51 おきりこみ
「今晩のご飯を作るけど、何にか食べたいものはある?」
「タロー様が作るものならなんでも美味しく頂きます。」
「おきりこみにでもしましょうか。」
「なんですかそれ。」
「この前の「つみっこ」の汁に、この前のすき焼きの時に最後に食べた麺を入れたものかな。野菜が一杯入っているから、身体にもいいし、お昼がしっかりだから少し軽めでいいと思うのだけど。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
「じゃあ、ちょっと材料になりそうなものを探しながら街を歩こうか。」
「はい」ベルタが嬉しそうに答える。
街中をゆっくり買い物しながら食材を仕入れて、ベルタと手を繋いで家に帰った。
戻ると、エイラさんとエレオノーラで業務内容の整理と当番表を作っていた。
「お帰りなさいませ。」
「メイド仕事の整理は終わった? 何人工くらいになりそう。」
「はい、本館だけでしたら3名で十分です。洗濯の仕事量と、個々の能力が分からないのでハッキリとは言えませんが、15名分の食事・家事で実質4名であたれば足りると思います。」
「そうか、じゃあ二人休日として、計11人で4人メイド、5人食物屋等のに使えるね。」
「はい、食物屋の業務量が分かりませんが、大丈夫だと思います。」
「じゃあ、四日位で全員揃うから、それから仕事を割り当てて行くことにしようかな。当座、明日3人、明後日3人、明明後日3人、4日目1人を連れてくる予定でいる。
けど、場合よっては明日全員連れてくるかもしれないので、どちらでも可能な様に屋敷の案内と教育が出来るように予定を組んで下さい。説明するなら全員一度にの方が楽かもね、明日向こうに行ってから考える。」
「夜伽は如何いたしましょう。」
「そうだね、添い寝だよね。僕はそんなに飢えてないよ。夫人が3人もいるしね、誰もいときだけ添い寝してもらう位だから。ローテーションは組んでもらって、夫人が在館のときはキャンセル扱いしてもらうのでよいかな。」
「分かりました。」
「お風呂は用意出来てる?」
「はい、言われた通りにしておきました。屋上に桶を作ってお湯を貯めておくなんて、すごい考えですね。お湯が終わるまで沸かす必要がないなんてすごいです。」
「暖めてくれるのはお陽様だから、僕が何かしている訳じゃ無い。陽が無い時は火魔法を使うけどね。
じゃ、夕飯作るね。ベルタが手伝ってくれるから、エイラさんとエレオノーラで仕事内容などを纏めておいて。」
「あ、私も一緒にできると覚えられるのですが。」
「あ、そうだね。じゃエレオノーラよろしく。レポートにしておいて。」
と、ベルタ、エイラさんと厨房に向かいエレオノーラは放置した。
ベルタとエイラさんに手伝ってもらい、おきりこみ作る。
「今回は昨日みたいに、鍋をみんなでつっつかないでお椀に移すからね。でも暖まるし、寒い夜にはいいと思うよ。」
自分では麺を打ったことは事がないんだよね。うどんは買って来ちゃうから、材料は一緒でも、普通の煮込みうどんになっちゃう。街中の家では自分でうどんを打たないから、”生うどん”で済ましちゃうんだよ、厩橋市内の製麺所のひもかわ美味しいし、スーパーに行けばグンマー産小麦の「おきりこみ用」とか「無塩うどん」とか普通に売っているから。
で、今晩のメニューはこんな感じ。
1 おきりこみ
2 ゆでジャガイモのほぐし新巻鮭和え
3 焼いただけ小タマネギ
4 鶏肉の塩焼き
ベルタとエイラさんに野菜等の処理を頼む。ベルタは伯爵家で警備担当だけじゃなくてメイドも兼ねているので手際よく処理をしている、お嬢様のエレオノーラとはやっぱり違う。サイドメニューも並行処理で指示したとおりにベルタとエイラさんが手慣れた手つきで処理してくれる。
で、自分はおきりこみの麺を作る。麺を打ったことないんだよ、昔見た料理マンガみたいに出来ればいいんだけど、まあ頑張ろう。基本、小麦粉(強力粉を使いたいから「さとのそら」を隠れてポチったよ。)に水を入れて練ってグルテンが伸びれば粘りがでて麺状になる筈。麺鉢みたいなものは無いから、ボウルで代用するがやっぱり力が入らない気がする。麺鉢は古の人の知恵なんだろうな。
体力2,000の力技で、なんとかまとまるまで出来たので、棒で伸ばして切る。これも初体験なんだよ、テレビでしか見たことないしね。子供の頃大ばあちゃんの親戚(だったんだろうなよく覚えていない)の家で、お昼のうどんをご馳走になったがそのときも、くるくる回す機械(あれ製麺機っていうのかな)で切っていたのを見ただけだから知らないんだよ。
グンマーの田舎って基本山だから、水田でできる米は貴重で麦や雑穀が多かったらしいし、平野部は冬天気がいいから二毛作ができて麦をつくれたから、小麦で作る麺なんかを良く食べていたらしい。全て伝聞だからな事実は知らない。
農作業の合間の昼食だから、朝、うどん作って茹で汁も作っておいて、お昼に食べるが普通だったらしい。伝聞だけど。
テレビの記憶を頼りに、短い棒で少しずつ伸ばす。(テレビで見ていたような、長くて職人だぜ!っていう感じの棒は厨房に無かったんだよ。あ、ポチればよかったのか・・。)
麺の厚さは同じくらいにしたつもりだけどやっぱり違う。幅も・・・いいんだよ初めてなんだから。やっぱり麺打ち棒ポチればよかっただけか?
