91 二次会準備
王子殿下達の来訪で、親御さん達も少し気が晴れたのか、和やかな親子の会話となってきたが、ちょっと自分を見る目が痛い。特に父親は・・・。ま、そうだよね。
気を取り直して、全員に告げる。
「宴たけなわではございますが、これからについて、ご案内いたします。」
「本日、は多数の方のご来訪いただきありがとうございました。当館の入浴施設は1階に大浴場があるだけとなっております。大変申し訳ありませんが、ご入浴はそちらへお願いいたします。
本日、浴槽には私の故郷であるグンマーの温泉の素、男性用は草津の湯ノ花、女性用は伊香保の湯ノ花が入っておりますので、居ながらにしてグンマーが誇る温泉気分を味わうことができます。なお、男性用の草津の湯は筋肉痛や疲労回復に効用のあるグンマー随一の温泉でありまして日頃の疲れを癒やしていただければと思います。
また、女性用の伊香保の湯は神経痛、冷え性などに効用があり、グンマーでは子宝の湯と言われております。多少赤茶けた色をしておりますが、これも効用の一つとお考えください。
当館の大浴場は20名ほどは一度に入浴できますが、本日ご来席の皆様がお付きの方々を含めて全員で一緒にという訳には参りませんので、随時のご入浴をお願いいたします。」
奥様方の目が輝き、そわそわし始めた。
「また、まだ、飲み足らない、小腹が空くという方のためおおむね9時頃から、こちらに二次会用の席を設けさせていただきますので、ご希望の方はご入浴後参集ください。
また。明日は朝7時から朝食をお召し上がりいただけます。
では、まだ時間もありますので、ごゆっくりお過ごしくださいませ。」と挨拶してから、お世話メイドさんを集め、バナナアイスを配って貰う。
席に戻ると、フェリシアとマルディダ様が、「「温泉なんですか!!」」と声を合わせて聞いてきたので、
「温泉と言っても温泉の素が入っているだけで温泉そのものではありませんよ。本物に比べれば質は落ちます。」と、答えたが、それでも興味があるようで
「もう行ってもいいですか。」と子供の様にソワソワと落ち着きが無い。
「あ、そんなに焦らなくても温泉は逃げないし、本館には別の温泉の素が入っているから寝る前に入れます。」
「それは、なんの温泉なんですか。」
「沢渡の湯。そうですね、感想はミミリィからお答えします。」と、ミミリィに振ると、二人はキラキラした瞳でミミリィを見つめる。
「あ、昨日入って風呂のことですか。はい、肌がしっとりすべすべします。お風呂から上がって暫くしても肌の調子がいい感じがします。」
「太郎様、両方入ってもよろしいのですか。」
「悪くはありませんが、温泉によって効能が違うので、どっちか片方にした方がいいと思います。」
「そうですか・・・。じゃあ今日は本館の方にします。」
「そうなさってください。」
そんな事を話しているうちに、バナナアイスを食べ終えた夫人達が名残惜しそうにというか、「お代わりはないの!」という表情で一瞥して三々五々退室してゆく。バナナアイスが少なかったかな・・・。でも、やはり温泉という言葉に興味があるようだから良しとしよう。夫の方も夫人達の後と追うようにちらほらと退室して行く。
「さて、片付けを始めて、二次会の用意をしなきゃね。」と、ミミリィとエイラさん、僕の奴隷達に声を掛け厨房に向かう。
「じゃあ仕事を割り振るよ。
1 片付班1 食べ終わった弁当箱を集めて来て洗って。
2 片付班2 食べ終わったテーブルを拭いて椅子を揃えて2次会が出来るようにして。
3 料理班1 ジャガイモを洗って小指の半分くらいに細く切って、水にさらして。この籠の野菜をスティック状に切っておいて。
4 料理班2 そこの豆腐を親指の先くらいの大きさに切り揃えて。長ネギを細かく切って。終わったら、味噌漬けも切っておいて
5 給仕班 お世話メイドさんと警備担当にお弁当の用意をして。男性警備陣は外の詰め所に居るから持って行ってあげて。詰め所は寒いからお酒も一緒にね。」
等々指示をして、油が入った鍋に火を付け、パスタのついでにポチったグンマー名物モツ煮を鍋に空け火を着ける。
「出来たら、料理班1は、ジャガイモの水気を良く切って、この油で外がカリカリになるくらいまで揚げて、塩を振っておいて。イヴァンネお願いね。料理班2は、豆腐をこの鍋、モツ煮って言うんだけどね、に入れて暖めておいて。エイラさんお願い。
それが終わったら、皆で此所にある食材を一口大に切ってこの串に刺しておいて。」
と串揚げ用の食材を用意して貰う。
「ちょっと出てくるから、8時半頃までには仕上げておいて。」と、ミミリィに頼み食堂に戻る。
食堂では王子様達の食事も終わったみたいで、和やかに会話をしていた。
アンナリーナ様に目配せしてから、第一王子の後ろへと行き、
「ご歓談中申し訳ありませんが、別室の用意ができましたので、ご足労いただきたいのですが、宜しいでしょうか。」とイェルハルド第一王子達に告げると、既に理解していた様で、「分かった」と一言だけで、両王子夫妻が席を立った。
