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二十六 血族①

 僕が計画していたサプライズパーティそのものの姿で、僕へのサプライズパーティが開催された。


 僕が計画していた店に、計画していたビンゴゲーム。

 まぁ、景品は僕の武本物産の品ではなく、どこにでもあるお金さえ出せばビンゴゲームセットとして購入できるものだ。

 五万、十万、十五万と、セット料金は内容とともに値上がっていく。

 さて、このパーティは一体いくらぐらいの予算だったのだろうか。


 僕は立食となっている食事をチラリと見下ろした。

 シートケーキにサンドウィッチ。

 ローストビーフなどの冷食にサラダ。

 手毬寿司。

 華やかで豪勢にも見えるが、子供の誕生日のような安っぽい品目だ。

 けれどもこれは大人向けだと言い張るように、酒類の瓶や缶が添えられている。

 だが、出席者が警察官という事で、減っているのはノンアルコールのソフトドリンクばかりだ。


「あのホテルがパッとしないのは、そのせいだったかな。」


 五つ星の風格を知らない者が、五つ星ホテルを再現するなどできはしない。


「まぁ、いいか。楽しんでいるのなら。」


 周囲の人たちは歓談に花を咲かせて思い思いの円陣を組んでおり、主役だと持ち上げていた僕の周囲には誰の壁も出来てはいない。

 山口は痣の増えた僕の姿が嫌なのか会場から一番早くに姿を消し、葉山はそんな相棒を追って出て行った。

 佐藤と水野は何やら怒りを顔に浮かべて、幹事はどこだと僕から幹事を奪った人物を探しに行ってしまったばかりだ。

 一人ぼっちになった僕は、僕への関心がようやく薄れたようだと感じ、トイレに向かう振りをして会場を出た。

 違うか。

 僕のガードを緩めたのはそれが合図だからだ。


「合図はね、どこにでも転がっているの。簡単だよ。いつもと違う。それさえ覚えていれば君は動ける。いつもと違うと感じたら、君もいつもと違う行動を取りなさい。」


 木造の二階建ての海の家のような外観のこの居酒屋は、内部は南欧風のデザインとなっている。

 僕達が貸し切りにした二階のラウンジの扉は全面ガラス張りで、そこを出て後ろを振り向けば、楽しそうに歓談する集団だ。


「僕がいつも自分は入れないと考えていた空間だ。でも、いつだって僕にドアは開かれていたんだよね。ただ、僕がそこに自分から入らなっただけで。怖いからって。」


 僕は僕に気付いていないだろう全員に頭を下げた。

 そして、僕は待ち合わせに向かうことにした。

 店を出て、人込みを避け、影の中に入り込むようにして、僕は目的地まで歩いた。

 僕が辿り着くまでに誰かに見つかって、この会合が失敗してはいけない。


 彼が死んだのは僕のせいだからだ。


 峰雄が橋場に居続けることができれば、彼は死なずに済んだだろう。


 でも、僕は血が大事と教わっている。


 血は父方、母方のどちらでも繋がっていればそれが家族だ。

 橋場の四兄弟が全員同じ母の子供であれば、彼等は全員家族で兄弟と言えるのだ。

 次男と四男は別の男の子供だが、四男だけは親族に認められずに不幸だったのは、父親が評判の悪い緑丘だったという点、それだけである。

 種が緑丘と知られると四男だけ橋場の家には認められず、親族と橋場善之助の折衷案として彼は死産とされた。

 死産とした上で四男を橋場の養子として届出ろと、親族から強制されたのだ。


 この状態であるならば、善之助の妻祥子と善之助を離縁させた時に、善之助は四男を完全に放逐できるという親族たちの思惑である。

 親子関係否定を出すことを良しとしないどころか、同じ自分の子として相続人にすると言い張った善之助への最後通牒である。


 けれど結局善之助が折れたのは、実際にその時点で妻が緑丘の執拗な金の要求も受けている事を知っており、親族の提案通りにすることで緑丘の関りを切れるとも踏んでいた。


 四男は生まれたその日に死産扱いされ、同日同時刻に生まれたとされる緑丘悠児という身の上にされ、そして橋場が特別養子縁組をに結んで引き取った形となった。

 しかし、祥子が生んだ本物の峰雄が、何の手違いか本当に別の子供と取り換えられていたのである。


 峰雄が緑丘フジを母とするである悠児と知ったのは、何のことは無い、峰雄の三歳の誕生日の宴席で招かれざる客の緑丘が暴露したからに過ぎない。


 自分の産んだ子供が取り換えられていたと知った祥子は自害し、消えた四男がどこに行ったのか緑丘自身は沈黙を突き通し、橋場家は行方不明の四男のために緑丘に言われるがままに金を渡し続けることとなった。

 それでも善之助を含めて三兄弟達は、血の繋がらない峰雄を可愛がって育てていたのだ。


「全部、僕のせいかな。」


 あの頃の峰雄とよく似た中学生くらいの少年が僕の目の前に立っていた。

 彼は僕の独り言の問いかけに、頬を緩ませて「そうだ。」と答えた。

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