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63 商業ギルド

「では行ってきます。」


 家を出て、メイド姿のイヴァンネ様と街を歩く。イヴァンネ様は門を出てからずっと自分の腕を取りぴったり寄り添って歩いている。


「イヴァンネ様、如何したんですか。」


「デートなんだから彼氏と腕を組んでいるのよ。何か問題があるの」


「僕は彼氏ではないですよ。」


「じゃあ訂正するわ。ご主人様の性奴隷がご主人様に甘えているだけですよ。」


「うーん、そうなんですけど、言葉通りには取れないな。」


「そんなことはどうでもいいの。デートなんだから楽しく行きましょうよ。それから、様付け禁止ね。貴方の性奴隷なんだから。」


「デートね・・・。ただの買い物なんだけどな。」


 二人で街をゆっくり歩いて行くが、やっぱり厳しい視線を感じる。そりゃ、毎日違う美人とべったりで歩いていればやっかみも受けるよね。


「手繋ぎくらいにしませんか。」


「そんなに直接肌に触れたいのですね。やっぱりご主人様エッチ。」


「この格好よりも目立たないからですよ。」


 平民街を歩き商店街を抜け問屋街へと向かう。屋台や商店街で買い物をした事はあるけど、大量購入をしたことがないので問屋街で小麦粉や豆類、あれば砂糖などを買うつもり。





 商店街を過ぎて問屋街に出た。荷馬車があちらこちらで大きな袋を降ろしたり乗せたりしている。


 さぁてと、何処にしようか。「マップ把握」で確認してみるとこの道沿いには穀物関係の10件の卸問屋があったので店の前を覗きながらふらふら歩く。自分は文字が読めない(単語が分からない)のでイヴァンネに見て貰っている。 営業品目を明示している店は少なく、マップ把握がなければ判断できなかったのは、まあ、一般客相手じゃなく取引のある人しか来ないのだから当然と言えば当然か。

 聞いてみる方が早いか。


 問屋街の中心に商業ギルドがあった筈なので、商業許可申請も兼ねて情報収集することにした。







 商業ギルドは直ぐに分かった。ドアを開けるとずらっと並んだカウンター。冒険者ギルドでは、左側が食堂だがここでは商談室であろう個室が並んでいる。イヴァンネにカウンターの表示を読んでもらい新規登録窓口に向かう。


「ようこそいらっしゃいました。今日はどの様なご用件ですか。」


「店を始めたいのですが、何か登録とか申請は必要ですか。それと、仕入れ先が分からないのでおすすめの卸問屋があれば紹介いただければと思って来ました。」


「はい、新規登録ですね。王都では商売をするには商業ギルド登録は必須ではありませんが、メリットもありますので登録をお勧めします。」


「登録と年会費はどの位なのですか。」


「商売の規模にも因りますが、本人のみで金貨1枚、使用人数により1人大銀貨1枚ですので、例えば使用人が10名ですと金貨2枚となります。 年会費は売り上げの1%または金貨5枚です。そのほか契約の仲介の場合は契約額の1%が利用料となります。」


「メリットはなんですか。」


「商業ギルドが持つ各国の情報の提供、取引相手の紹介、保証業務等が利用頂けます。」


「制限はなにかありますか。」


「価格の制限でしょうか。基本的な品物は標準価格が定められ上下25%内であることが決められているので守る必要があり、著しい廉売や高値での販売は禁止されてます。」


「そうすると自分の損益で価格を決める事ができないということですね。」


「国民の生活で必要となる基本的な物についてはそうなります。これは市民生活に不可欠なものを高騰させないということでもありますが、不作年は標準価格も上がりますので理不尽な価格となることはありません。」


「分かりました。検討してから登録するかどうか考えます。登録しなくても商売は始めていいんですね。」


「はい、営業は問題ありませんが、商業ギルドが支援できないことはご理解ください。」


「はい、分かりました。」


「それから、登録しない業者が登録業者と取引することは可能なのですか。」


「それは、相手が受けて問題なく取引できます。ただ、価格についてはギルド価格の制限がなくなるので同一価格であるとは限りません。」


「分かりました、ありがとうございました。登録するときはまたお邪魔いたします。では、失礼します。」



 商業ギルドを出て、イヴァンネと手を繋ぎながら歩く。


『登録はしないのですか、ご主人様』


『うん、ちょっとメリットが浮かばないんだよ。会費が高過ぎ。年間金貨5枚なんて払えないよ。大商人は売り上げ1%ではなく金貨5枚で楽々だろうけど、中小商人はかなり厳しいね。』


