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十一 俺はお前の相談役じゃない①

 馬鹿は目覚めた。

 それも神がかっている。


 昏睡状態だった玄人は助ける気も無いのかと思うほどの乱暴さで器具を外され、バイタルを測られた。

 順序が違うと感じたが、俺達の目の前で医療行為らしき行為をしていた奴らは玄人を既に脳死を迎えた献体と認識していたらしい。

 だったらもっと敬えと聞いたその時に思ったが、実際の奴らが違法な臓器売買を斡旋している疑いもある団体だったと、後日にたかより耳打ちされて納得するしかなかった。


「どうしても、玄人君の臓器が欲しいと注文していたお大臣様がおりました。いつ死んでもおかしくない高齢でも、若く美しい人間の臓器を手に入れて生き続けたいようですね。あの団体はそういう輩が出資して作り上げた団体でしたよ。」


 そんな奴らに目の前で好き勝手されても俺とかわやなぎが動けなかったのは、「玄人を動かせば死ぬ」という呪文に自分自身を縛っていたせいであり、転院が無事に終わる可能性があるという希望も俺達は抱いていたからだ。


 だが、奴らはストレッチャーに玄人を移乗させるやそのまま手術室に向かった。

 俺達は病院玄関に転院用の車が無いのを知るや手術室へと急ぎ、しかしどこで通路を間違えたのか、辿り着いたのはガラス張りの手術の見学室であった。


「うわ、相模原第一にもこんな部屋があったんだ。ドラマみたいじゃん。」


「楊!そんなことはいいから、クロはどうした!戻るぞ!」


「ガラスの向こうにいんじゃん。あいつは。」


 楊はガラスへと歩いていく。

 いつのまにか彼は、部屋にあったパイプ椅子の背を掴んでいた。

 俺も手近な椅子を掴むと、楊の立つところまで進んだ。


「一緒にせいので破る?それともお餅みたいに順番に?これって強化ガラスだろうね。」


 楊に殺気が見えたのは、俺も下の状況を見て殺気が芽生えたほどだからであろう。

 全身打撲で体中に青あざがダルメシアンのようにあるが、彼は眠っているようにしか見えず、その彼がこれから切り刻まれ内臓を取り出されようとしているのだ。


「死んだ子供を抱きしめることもさせねぇで、体をばらすつもりかよ。させるか。」


「あいつに俺が引導を渡してからだろうが。これじゃあ、あいつはまだ死んでいないも同じだ。生きている奴を救うのは当たり前だ。やるぞ。」


「でもさ、俺達は確実に死ぬね。」


「かまわないだろ。お前は財閥のお姫様が婚約者だ。」


「お前だって隠し財産が唸るほどあるだろ。」


「刑務所から出ても残っていたらね。」


「はは。刑事が刑務所って、普通以上に虐められるから守ってね。」


「同じ場所だったらね。」


「同じ場所だったらいいね。じゃあ、やろうか。」


 俺達は椅子を持ち上げ、そして、椅子を真後ろに投げ捨てた。


「うそん。ちびが目を開けている。」


「くそ、手術室だ!」


 俺達が今度は間違えずに手術室になだれ込み、あいつを救出したのは言うまでもない。

 ついでに、後先考えずにあいつを救出した俺達に追手がかからなかったのは、様子見をしていた髙が、手術までの手順と書類の不備では殺人にもなるよと、彼らを聴取というお茶会に誘っていたからであった。


 そして、ここで終わればハッピーエンドだっただろうが、生還した玄人の代わりに山口が入院していて、病院の廊下で髙が俺ににこやかな笑みを見せているのはどういうことだ?

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