92 大切なこと
当直として、ベルタとベノンは屋敷内の見回りをしていた。
ベノン:エステルグリーン伯爵家の警備担当であり、クルーム男爵家5男、ベルタの幼なじみの17歳である。
「お前の旦那、太郎様はいい人だな。」
「そうでしょ。」
「確かに、俺には勝てない。認めざるをえないな。」
「別に勝つ必要はないでしょ。私の旦那様なんだから。」
「お前がもう手の届かないところに行ってしまったから言うけどな、俺はお前が好きだ。ずっと嫁にするつもりでいた。」
「え、ぇ。突然何言うのよ。私はもうタロー様のものだからね。」
「そうだな、あの人を見ていると女が寄ってくるのが分かる。料理が旨い、優しい、外見もまあまあ、少なくとも俺よりいい。そして、強く腰が低い。平民だから貴族に媚びるのでは無くあの人は地でやっている。確かに女なら、付いていくな。」
「そうでしょ。私の選択は間違いないのよ。」
「認めざるを得ない。だから、悔しいのさ。お前が太郎様を見つける前に手に入れられなかったことがな。」
「そう、・・・・・。私もベノン好きだったよ。ずっと、でもこっち向いてくれなかったじゃない。見合いの話がきても興味ない風だったし私嫌われているのかと思ってた。」
「幼なじみだしな、側にいるのが普通だったから、当然断って俺に相談しに来ると思ってた。」
「そんなの分からないよ。男の気持ちなんて。」
「まあ、言ってないからな。伯爵が病に倒れてマティス様の代になるようなら俺はエステルグリーン伯爵家を辞めようと思ってた。そのときはお前を連れて出ようと思っていたさ。そうしたら、太郎様が伯爵を治してしまい、すぐにお前が結婚すると言い出して、計画がおじゃんさ。笑えない話だろう。」
「そんなの、もっと早くいってくれれば・・・・。でも、スヴァールバリ伯爵家からの帰り道盗賊に襲われて、私死んじゃったんだよ。それを太郎様が生き返らせてくれた。お礼しなきゃいけないのに、痴漢と間違えて叩いちゃったんだよ。それでも太郎様は許してくれてた。と、いうより生き返ったことを本当に喜んでくれた。関係の無いアカの他人なのに。とっても嬉しかったよ。親からも余り相手にされていなくて、思い人もいない私に優しくしてくれたんだから。それに、太郎様は何の見返りも求めなんだよ。「生き返ってよかった」だけで。
それで、祝賀会でお酒飲んじゃって、タロー様に暴言吐いて結婚を迫ったらしい。裸にして嫁に行けない体にしたのだから責任とれって。」
「太郎様はお前に何かしたのか。」
「生き返らせるために、服破って蘇生術をしてくれたらしい、生き返ったときタロー様の手が胸の上にあったので、犯されそうなのか痴漢なのかと思って間違えて叩いた。誰にも見せたこと無い裸を見たのだからお嫁に行けないから責任とれ。って、ほとんど言いがかりだよね。」
「うん、多分俺だったら、ぶっ叩いて黙らせる。」
「でも、困っていた太郎様に追い打ちを掛ける様にフェリシア様とミミリィが吊し上げてて、私が第三夫人になった。」
「フェリシア様もミミリィさんも怖い人だな。」
「その後も、変わらず接してくれたし、私もタロー様が大好きで愛してるから、後悔はしていないんだけど。タロー様が言ったの『ベルタの唯一には成れるかも知れないけど、ベルタを唯一の人には出来ないのだけど、本当にそれでいいのか、ベルタはそれで幸せか』って。」
「まあ、夫人が複数いればそうなるよね。」
「でも、私もう結婚しちゃったし、他の人にお嫁に行けない体だからね。」
「俺は構わないぞ。お前なら処女じゃなくても。」
「え、何言ってんのよ。私はタロー様の第三夫人なんだから浮気はしないわよ。」
「本気ならいいんだろう。」
「え、タロー様に勝てると思ってんの。100年早いわよ。タロー様は私の唯一の人なんだからね。初めての時も、本当は手を出したがらなかったし、私の気持ちを大事にしてくれているんだなって思った。そんなタロー様だから私泣き落としてあげちゃったけどね。ヘヘ。」
「俺、お前と一緒に寝たら、躊躇わず手をだすぞ。」
「変態、そこがタロー様と貴方の違いよ。そうだ、恥ずかしいけど一応はいっておくけど、私今も、体は処女よ。タロー様がヒールで元に戻しちゃったから。」
「想像を絶する人だな。太郎様は。」
「血が出てて痛そうだから、って可愛いでしょ、タロー様」
「俺だって童貞なんだからそんなことしらねーよ。」
暫くの静寂
「あ~ぁ、なんか恥ずかしいこと私言わされちゃったね。雇用主の夫人に恥ずかしい話をさせるなんて、罰をあたえなきゃ駄目よね。」
「なんだよ。」
「私も第三夫人失格ね。」
「どうしたんだよ、急に。」
「私、タロー様の第三夫人から降りる。それで、ベノンに責任を取ってもらうことにする。ベノンには、私以外の女に気を許すことは禁止、他の女にちょっかい出したり色目使うのも禁止。「私を第一にすること」そうすれば貴方の唯一になってあげる。でも、今は太郎様が私の唯一の人。貴方を唯一にするのは貴方次第だからね、頑張って。」
「え、いいのか。」
「明日タロー様とアンナリーナ様の許可を貰えたらね。」
「ベルタ」とベノンが抱きしめようとするが、
「私はまだ、タロー様の第三夫人だから、他の男に触れられられたくない! 気安く触らないで。」と、可哀想なベノンくんは平手打ちされ、俯くと鳩尾に膝がきまっていた。
「太郎様はそういうことは、絶対しないの。そこが貴方との差。そんなんじゃ絶対に埋まらないわよ。」
巡回が終わり、玄関前に戻ったら、スヴェアが待っていた。
「ベルタ、今日の警備は終了していいことになったから、これで終わる。食堂で夕食だ。行くぞ」と、急き立てられるように食堂に向かっていったけど、ベノン達は食堂じゃ無くて詰め所で待機だって。




