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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第4章 幻影の向こうに映る世界 《キャンバス・フェード》
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レベル43 翠騎士 《クーフーリン》


「・・・ついたみたいだな。」


二人はフィルの退避空間からワープ。現在はあのバンダルスの祠の入口。

フィル曰く、この場所が幻想世界と現実世界とのはざまに位置するようだ。ったくなんで分かるんだか。

・・・待てよ?

なんで分かるんだ?


そう思ったレイの横で、まるで察したかのようにフィルが応答し始める。


「私の固有スキル『オベロンプレート』の能力とは、この現実世界の異変をいち早く察知するもの。つまり現実世界と様子が異なったりすればこの能力は発揮される。」


「そんなでたらめな・・・」


「さらにこのスキルの場合、その異変を察知するだけでなく、その異変に自ら接近・介入することも出来る。つまりこの事例で言えば、この幻想世界を察知し侵入できる能力になる、ということ。」


「さらには異常事態に陥っている世界が持つ特有の制限効果を、このスキルで無効化に出来る。つまり場所が変わっても、私自身の戦闘能力は変化しない。」


『制限効果』、つまり幻想世界に入った時に降りかかる身の縛りが効かないということだ。

レイはフェージョ=サタナと対面した際、レイの身体は硬直を始め動かなくなった。

『オベロンプレート』の前ではその効果は通用しないということになる。

なんて有能なスキルなんだちくしょう!


「・・・でも俺は無効化できないぞ?現に俺はあっちの世界にいってその縛りを受けていた。その時はどうする?」


「この能力は、一時的であれば他者への付与が可能。しかし大量のMPを消費する。」


付与までできるとかもうチートレベル。同じ獣騎士の類でここまで差があるとは・・・


「でもそれが無かったら俺はいよいよ役立たずだ。その手しか無くねーか?」


「方法はもう一つある。」


「それは?」


「あの効果は、フェージョ=サタナと対面して初めて発動される。発生源はフェージョ=サタナの眼にあり。相手の目を封じるか、自分の目を封じるかのどちらか。」


「『フェージョ=サタナの眼を封じる』に一票。」


「それだと私の負担が大きくなる。一人でフェージョ=サタナの両目を封じるのは困難。」


「知るか」


「しかし両目を塞いだこととフェージョ=サタナの視界を奪うことは同等にはならない。」


「それは?」


「フェージョ=サタナの身体では、眼を視界確認の器官にしていない。」


「眼はとある能力を持つ飾りってことか?」


「そう。だから厄介なこともある。」


・・・それは分かる気がする。それは


「・・・どこから攻撃するのかが分かりにくくなる。」


「そう。眼で相手を見ていない上にフィールドはフェージョ=サタナの空間。幻想世界内ではフェージョ=サタナの意図が諸に反映される。」



説明しよう。

先程フィルは、『フェージョ=サタナは眼で相手を見ていない』といった。

それはすなわち、どこから自分たちを見ているか分からないことになる。

目の前のフェージョ=サタナはただの虚像にすぎず、本命はどこかに潜んでいるという可能性が出てくるためである。


しかしまずは両目を塞がないとレイは動けない。

フィルの能力付与を使うと、後々フィルが動けなくなる可能性もある。まぁそうなるかは知らんが。


「じゃあお前はまず両目を塞いでくれ。後はケースバイケースだ。」


「・・・了解」


相変わらずアンドロイドみたいな声しやがる・・・

しかし表情は見えないものの、どこかめんどくさそうな雰囲気が感じられる。いやお前が最初にいったんだろーが。


「では、幻想世界に侵入する。もう一度目を瞑れ。」




言われた通り、レイはその場で目を閉じる。



「スキル『オベロンプレート』、発動。」



『スキル;『オベロンプレート』が発動しました。』



次の瞬間、時空は強烈なゆがみを起こし、二人を別次元へ転送する。






「・・・もう開けてもいいか?」


「まだ目を開けてはいけない。フェージョ=サタナは眼の前にいるのだから。」


「!?・・・もうお出ましかよ」


レイの視界は目を瞑った状態なので完全にゼロ。しかし自分たちの前にフェージョ=サタナがいることしゃ、その場

の雰囲気で何となく察知出来た。

さらにその異様さは、次の瞬間確信に変わる。



――― 懲りないのね、あなた ―――



「お前から感情を返してもらっていない。さらにお前の幻想世界による次元浸食をこれ以上放置できない。」



――― 相変わらずつまんない話し方ね 疲れないの? ―――



「これもお前が元凶。何とかしたいのなら自決が最善。」



――― 何で死ななきゃいけないの? 私はこの世界の神なのよ? ―――



「この世界は不要なもの、消すべき。」



――― やってみなさい 次はあなたの能力をうばってあげるわ ―――



フィルは背中の光輝く大鉾を手に構え、戦闘態勢に。

これが最後の三聖器『天絶の鉾』の進化系、『天閃の鉾』である。



――― ふーん その武器もいいわねぇ ―――



フェージョ=サタナは次の瞬間、握った拳をフィルに振り下ろした。


ッッ!!!!!


(な、なにが起こってるんだこえ~!!!)



