90 なんだかな
アンナリーナ様に目配せをして、厨房へと促す。不思議に思ったミミリィも着いて来た。
フェリシアも着いて来たがったが、マルディダ様が戻った時に、フェリシアが居ないと困るから、後で話すといい残って貰った。
「アンナリーナ様、王子殿下達がいらっしゃった理由をご存じですね。」
「え、なんの事かしら。私はお誘いしていないわよ。」
「祝宴にはね。でも違うことで呼んだでしょ。そういうことは前もって言って下さいよ。僕にだって心の準備っていうものがあるんですよ。一石二鳥いや三鳥を狙うなんてことは事前に相談してください。」
「なんの事かしらね。私は快気祝を計画しただけよ。」
「今日は①閣下の快気祝。②快気祝いという名目で奴隷達の様子見をするため親を集めた宴会を計画した。③身請けしてしまったエレオノーラ様の身柄を押しつける。④快気祝にかこつけて、王子妃を鑑定させるのが目的でしょ。で、④が主目的で、②と③が目的。①は目的を悟られないための方便ですね。ついでに言えば、⑤おまけで今屋敷の外にいる者達のあぶり出し。 そういう危険な事は先に言って下さいよ。僕の妻や奴隷達に危害が及ぶ恐れがあるじゃないですか。」
「太郎様、どういうことなんですか。」と、ミミリィが尋ねる。
「①は表向きなのさ。当初のメイン②だったんだけど、④の王子妃達にお子が生まれていないことに疑問を持ったアンナリーナ様が自分と同じ呪いが掛かっていのではないかと推理して、サプライズ扱いで王子殿下達を内密に呼び、僕に鑑定させ解呪させようとしているということさ。そうですよねアンナリーナ様。」
「外にいる者達って何。」
「多分、アンナリーナ様や閣下に呪いを掛けた連中の仲間、実働部隊かな。「敵対勢力が今この屋敷に集まっているのをいいことに、一網打尽にしたくって手勢を率いてきた。」というところだと思う。 そこまで考えてやっているんですよねアンナリーナ様。」
「ばれたかしら。やっぱり太郎ちゃんは義息子として優秀だわ。で、太郎ちゃんは如何するの。」
「そりゃバレるでしょ。どうせ寝静まった頃襲われて、「不穏分子が王子殿下達を人質に謀反を企てているのを鎮圧したが、王子殿下達は不穏分子に殺され第三王子の継承権が第1位に。取り巻きはウハウハ。」っていうシナリオになっているんだろうから、どうもこうもないでしょ。伯爵だって病み上がりで酒につぶれちゃえば無力ですよ。彼女達の親だって、安心と不満でやけ酒状態なんだから、抵抗せずやられちゃいますよ。相手はプロですよ。」
「大丈夫よ。ウチには太郎ちゃんが居るんだから、敵の1,000や2,000問題無いでしょ。」
「済みませんが、その自信はどこから来るのですか?」
「だって、私の義息子よ。なんの心配があるの。」
「それ、なんの根拠にもなって無いでしょ。」
「うふ、だって王子殿下方が屋敷に入ってから時間が経つけど、何も起きてないじゃない。太郎ちゃんが根回ししてあるって事でしょ。」
「なんか、手の内を見透かされているようですね。はいはい、手は打ってありますよ。敷地には結界が張ってあるから、敵対する意思がある者は入れないし、手出しも出来ない状態にはしてあります。多分、王子殿下方と同じ様に入ってくれば、馬車は通り抜けるけど本人は結界に阻まれ馬車の中で押しつぶされます。騎馬だったら、馬は抜けて本人だけ落ちますね。」
「ほら、やっぱり手は打ってあるじゃ無い。流石私の義息子よね。今度一緒にお風呂に入って全身隈無く洗ってあげるわよ。」
「アンナリーナ様、たとえ我が主人であっても、そんな事は絶対に許しません。」
ミミリィが冷たく言い放つ。
「でも、敵意がなく入ったものには対応できませんよ。」
「それは、ウチの警備担当とレンナルトがなんとかするわよ。多分。」
「流石に、アンナリーナ様でもその警備担当が誑かされている可能性は考えていないんですね。そうすると結局、僕の所に回ってくるってことですよね・・・。」
「太郎ちゃんは理解が早くて私好きよ。もしレンナルトに何かあったら、お嫁に行ってあげるわよ。」
「お断りします。で、アンナリーナ様はどんな手を打ってあるのですか。分からないと僕も動けませんけど。」
「レンナルトには明日朝、第一師団にレンナルトを迎えに屋敷に来る様に言ってあるから、朝8時頃まで持たせてくれればいいのじゃないかしら。」
「あと、12時間以上あるじゃないですか。無責任な発言ですよ、それ。」
「大丈夫、太郎ちゃんが居るから大船に乗った気でいるわよ。」
「はいはい。では、結界を強化します。もうお客様は来ないですね。」
「予定のお客様は全部いらっしゃったわよ。」
「では、無駄に刺激しない様にします。警備担当を全部引き上げて貰っていいですか。」
「どうする気なの?」
