友達から次のステップへ
俺とクリス以外誰もいない教室で、クリスは自分の思いを語り始めたので、俺は口を挟むことなく黙ってその話に耳を傾けた。
「だって……だって僕のせいでライトがクラスの女子から酷いこと言われたんだよ?
そしてそのせいでクラスの仲だって悪くなったんだ!
それに、それに僕があんなことしなかったら……Eクラスは優勝できたんだ!!
なのに……なのにどうして? どうしてクラスの皆もライトも、僕に何も言わないの?」
クリスは、自分の中に押し止めていた感情を暴露打ち明けてくれた。
どうやら、誰も自分を責めないのが不満で仕方がなかったらしい。
「なんでって……別にクリスは何も悪いことしてないじゃん?」
「違うんだよ!
僕が、僕がちゃんと……もっとちゃんとあの時にうまく話せてたら……ライトだってこんな大変な目に遭うことはなかったの!」
「クリスってさぁ……もしかして『自分が上手くやれなかったせいで俺に迷惑かけたのが申し訳ない』と思ったから、今まで俺にそっけない態度とってた?」
念のため、自分の考えが合っているかクリスに聞いてみると、クリスはしばらく黙っていたが、このまま黙っていても何も変わらないことを悟ったようで、コクリと頷いた。
「はぁ……クリスってさ、勘がいいんだか悪いんだか……一体どっちなのかよく分かんない時あるよな」
「……ライトだけには言われたくない」
「え? 何? 聞こえなかったんだけど?」
クリスが何かをボソリと言ってきたけど、よく聞き取れなかったので聞き返した。
が、またクリスは黙り込んだので、内心ちょっとイラっとした。
けど、このまま問い詰めたって、まただんまりクリスに戻るだけなのは分かっていたので、何て言ったのかは気になるけど、話を進めることにした。
「あのさ、そもそもクラスが揉めた原因って、うっかり俺がクリスのパンツ脱がしちゃったのが原因だから、そこは俺が100パー悪いのは分かるよな?」
「うん……でも、あの時僕が、ライトのことをもっとちゃんと庇えてれば」
「はぁ、そういうとこが馬鹿真面目っていうか……うん、バカなんだよ!」
「なっ! バカって……」
「だってそうじゃん! あの時さ、クリス、本気で嫌だったんだろ?」
「そ、そうだよ……でも、でも大切な友達が」
「バーカ! 友達だろうが何だろうが、嫌なことされた時はさ、しっかり怒っていいんだよ!」
本当にこの馬鹿真面目君は、変なトコで人に気を遣いすぎなんだと思った。
「じゃ、じゃあ! どうして、どうして僕のせいで優勝逃しても、誰も怒んないの?」
俺にバカって言われたことがよっぽど腹が立ったようで、クリスは怒りながら俺に尋ねてくる。
が、そんなクリスを見ると
(うん、やっぱりコイツは真面目なバカだな!)
そう思ってしまうぐらい、クリスは何でも真剣に考え過ぎてしまうことに気づいた。
「そんなのさ、クリスのやったことは『間違ってない』って、皆が思ったからに決まってるじゃん?」
「え?」
「だってさ、クリスがAクラスの子を助けた時、すっげぇ会場が湧いて、皆クリスに拍手してたじゃん!」
「……そうかもしれないけど」
「だってあれさ、さっき先生も言ってたけど今日一番盛り上がってたぜ!
ぶっちゃけ、あんな盛り上がり見せられたらさぁ、
『負けちゃったのは確かに悔しいけど、まぁ仕方ないか』
ってクラスの皆も思うしかないよ」
「そう……なのかな?」
クリスは信じられないような顔をして、俺に聞いてきた。
(ホントコイツは……どんだけ自己肯定感低いんだよ!)
って思えるぐらい、クリスは自分のやったことに自信が持てないようなので、コレはもっとハッキリ言いきってやらないと、きっとクリスには伝わらないと思った。
「そうに決まってるよ。
そもそも誰か文句言ってきたっけ?」
俺がそう言ってやると、クリスは静かに首を横に振った。
「だろ?
っていうか、もし誰か文句言ってくる奴がいたら、その時は俺が言ってやるよ!
『Eクラスが優勝出来なかったのは、俺のせいです』ってさ!」
俺は自信満々にそう答えてやったが、そんな俺を見たクリスは、
「……ねぇ、僕のことバカっていったけど……ライトも結構バカだよね?」
「なっ! だってそうだろう!!
元々は俺が悪いんだし」
「そうだとしても、色々悪化させちゃったのは僕にも原因があるんだから、僕だって悪いんだよ」
「はぁ? これだから変に責任感強いバカはめんどくさいんだって!」
「う゛~!! そっちだってこっちの気持ちも知らないで、何の相談もなしに勝手に全部一人で解決しようとした頑固者のクセにぃ~!」
「えっ!?」
何か予想もしてなかったことをクリスが言ってきたので、思わず固まってしまう。
(ん? 一人で解決しようとしてたって言われてもなぁ?
