》われるケースは多く、近年問題となっている……」


 ……決して便利な能力ではないけど、口外するのは絶対にやめておこう。


 その後も図書館をゆっくりと歩きながら何か情報収集に向いている本は無いかと探していると、【はじめてのまほう】というタイトルの分厚い本が目に入った。

 タイトルからして絶対初心者向けの本だと確信した俺は、その本をとって読書エリアへと向かった。


 ◆


〈魔法はイメージが重要、最初はイメージを口に出して言ってみよう!

例:火の玉を生成。目標に向かって発射!

慣れてきたら短縮化、キーワード化しよう! 

例:ファイヤーボール

それも出来るようになったら無口頭を目指そう!〉


 長ったらしい詠唱が必要なのかと思っていたが、思ったよりも簡単そうで良かった。


 イメージか。

 そもそも地球で魔法は空想上の存在だったからな。

 色々な魔法を妄想し憧れていたものだ。

 だからイメージすることに関しては自信がある。

 さて、次のページは……。


〈魔力量は成長や魔力の使用によって徐々に増えていく。魔力量の上り幅は完全に才能に左右される。五歳児の平均は500〉


 ……そういえばギルドにいた男が魔力量26は赤ん坊レベルって言っていたな。

 俺は自分の冒険者カードをポケットから取り出す。

 目を擦っても、見る角度を変えても、26という数字は変わらない。

 いや、もしかしたらこの数値も不具合によって間違って記入されたのかもしれない。

 ただでさえ呪いを抱えているのに、その上魔力量もゴミだなんてそんなのあんまりじゃないか。


 これ以上何も考えたくなくなった俺は、机に突っ伏した。

 そういえば異世界に来てから全く寝てなかったな。

 ここは静かでよく眠れそうだ……。

 いや、ダメだ……。

 寝ている暇などない。

 少しでもこの世界について調べなくては……。

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