『そんなものですか。』


『売り上げの1%って純利益の10%以上だよ。それに、販売価格も自由に決められないってことは、付加価値を付けられないということだからね。僕にはメリットがあまり感じられない。たとえ、仕入れができなくても僕の場合仕入れはネットで買うことも出来るから特に問題はないしね。』


『では加入しないのですね。』


『そのつもり。商業ギルドという組織を維持するには、こういった会費の設定が必要なんだろうけど、僕には要らないかな。 未加入者だけど取引してくれるかどうかは一軒一軒当たらないとだめだね。』


 穀物商を一軒一軒、未加入者だけど取引してもらえるか聞いてみたが、あまりいい返事はもらえなかった。まあ、そうだよね、信用もないギルド未加入者なんて信用おけないものね。



 歩いていると、穀物商会の前で何か揉めている声が聞こえる。荷馬車の男と店の店員が揉めているようで、聞き耳を立ててみる。


「だからなんで、こっちの小麦粉も同じ値段じゃなきゃ引き取れないんだよ。全然できが違う高級品だよ。」


「生活必需品は、同一価格でないと引き取れないんです。何度言ったら分かってもらえるんですか。どこの店に行っても同じ価格でしか引き取らないですよ。」


「なんでだよ、タネから選んで折角いい麦に仕上げたのに、ほかのと同じかよ。」


「規則ですから。」


「あの~お取り込み中済みませんが、その粉見せてもらっていいですか。」


「なんだお前は。」


「小麦粉を探している者です。ギルド未加入なので問屋が売ってくれないので困っているところです。もし、言い値で買うと言ったら売ってもらえますか。」


「お、おぅ。 お前が良いならいいぞ。 おい、この店が引き取れないものを如何処分しようと俺の勝手でいいんだよな。」


「引き取れない物は如何処分しようと構いません。これからの取引にも影響しませんよ。」


「おう、ありがとうよ。 で、兄ちゃん、幾らでなら引き取る。」


「ちょっと、見てからでいいですか。」袋を開け鑑定する。


 小麦粉:薄力粉 上級品 製粉状態:優(均一)


「あ、いいですね。 標準品の5割増しでどうですか。」


「5割か、え、5割? いいのか。」


「どう見ても上質のいい粉ですよ。またひき直す必要も無いようだしゴミも虫もない一等品でしょ。本当なら倍と言われても仕方ないと思ってます。ただ、倍だと僕が出せないのでゴメンナサイしますが。」


「おもしれえな。よし、それでいいぞ。」


「どの位ありますか。」


「25kg袋で20袋だな。」


「すみません、いま、標準価格は幾らなんですか。」


「25kgで銀貨5枚だな。20袋で金貨1枚、5割増しで大銀貨5枚追加だ。」


「じゃ、これでお願いします。」バックパックから金貨と大銀貨を出し男に渡す。


「で、何処へ運ぶんだ。」


「あ、収納がありますので、ここで貰って行きます。」と言い、アイテムボックスに収納してゆく。


「お、おう、便利なもんだな。 で兄ちゃん他に買う物はないのかい。」


「そうですね、大麦、小豆、白インゲン、青エンドウなんかもあると嬉しいですね。季節の果物なんかもあるといいのですが。」


「大麦ならおれの処にもあるぞ。今度持って来てやる。

 豆か、豆なら俺が知ってるヤツが作っているぜ。拘って色々やってるが、標準価格でしか売れねえって嘆いていたからな、兄ちゃんがよければ紹介してやってもいいぞ。

 果物か、今の時期じゃたいしたものは無いぞ。時期は過ぎてるけどリンゴくらいかな。まあ、作っているやつがいるから聞いてみる。」


「え、いいんですか。ありがとうございます。ただ、大麦は籾のままがいいです。」


「おうよ、今度来る時に、籾の大麦を持って来てやる。ついでに豆作っているヤツを連れてきてやる。で、お前さん何処で店やってんだ。」


「いまはまだ準備中ですけど、2・3日中には開きます。場所は平民街の貴族街近くにある旧エステルグリーン伯爵邸の処ですよ。」


「貴族の屋敷? そんなところで始めるのか。」


「屋敷と言っても道沿いの別館ですから、お屋敷じゃないですよ。」


「そうか、じゃあ今度行ってみるよ。あ、自己紹介忘れたな、俺はアルヴァーて言うんだ。王都近くの農家だ。 またよろしく頼むわ。」


「僕は、太郎といいます。 店名は甘太郎です。よろしくお願いします。」


 アルヴァーさんに別れを告げ、イヴァンネと再び手を繋ぎならがら歩き出す。


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