そもそも、事の発端は俺なわけで……。
だから俺が自分で解決しようとするのって、当然だよな?)
俺は、自分のやってきたことには筋を通してきたつもりだ。
それなのに頑固者呼ばわりされるのは、なんか納得いかない。
だけど、たぶんクリスが言いたいのはそう言うことじゃないと思った。
だから一息置いて、クリスが一体何を求めていたのかを考えてみると、
(もしや?)
そう思うと同時に、ある答えが浮かんで来た。
「……ねぇ、もしかして俺がクリスを頼んないで、一人で色々やってたから拗ねてた……とか?」
まさかな~? って思いつつ、クリスに聞いてみると、クリスは顔を真っ赤にしながらコクリと頷いた。
「だって……だって僕が一番の友達だって言ってたクセに、僕に何も話さないで勝手に一人でどんどん何でもやっていくんだもん。
だから……僕はもうライトにとって要らない友達なのかと思った」
クリスは恥ずかしそうにしつつも、不安そうにしているという、何とも複雑な思いを俺に打ち明けてきた。
(……いや、そんなこと言われてもなぁ)
内心そう思いつつ、
(そんなの誰が分かるか!!!!)
と、口に出して言いたくなる気持ちもあったけど、クリスは元々臆病な性格なので、自分の思いを表に出そうとしないどころか、奥に仕舞って隠そうとする性格だ。
だから、ここは責め立てない方がいいと思った。
(ったく、めんどくさい性格してるよな。クリスも!)
そう思いつつも、クリスが一番の友達というのは俺の中で変わらないのは、
(俺のことを最初に「凄い」って言ってくれた、本当に凄い奴だからな!)
だから、俺からクリスに言える言葉は、
「だったらさ、もうこれからは遠慮なんかしないで、思ってること全部言えよ!
俺達さ、友達だろ?」
それだけだった。
「……うん。これからはそうするね」
そう答えたクリスの表情は実に爽やかで、何と言うか、憑き物でも落ちたかのように思えるぐらいスッキリした顔だった。
「……じゃないと、色々と鈍いライト君には伝わらないってのが、よく分かったしね」
「あ? 俺が鈍い??」
「うん。 間違いなく鈍いね!」
「ど、どこが鈍いのか言ってみろよ!」
「はぁ……それが分かんないから鈍いって言うんだよ~ バーカ!」
「こ、この野郎……あんまり調子乗んなよ!」
こうして俺とクリスは追いかけっこを始めた。
さらに教室には誰も居なかったのを良いことに、クリスは普段人前じゃ使わない魔法を駆使して逃げ回る。
そして俺はクリスのような高度な魔法なんて使えないから、クリスを捕まえることはできない。
だけど、それが悔しいなんて思わなかった。
それどころか、不思議とこの状況が心地いいとさえ感じていた。
(不思議だな……クリスと思ったことを言い合って、何も気にしないで追いかけっこしてるだけなのに、なんでこんなに楽しいんだろう?)
なぜそう思えるのかを考えると、ある事に気が付く。
実は俺もクリスも、お互いを「大切な友達」だと言っときながら、一度もお互いのことに関して本気でぶつけ合うようなことは、言わないようにして避けていたのだ。
(そっか……結局俺達って、お互い遠慮してた部分があったんだな)
そして今この瞬間、俺達の間に遠慮が無くなったように思えた。
「くっそ、いつの間にそんなに魔法使えるようになったんだよ! ハァハァ……。
それにこっちは、そんな魔法使えないって分かってるだろ!
だから少しは手加減しろって!!」
あまりにもクリスを捕まえることができないから、悪態をついては挑発をしてみたが、クリスは舌を出して、更に挑発してくる。
だけど、既に俺は息絶え絶えで、体力も限界に達していたので、そのまま倒れるように床に寝転がって、降参の姿勢を示した。
「あれ、もう終わりなの? 根性ないね~?」
「きょ、今日は……マジでもう勘弁して」
ここ最近何かと無茶をしてきたのもあって、素直にしんどいのを口にした。
するとクリスは神妙な面持ちで、
「ライト……色々ごめんね」
その言葉は、色んな意味を込めて謝ってきたんだろうけど、別に俺はクリスに謝ってほしいわけじゃなかったから、
「……別にいいって」
「……うん」
「それにさっきも言っただろ?
だって俺達」
「友達だろ!」
「友達だもんね!」
二人で同時にそう言ったあと、互いに笑いあった。
こして俺達はこの日を境に、友達から何でも言い合える親友となった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
諸事情でしばらく最新話の更新を止めよう考えていますので、一端ここで完結しましたが、ちゃんと書きたいと思っていますので、遅くても一カ月後には再び更新します。
なので、この作品が面白いと感じたり、続きが早く読みたい! と思っていただいた方!
ぜひブクマや評価など何らかの形で応援よろしくお願いします。
そしてたくさん応援してくれたら、チョロイのでその分復帰が早まる気がします(笑)