「門を閉め切り警備を引き上げれば、相手も油断するでしょ。そうすれば、寝静まるまで時間が稼げます。二次会後皆が寝静まるまで手を出して来ないでしょうから、それまでは楽しく過ごしましょう。それから、危険なので王子殿下方もお泊まりいただく方が良いのですが。3階東側の部屋で良いでしょうか。」
「そうね、宿泊は話してみるわ。多分大丈夫よ。3階東側って、あ、新しい部屋ね。大丈夫じゃ無いかしら。太郎ちゃん、またあれ出してくれるかしら。」
「あれ? あれって浴衣と羽織ですか?」
「そう。王子殿下方と私達と公爵夫妻の分もお願いしたいわね。」
「構いませんが、いいのですか完全に異文化ですよ。着付けは如何するのですか。」
「王子妃は私が一緒に入ってするわよ。王子殿下方はレンナルトに頼むわ。再度の着付けは要らないでしょフフ。」
「はあ、まあそうですけど。あと、下着類はどうしますか。サイズが分かりませんから汎用の、奴隷達が着ている様な緩やかなものになりますが宜しいでしょうか。それと、明日の着替えがありませんが。」
「そうね、それでいいわ。明日の着替えは城に帰るまで同じ服で我慢してもらいましょう。太郎ちゃんは・・・いいわね。 フェリシアは人を見る目があるわ。ミミリィ貴方もね。」
アンナリーナ様とミミリィを連れて食堂に戻ると、王子殿下方も和やかに舌鼓を打っていた。
「イェルハルド第一王子殿下、ヴァルデマル第二王子殿下、ご挨拶が遅れ大変申し訳ありません。お初にお目にかかります、エステルグリーン伯爵の娘婿であります、間橋太郎と申します。本日は拙宅までご足労いただき恐悦至極に存じます。王子様方に御臨席を賜れるとはつゆ知らず、素人料理をお出ししてしまいましたこと、平に御容赦いただきますようお願いいたします。」と、頭を下げ挨拶をする。
「いや、太郎殿、我々こそ先触れも行わずの急な来訪にもかかわらず、このような歓待。痛み入る。」
「いえ、滅相もございません。第一王子殿下、第二王子殿下、それに王女様までの拙宅へのご来訪は当家の誉れとなります。本日の料理につきましては、私の故郷グンマーの料理でありまして、王族方のお口に会いますかどうか。なにとぞご寛容賜りますようお願いいたします。」
「ははっ太郎殿、それほどかしこまらなくてもよい。先ほどマルディダから料理について説明を受けたし、我が国の料理とは異なるものであるがどれも美味であり、来た甲斐があるというものだ。現に、我が妻などは料理に夢中で私の相手もしてくれん。」と、第一王子殿下は笑って答えてくれ、第二王子殿下微笑んで「その通り。」と言ってくださった。 感謝の意を伝え、後はアンナリーナ様に任せて自席に戻る。
帰り際、閣下には館内の赤点の存在を伝えておくことは忘れないよ。
「マルディダ様、ありがとうございます。両殿下に本日の料理説明をしていただいたそうですね。お心遣い感謝申しあげます。」
「たいした事ではありませんよ。これでも義姉様方とは仲良くさせていただいております。やはり美味しい料理はどの様なものか知りたくなるものです。義姉様方も大変お喜びなさっていました。太郎様のお国の料理はどれもとても美味しいです。このような料理を毎日食べられるフェリシアが羨ましい限りです。ほとんど嫉妬状態です。」
「あ、すみません。フェリシアは学園生活ですので、余り食べてはいませんよ。」
「そうですよ、私だって太郎様の手料理は今日で3回目なんですから。」
「え、それでは誰がこのような料理を毎日食べているというのですか。」
「これは、宴会用の特別料理ですから、これを毎日食べている訳ではありませんよ。もっと簡略にしたものを、そうですね、できるだけ一日1食は僕が作るようにしてますが、食べているのは僕の使用人・・一応僕の性奴隷ですが・・・でしょうか。」
「え、性奴隷なんですか。性奴隷がこんな美味しいものを毎日ですか。許しがたいです。それに、性奴隷といっても皆貴族令嬢ではないですか、先ほど紹介を受けましたが、皆様学園でお目にかかった方ばかりで顔を知っていますよ。フェリシア以上に嫉妬します。手打ちにしたいくらいです。」
「ご勘弁を。彼女達の身分は今は奴隷扱いですけど、あくまでも僕の可愛い使用人ですから。」
「太郎様の奴隷になると、このような食事が毎日頂けるのですか。」
「まあ、全部ではありませんが日に一食くらいは僕が作る事になります。」
「私も奴隷でもいいかな・・・・。」 聞かなかったとにして、食事を続ける。
何か皆好きなこと言ってるよな。異世界でだらだら生活のつもりだったのにな。どこで歯車狂ったんだろう。
くそ、今日だって赤点がいなけりゃもう少し、普段飲めなかった高い酒を堪能するのに。
ふと、王族の方々の毒味担当がいないことに気付いたのですが、王子派一派の会合ということで、済ませたいと思います。




