番外編 その頃のウィザーさんち
今回は番外編ということで、メタ的ネタ、発言などを多分に含む内容となっております。
苦手な方はご注意ください。
「――この世界は、間違っているっ!!」
メロ――いや、ウィザーは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の女騎士を除かなければならぬと決意した。
ウィザーには小説がわからぬ。
ウィザーは、魔王である。
ダンジョンを造り、ドリィと遊んで暮して来た。
けれども出番に対しては、人一倍に敏感であった。
「……ウィザー様? いきなり叫んだりして、いったいどうなさいました?」
「どうもこうもない! 主人公であるはずのこの俺が本編に登場しなくなってから、いったいどれほどの話数が経過したと思っているのだ!!」
「えっと――」
「――十話だ! 既に十話もの話数が経過してしまっているのだっ!!」
「えぇ……答えさせる気がないなら何故聞いたのですか……」
他にも『わざわざ数えたのですか?』など、色々と言いたいことはあったが、それをすると話が進まなさそうなので、ドリィはその衝動をグッと堪える。
いじらしい、健気な娘であった。
「まあ、それはともかくとして……。そうですか、アレからもうそんなに経ちますか。時の流れは速いものですねぇ……」
なお、作中時間では数日しか経っていないのだが、この番外編においてその矛盾は些末事でしかない。
でなければ、そもそも“話数”ってなんだよ、という話になる。
なんとも都合の良い話ではあるが、今後どんなにツッコミどころがあったとしても『番外編だから』ということで、平にご容赦願いたい。
『番外編だから』――それは、魔法の言葉『仕様です』に勝るとも劣らない、最上無二の言葉であった。
「しみじみしている場合かっ! それほどの長期に渡り主人公を不在にさせる――このような世界が間違っているのは誰の目から見ても確定的に明らかであるっ!!」
「はぁ、仰ることは分かりますが、お話の都合とか、そういったものがありますしねぇ……こればっかりは仕方のないことかと」
「これが仕方ないで済む話か! このままでは近い将来、とんでもない悲劇が起こってしまうのだぞ……!」
「悲劇……!? どういうことですか、ウィザー様っ!!」
内心では、どうせくだらないことだろうと思いつつも、話の流れを妨げてはならないと、一応乗った振りをするドリィ。
気遣いの出来る、心優しき娘であった。
緊迫した空気が場に流れる。
「ああ……いいか、ドリィ? このままいくとだな、将来我らの活躍がアニメ化された際……」
はい、シリアス終了。
緊迫した空気は一瞬にして霧散した。
え? シリアスなんて最初からなかった?
ははっ、抜かしよる。
「最初こそスタッフロールの一番目に俺の名前があったのに、物語が進むにつれて一番目をセリアスに取られ、二番目すらタゴサクに取られ、そして三番目になってようやく俺の名前が出てくる……なんて悲劇が起こるかもしれんのだっ!!」
「なんですってー」
予想以上にくだらなかった内容に、思わず振りも忘れて棒読みになるドリィであった。
「そんなことになってしまったら、アニメが終了したあともネットで延々と“第三の男”なんてバカにされ続けることになる! しかも、俺の声をあててくれた“中の人”にまで迷惑をかけることになるのだ! これを悲劇と言わずしてなんと言うっ!!」
うぉー、と頭を抱えるウィザー。
ドリィは心底くだらないと思いつつも、しかしそんなウィザーに手を差し伸べる。
その様は、まさに聖母のようであった。
「大丈夫ですよ、ウィザー様。心配は無用です」
「おぉ、ドリィ……ということは何か策があるのだなっ!?」
「いえ、策はありませんが……」
聖母のような微笑みでドリィは告げる。
「アニメ化なんて、絶っ対っ! にありえませんのでご安心ください」
その瞬間、誰かさんの心が傷ついた。
「な、何を言うか! この世に絶対なんてものはないのだ! 万が一ということがあるだろうが……!!」
「そうですね。では言葉を変えましょう――そのような心配は、最低でも書籍化を達成してからしてください」
「……アッ、ハイ」
ぐうの音も出ないほどの正論に、ただただ言葉を失うしかないウィザーであったとさ。
……え? オチはどうしたって?
ほらこれ、『番外編だから』