――― ・・・へぇ、私の攻撃も耐えられるんだその武器・・・ ―――



「お前が触れていいほど安い武器ではない。」


フィルはその大鉾で、フェージョ=サタナの拳を受け止めている。


「おい!まだ目を開けちゃダメか!?」


「・・・お前はそこを動くな、そして目を瞑れ。直にその状態も終わる。」


「直にって・・・」



――― 厄介ねぇ、あなたのスキル ―――



「いくらお前の世界でも、私の能力までコントロールは出来ない。私のスキルはその効果を無効化するもの。」


フィルのスキル『オベロンプレート』の付与効果の一つに、世界特有の制限効果を無効化するというものがあった。この状況でいえばフェージョ=サタナが自由に操作できる個人能力を、スキル発動中のフィルのだけはいじれない。

この幻想世界はフェージョ=サタナの創造世界。自分の強さも相手の強さも自在にコントロールできる。しかしフィルには通用しない、ということだ。



――― そんなめんどくさいこと言われても分かんないわよ ―――



「では分からぬままでいい。とりあえずお前の両目を塞ぐ。」


(それあんま言っちゃダメじゃね・・・?作戦もろにバラしてんじゃん。)



――― へぇ、私のレイを動かすためでしょ? ――― 



(そして早速バレたぞ!)


「おい・・!!ホントに両目塞いでくれるんだろーなッ・・・!?」


「当然。そうしないと私が危ない。さすがに後半でスキル効果付与は堪える。」


「・・・お前は強いのか弱いのか分からない答え方が多いんだよなぁ」


「大丈夫。少なくともお前よりは強い。」


「ほ~そうですか~じゃあ早くやってくれるんでしょ~ね~?」


「・・・お前は本当に空気の読めないやつ。もう少し黙っていろ。」



――― 楽しそうな話してるとこ悪いけれど、そろそろいいかしら? ―――



フェージョ=サタナは右手に魔力を召喚、今にも撃ってきそうな程に魔力が手上で溜まっている・・・


「・・・もう少し待っていろ。」


「早くしろ!」


「・・・」



フィルは目の前に白い結界を張り、その後ろで鉾に魔力を召喚し始める。



――― 行くわよ ―――


フェージョ=サタナは、呪文を唱えた。



――― 『デスヴェルム』 ―――



強力な暗黒呪文。漆黒の闇が、フィルの辺りをあっという間に覆い隠す。


「・・・」


フィルはその場を動かない。しかし動きを封じられているのではない。

どうやら様子を伺っているようだ・・・


「・・・」


呪文攻撃も、張った結界がはじき返している。


「・・・」


フィルはまだその場を動かない・・・

後ろに構えた鉾には、もう結構の量の魔力が光を放ってあふれ出ている。



――― 何しても無駄・・・お分かり? ―――



あちらは再び魔力を召喚して二発目を準備中。先程張った白い結界もそろそろ砕ける寸前まで来ている。

結界は確かに強力な防衛手段の一つだが、その強力さゆえに消費魔力もまた絶大。乱発と耐久は自殺行為だ。

結界の再結成なんて最も消費する。


しかしフィルは、まだ動かない。



「・・・」



――― じゃあもう一発 ―――



「おい大丈夫か!?なんかヤバい感じしてるぞ!!」


そしてフェージョ=サタナはもう一度魔力をフィルへ放つ。



――― 『デスヴェルム』 ―――




強大な暗黒の魔力が、さらにフィルを包み込む

急速で相手の身体を蝕む、悪魔のチカラ



(・・・)



・・・




そしてフィルは、ついに動き出す ―――



「ッ!!」


フィルは鉾先に溜まったスペルを、思いっきり前方へ突き出した。




滅魔光(アストレア)





滅魔のチカラを纏い、かなり眩しい一閃の聖光

そしてそれは、闇のチカラが届くより先に



幻魔王の両眼を、焼き焦がした ――――



――― ッ!!!??? ―――



焦がすと同時に、フェージョ=サタナが放った闇のスペルは霧へと変わり

そしてそのまま辺りに散っていった。

『デスヴェルム』の効果が切れたその薄霧は、もう何のチカラも存在しない。


「・・・もう目を開けても問題ない。」


「もう開いてるわ。まぁ感謝はしとくがな。」


「本来なら報酬金を即時に手渡すレベル。」


「そのセリフなかったらカッコよかったのによ。」


そしてレイも竜王の剣を手に装備、フィルも再び武器を構える。

目の前のフェージョ=サタナは、多少のダメージで少しうろたえていたがもう立て直したようだ。



「・・・第2ラウンド。次は2対1だからよ、そろそろ覚悟してもらおうか。」



――― フフフ、可愛いわね・・・ ―――



「あんま言われねぇんだよ、『可愛い』って。そんなに可愛いかおれ?」


「全く。むしろ少々癪に障る程度。」


「その言葉そっくりお前に返すを発動。」



――― ・・・早く私のものになって ―――



フェージョ=サタナはその手をレイへと伸ばしていく。


「悪いがお前のものになる予定はない。ここで死んでもらおうか!!」




レイの剣が、業火を発して赤く染まった。




対フェージョ=サタナ、開始 ―――




次回投稿日;5月13日

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