レベル17 解放 《スーパーノヴァ》
アリナは呪文を唱えた。
「 『オーディバイン』ッ!! 」
状態異常系の呪文だ。紫色のスペルが敵の呪文耐性を一時的に弱くする。
呪文がメインのアリナにとって、これがヒットすればかなり大きい。
『お~ちっちゃいクセに使う魔法はいっちょ前かよ~おい!』
「だ、誰がちっちゃいですかッ!!」
『ん~でも、相手が悪かったね~おい!』
「ッ・・・?」
ベヒーモスは片手の上に紫色の邪悪な怨念を召喚すると、
『その呪文、効かないね~おい!』
その怨念を自分の体内に取り込んだ。
次の瞬間、ベヒーモスの前に紫色の光の壁が召喚された。
「!?まさかあれは『ケミセリド』の効果ッ!??」
『ケミセリド』とは、自分の目の前に紫色の光の壁を作ることで、敵からの呪文攻撃を跳ね返す上級呪文だ。習得している者はあまりいない、珍しい魔法だ。
「まずいわ!あれだとアリナちゃんの『オーディバイン』が全て自分に・・・!!」
「ッ!?」
『へへへ~もうおそいんだよなぁ~おい!』
口調はふざけていても、やはり強い。高位悪魔は何と上級呪文も使えるのだ。
「私の呪文は通じるッ!!だから壁なんて関係ないッ!!」
アリナはそれでも呪文を唱える。
「やめろアリナ!!それは無茶だッ!!」
「ダメよアリナちゃん!!それをやっても自分が弱くなるだけだよッ!!」
『おいおいおい~!!正気かよ~!?これでも『ケミセリド』効果なんだぜぇ~おい!』
紫色のスペルが、とうとう光の壁まで到達する。
『(ふっふっふ・・・!!これで跳ね返して弱めるだけだね~おい!)』
スペルが壁に当たる瞬間。
『スキル;「フィドゥーティア」が発動します。』
「ッッッ!!!」
パッ!!!
次の瞬間、何かの力によって突如ベヒーモスの光の壁が一瞬でただの霧に変わってしまった。
『ッ!?はぁ!?』
そしてスペルはそのままベヒーモスに直撃する。
!!!!!
『ンンッ!!!???何でだ何でだ何でだああああ????おいおいおい!!』
ベヒーモスの呪文耐性は高めの方だが、耐えるベヒーモスに次々と『オーディバイン』のスペルが直撃していく。
『!!ふ、ふざけんなッ・・・!!おいおいおいおいおいおい!!!!』
「アリナのやつ、一体なにしたんだ・・・!?うおッこっち来たッ」ギイン!!
「あれはまさかスキル・・・!?」
仲間を信頼し、そして仲間の気持ちに応えたい ―――
その強い気持ちが強く共鳴し、まれに相手の耐性や効果を全てかき消すのだ
それがスキル;『フィドゥーティア』である。
ベヒーモスは必死に抵抗するがついに抵抗はかなわず。
スペルがベヒーモスに侵入し、身体を紫色の濃い霧が包み込む。
ベヒーモスは呪文攻撃にとても弱くなってしまった。
『はあああああああ???????おい!』
「行きますッ!!」
アリナは再び杖先に意識を集中させる。
「眠りし核の粒子よ、我の前に集い現出せよ・・・!!」
『(まずいぜおい!あれはまさか・・・!!!)』
「あの呪文って・・・!!!」
「レイくんあの子があぶないッ!!」
レイは詠唱が終わる前に格子檻まで駆け上がり、剣で檻を一瞬で破壊すると
「ほら、早くおいでッ!!」ガラ・・
「う、うんッ」グスッ
レイはその子を担いでアリナの後ろまで非難する。
『なッ人質がッ・・・!!おい!』
アリナは杖の魔力を一気に解放する。
アリナは呪文を唱えた。
「 『スーパーノヴァ』ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!! 」
『お前やめッ』
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
とてつもない爆風に、すさまじい爆発音
破壊神の如きその所業は
ベヒーモスを一瞬で消し去った。
『ベヒーモスを討伐。それぞれ経験値6200、0ゴールドを獲得。
スキル発動;レイ=ベルディアのみ経験値24800獲得。』
「何だあの呪文は・・・!!」
「レイくん早くここから逃げないとッ!!!」
洞窟全体を大きく揺るがすほどの威力だ、今の洞窟は倒壊寸前である。
「アリナ!にげるz・・・
レイはアリナの方を振り返る。
しかしアリナは魔法を放った場所で倒れ込んでいる。
「は!?どうしたんだあいつッ!?」
「レイくん!多分あれは『オーバーリリース』状態だよッ!!今のアリナちゃんは動けないんだよ!!」
『オーバーリリース』状態とは、大量のMPを一瞬で放出することで生じる、その反動による身体の拒絶反応である。別に命に別状はないが、しばらくの間は歩くどころか立つことも出来ない。
「ッ!動けねぇってことか!」
レイはすぐにアリナをもう一方の片手に担ぐと、行き来た階段をダッシュで駆け上がっていく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!!!!!!