アンナリーナ様と両王子夫妻を連れて応接室に行き、席を勧めたところ、両妃とも不安そうな顔は隠せない様で、ちょっとびくびくしてる。
自分は立ったまま、「それでは」と声を掛ける。
「アンナリーナ様からお話が行っていると思いますので、単刀直入に申しあげます。本日こちらにお越しいただいたのは、両妃様の鑑定が目的です。明け透けに言わせていただければ、両妃様にアンナリーナ様に掛かっていた様な呪いの類いがあるかを確認させていただきます。そして、呪いで有った場合には呪いを解くというのが本日の作業となります。」
感情的にならない様に淡々と告げる。
「鑑定に際して、両妃様に触れる事になりますが、両王子様とも宜しいでしょうか。」
「勿論だ。」
「それでは、始めさせて頂きます。」と第一王子妃の後ろに立ち、肩に触れ手を光らせ鑑定をする。(本当は要らないけど)
あ~あ。やっぱり掛けられてるよ「不妊」。ほんと糞だな。(見るだけでも鑑定できるけど分析するには時間がちょっと必要なんだよ。視線を固定しないといけないから王子妃様には失礼だものね。)
「ありがとうございました。では、続きまして第二王子妃様の鑑定をさせて頂きます。」同様に、後ろに立ち、肩に触れ手を光らせ鑑定する。(本当は要らないけど。)
第一王子妃と一緒だね。ほんと糞だ。
「ありがとうございました。鑑定終了いたしました。 結果を言わせて頂ければ、両妃様ともアンナリーナ様と同様に「不妊」の呪いが掛かっています。」
「やはりそうか。」と、第一王子が呟く。
「あと、両妃様とも時折立ちくらみとかめまいを起こされませんでしょうか。自立神経系に作用する呪いも掛かっているようなのですが。」
「あ、はい。時折めまいがして起きられない事があります。」
「私もです。」
「では、解呪いたしますが、返呪はどうなさいますか。」
「返呪とはなんですか。」
「呪いを掛けて者に「お返し」をしてあげる事ですよ。 アンナリーナ様の時は、効用倍返しでお返ししましたけど。」
「当然であろう。王家の者を呪うなど言語道断である。」第一王子様キリキリしてる。
「では、顔面麻痺とか如何でしょうか。」
「それでは生ぬるい。極刑に処すべきではないのか。」
「呪殺しても、病死扱いとかで闇に葬られるだけですから、その程度にして犯人を突き止め断罪し一網打尽とした方が王国の為かとも思いますが如何でしょうか。」
「そうか、我が国の法で裁けということだな。分かった、それで頼もう。」
「では、解呪をいたします。また、王子妃様に触れますがお許しを。」
「是非も無し」
「では」と、第一王子妃の肩に触れ、「呪詛起動:解呪 全呪解術、リンクそのまま。」
第一王子妃の軀から黒い靄の様なものが涌き出し、黒いもやが3本の流れのように細く棚引く様に流れ出す。
「返呪:lv7 顔面麻痺(強)・疑似死斑・隠蔽付加。」呟く様に唱える。
第一王子妃様の身体が光り、追い立てられる様に黒い靄が3本の流れとなって部屋から出て行くのを、第一王子と第二王子夫妻が驚愕の表情で見送る。
第一王子妃に続いて、第二王子妃も肩に手を触れ、解呪・返呪をする。同じ様に黒い霞が3本の部屋から出て行った。
「どうでしょうか、体の具合はいかがですか。」
「あ、はい。頭が重かったものが軽くなった気がします。」
「私も、重かった頭が軽くなりました。」
「他に身体への呪いは見当たらなかったので、もう心配は要らないと思います。再度の呪いという場合もありますが、もしお加減が悪くなるようでしたらまた、アンナリーナ様にお申し付けください。」
「ありがとう。で、どのような状況となったのだろうか。」
「はい、両王子妃様に呪いを掛けていた者には、返呪を行いました。顔面麻痺と疑似死斑の呪いです。返呪に当たっては隠蔽を付加してありますので、本人にとって原因は不明です。」
淡々と告げる。
「明日辺りから、顔面麻痺となり、死斑が出てきた者、それも呪術者や魔術師であるならば、掛呪者と言ってよろしいかと。ただ、閣下やアンナリーナ様に呪いを掛けた者と同一ですと、振戦や異臭といった他にも症状が出ていますので分かりやすいかと思いますが、異変を感じて表に出てこないやも知れません。」
「分かった、明日以降、そのような症状が出ている者がいるか探らせてみよう。太郎殿、感謝する。」
「いえ、私に出来ることをしたまでの事です。お気になさらぬ様願います。」
「なにか褒美を取らせたいが。」
「いえ、このような事は目立たぬ方がよろしいかと。」
「そうか。では、今日の快気祝、飛び入りの詫びとしてエステルグリーン伯爵家に幾ばくかの支払をさせて貰う事にしよう。」
「ありがとうございます。では、お部屋でおやすみいただき、温泉もどきではありますがご入浴いただければと思います。もし宜しければ二次会へのご来席を賜りたくお願いいたします。」
「わかった」と、第一王子は手短に答え、両王子夫妻はアンナリーナ様の案内で、客室へと戻って行った。




