手抜きをされても死ねるだろう
日本での野暮用を済ませて、僕たちはまた異世界に向かった。
学校?
もう、「家庭の事情」で休むということにしたよ。たまに気まぐれで出席するかもしれないけどね。
仮に全休したとしても卒業出来そうだし。
そう言えば、ばあちゃんは日本で武器を三本調達してたよ。
金属バット。
レスラー時代から金属バットで凶器攻撃してたらしく、慣れてるんだって。
まず、源太にはお菓子作り教室という重大な使命があるので王城へ向かう。
「僕たちは何をするんだ?」
こちらに戻って早々に両親とばあちゃんは狩りに出てしまった。
残されたのは僕と柑奈と姉ちゃん。
「今のまま、冒険者登録してもいいんだけど、正直私の縁者ってだけで色々あると思うから、最低限鍛えないとね〜」
恨みを買ってる?
ありそうだな。
「とりあえず、物理耐性と魔術耐性はある程度まで上げたいし、多少剣も仕込みたいところだね」
ふむ。
割と僕らのことを考えてくれてるじゃないか。
クランハウスの裏には結構広めの鍛錬場がある。テニスコート四面分くらいかな。王都の城からそれほど離れていない所に、これだけの広さの土地を確保するのだから、どれだけ力があるかわかるというものだ。
「まずは二人がかりで私にかかってきなさい。模擬戦ってやつね」
そう言って僕と柑奈に木剣を渡した。
幅広の剣を模した物なので、意外と重い。
「これ、柑奈には重くないか?」
「うーん、持てない事はないけど、振り回すのはちょっと大変だね」
「柑奈ちゃんは竹刀にしとく?一応あるけど」
柑奈は首を振った。
「このくらいの重さはどうにかしないと剣なんか振れないでしょうから」
「うんうん、柑奈ちゃんはわかってるわね」
柑奈がそれでいいなら、いいのだが。
問題はステータス考えたら僕らの攻撃は当たるわけがないし、仮に姉ちゃんが武器を持たなくても一撃当たれば僕らは死ねるだろう。
いや、それどころか仮に僕らが輪廻転生してるとしたら次とその次の人生が一撃で終わってもおかしくないかもしれない。
「あ、もちろん私からの攻撃は全力で手抜きするよ」
いや、手抜きされても多分無理だと思う。
根本的な部分で姉ちゃんって頭が悪いからな。
「あのな、姉ちゃん」
「何、怖じ気づいてるの」
「今の僕らって、魔物に例えたらどのくらい?」
「うーん、ゴブリンよりは多少強いよ、ステータスで言ったらホブゴブリンくらいかな」
「じゃあさ、姉ちゃんはホブゴブリンを殺さずに痛めつける事できる?」
「やった事ないからわからないけど、多分無理だね」
「じゃあさ、僕らも死ぬよね」
姉ちゃんはたっぷり考えて
「うん、そう言われたらそうだね」
おい。
「姉ちゃんは、可愛い弟と妹を殺す気だったのかな?」
姉ちゃんからしたら柑奈は言わば妹だ。
「いやいや、ちょっと自分の力を謙虚に考えすぎてただけよ。決して生意気な弟と可愛い義妹を殺そうなんて思わなかったよ」
僕が生意気なのは承知の上ですが、何故さりげなく「義妹」と書いて「いもうと」なのか。
「大丈夫だよ、ちゃんと腕輪してるから」
そう言って右手を見せた。
ああ、なるほど。
この腕輪が力を制御するわけね。
「これ、昔からあるらしいんだけど強過ぎる師匠と弟子が稽古するために、力を抑えてくれる腕輪だって」
確かに鑑定したらその効果があるようだ。
対戦相手とSTRの値を同じまで抑えると。
そういうものがあるなら、最初から言えよ。