「まずいッ・・!!みお姉!先に出口まで行っててくれッ!!待たなくていい!!」
「レイくんたちは!!??」
「今ダッシュでそっち行ってる!!レバーの場所ももうすぐ危ないだろ!!」
「分かったッ!!」
ベヒーモスの間が完全に倒壊、今度は地上層の倒壊が危ない。
「おおおおおやべえええええ!!!!」ダダダダッ!!
ガラガラガラ・・・・!!!!ガンッ!!ガラガラガラ・・・・!!!!
後方の岩壁が倒壊を始めた。レイの足元も崩れ出す。
「やべええええええ!!!!!」ダダダダッ!!!
レイはアリナを担いで必死に駆け抜ける。
「レイくんッ!!」
ようやく外が見えてきた。ミオンは外に避難しているようだ。
「早くこっち!!」
「おおおおお!!!」ダダダダッ!!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
暗黒洞は、完全に倒壊した。
「ハァハァハァハァハァハァハァハァハァ・・・・・・!!!!!!」
「れ、レイくん大丈夫・・・?」
「そんなのだいじょ$&>*&$#“%~~~~!!!!」
「何言ってるか分からないけど大丈夫そうだね。」
「しょう、がッ!・・・ハァハァ・・ないだろッ!!ハァハァ・・・二人担いでッ・・ハア!走ったからよッ!・・・・」
「そうだね~お疲れレイくん・・・」
「みんな、ありがとう・・・!!!」グスッヒグッ・・
「お、おいおいッ・・・ハァハァ、泣く、のは・・勘弁ッ!ハァハァ・・・してくれ・・・!」
「まぁ別に泣かせてるわけじゃないし、いいんじゃない?」
「ん~・・・・」
「あ、アリナちゃんの目を覚ましたみたい。」
「・・・!あれ、ここは・・・?」
「やっと気づいたみたい。ここは暗黒洞の入口だよ。」
「そ、そうですかお姉さま・・・私、呪文撃った後、そのまま気絶して・・・」
「うん、それでレイくんが担いでここまで逃げてきたの。」
「逃げたって・・・まさかベヒーモスはまだ生きて・・・?」
「いや、ベヒーモスはちゃんと倒したよ。逃げてきたのは洞窟が倒壊したからかな?」
「えッ・・・倒壊・・・?」
「そうだこのバカッ!!お前が周り見ずに爆発呪文なんか撃つからッ・・・ハァハァ」
「!!・・・」
「どこで爆発系魔法とかいう上級魔法覚えたんだよ・・・」ヤレヤレ
「お前この女の子に当たってたらどうするつもりだったんだ全く・・・」フー
「・・・確かにそれは反省するべきかな。」
「ご、ごめんなさい・・・」
「ったく、みお姉が崩れる岩壁を『プロイ』で何とか抑えてたからまだ良かったものの・・・」
「うんうん。」
「・・・」シュン・・・
「・・・まぁ、でも・・」
「・・・?」ピクッ
「よくやった。それは褒めてやる。」
「!?・・・」
「今回のお前の貢献度はナンバーワンだ。頑張ったなアリナ。」
「・・・!!!」グスッ・・!
「おいおい・・・泣くなって・・・」ハア
初めて言われたのだ。
それはずっと誰かに言ってほしかった、ずっと待っていた、その言葉
『よくやった。』
アリナに何かがこみ上げてくるのも無理はない。
「う、うぅ・・・!!!うわ~~~~ん!!!!!!」
アリナは、なんとレイに飛び付いて泣き出した。
「おいおい勘弁してくれって・・・・」ヤレヤレ
「いいじゃないレイくん、アリナちゃんも嬉しかったんじゃない?」
「・・・やっぱまだまだ中身も子供だなコイツは。」
「レイくんもナルシストモードの時は子供っぽいけどね。」アハハ
「う、うっせ・・!」
「・・・じゃあそろそろ帰ろうか。行きに言ってたスケジュールだと、もう終わりでしょ?」
「・・・まぁな。でもこの二人、まさか俺が担いで帰るのか・・・!?」
「・・・しょうがないなぁ、女の子は私が負ぶっていくから、アリナちゃんはお願いね・・・。」
「はぁ~・・・へいへい分かったよ。」
レイ=ベルディアパーティー一行
討伐クエスト;『迷子の救出』 達成
次回投稿日;4月13日