鍋に昆布を入れて火が通りにくい野菜から入れて煮てゆく。煮すぎると崩れちゃうから程々にして鰹節粉を入れる。我が家ではおひたしには鰹節を掛けるが、出汁は鰹節粉を使っていた。母曰く「鰹の身も入るからいいの」と言っていたが単にグラム単価が安いからじゃないかと思っている。
汁に鰹節の粉がはいって口当たりはよくないんだよ、美味しいけど。「お茶パックにでも入れて、鰹節カスは要らないから」って言っても頑なにしてくれなかったな。 あ、なんか過去に浸っているぞ。
醤油などで味を決めて、くっつかない様におきりこみを投入。少しかき混ぜて待つ。混ぜすぎると麺が切れる。 醤油味より味噌のほうがよかったかな。
平行しながら、ジャガイモを茹で、焼いた新巻鮭と和えてイモサラ風にする。鶏肉は均一になるように開き、皮目に切れ目を入れ塩を振ってから、オーブンで子タマネギを皮付きの一緒にそのまま焼く。
「つみっこみたいですね。」とベルタがのぞき込む。
「そうだね。材料は同じだし、小麦を練っただけのものと、麺の違いかな。」
とろっとして来たので、「できあがり」と言い、鍋を二つに分ける。イモサラなども二つに分けて盛り合わせる。
「なんで二つに分けるのですか?」とエイラさんが聞いて来たので、「私室でベルタと二人だけで食べます。エイラさんとエレオノーラは食堂で食べてね。」と答える。
「私は一緒じゃだめなんですか。」
「明日から性奴隷も増えるし、主人と使用人の区分を着けようと思う。基本的には皆で食堂で食べるけど、今日はベルタが僕を占有する初めての日だからね。二人だけにするよ。 それから今日はリビングを使っていていいけど、使用人用のリビングは4階にするからね。」
「あ、分かりました。第四夫人になればそちらに入れるのですね・・・。」
エイラさん、何か言っているけど聞かない振りをしよう。
「では、そちらの方はエイラさんよろしくお願いします。エレオノーラにはレポートは明日でいいからと言っておいてください。」
「え、太郎様から直接の方が宜しいのでは。」
「ここからはベルタと二人だけの世界に入るんですよ。エレオノーラには「ベルタと寝るから添い寝は不要、邪魔はしないように。」と言っておいてください。
お風呂に入ってからゆっくり食べます。このあと特にお願いすることはないし、僕の方の後片付けは明日でいいので、夕食が終わって片付けたら自由にしていいよ。エレオノーラは4階の部屋を使ってもらって。
それから、明日の朝食はお願いしていいかな。厨房にあるもの適当に使ってエレオノーラと作ってね。 ベルタ、行くよ。」とアイテムボックスに鍋をしまう。
「はい、タロー様」ベルタは元気に返事をすると直ぐに、隣に来て腕を絡めてきたので、「じゃ」とエイラさんに告げ、腕を解き、お姫様だっこする。あっけにとられているエイラさんの顔は見ないようにして私室に向かった。
ベルタの部屋に連れて行き、「お風呂に行くから用意して」と伝え降ろして自分も部屋に戻って着替えを持ちベルタと一緒に浴室に降りる。
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何人工:人工は土木関係やIT関連の仕事量を計算する場合の単位?です。この仕事何人で何日必要?みたいな感じで、人工計算とか言います。仕事量が何人で何日という意味です。
おっきりこみはグンマーの郷土料理です。どんなものかは県が群馬県おっきりこみプロジェクトとしてHPに載ってますから参考にしてくださいな。
ちなみに、桐生では幅広(笑)のひもかわが有名ですが、グンマー全体ではそんなに幅広はありませんよ、桐生特産です。




