第三十四話 アーツバスター襲撃
アジトに着くと、皆が皆食堂で談笑しながら食事を食べていた。
ルドベキアに受取書を渡し完了の報告をする。
「ご苦労さん、明日も頑張ってくれや」
とだけ言われるのであった。
その後、食堂でルドベキアは皆の前で俺の事を紹介してくれた。
だわさおばちゃんの食事を食べながら、周りに囲まれてつつ食事を楽しむ。
ふと目線が、ディアルスを視界に捉える。
ディアルスは一人ポツンと食事をしていた。
「あの……俺、ディアルスさんの所へいってきます。
お兄さん方、お姉さん方これからもよろしくお願いします」
「話すってあいつ何も話さないぜ?」
「そうよ!私といい事しましょ〜」
さりげなくネーヴェは、諦めずに俺を誘惑してくる………
その誘惑跳ね除けながら、
「いやいや……それでも、ディアルスは俺のパトナーですので…」
といい、ディアルスの側へと行く事にした。
「ディアルスさん、隣いいですか?」
ディアルスは、俺の顔を見上げ頷く。
頷くのを確認した俺は、ディアルスの隣に座りながら周りの人たちを見渡す。
「ここは、いつもこんな感じに騒がしいのですか?」
相変わらず、ディアルスは言葉にはしないが頷きながら返事をしてくれる。
“ディアルスは、話しをする事が出来ないのか?
それとも話したくないから話さないのか……?”
全くもってわからなかった。
ちなみに一緒に行動していても、俺には何を考えているのか、次にどんな行動をするのか予測は立てられなかった……
でも、俺が戦闘中にディアルスの合図を見逃さなければ、きっとうまく連携を取れるはず……
とそんな考えていると、
「ルーク坊や! 私の作ったご飯は美味しいだわさ?」
だわさおばちゃんは、腰に派手派手のエプロンを腰に巻き右手にはお玉を持ちながら、俺に話しかけてきた。
「はっはい、とても美味しいです」
「それは良かっただわさ!
いっぱい食べていくといいだわさっ!!」
言いたい事だけ言ってだわさおばちゃんは、また厨房の方へと戻って行くのであった。
食事も終わり皆が皆、居住空間へと戻り個々の自由時間を楽しみ始めていた。
なぜかはわからないが各部屋のドアは、開けられオープンになっていた。
腕立て伏せをしている者、装備の手入れをしている者、風呂に入っている者……
流石に風呂場はオープンにはなっていなかったけど……
そんな中ディアルスの姿はなく、さっさとどこに行ってしまったらしい。
後を着ける事は出来なかった俺は、談話室で数人の女の人たちと話をしていた。
「そう言えば、ルーク坊やはディアルスと組んでいるの?」
「はい、ルドベキアさんにそう言われました」
「そうなんだ〜
いい男なのに無口なのがネックなのよね〜あいつぅ〜」
「アレなんて、すっごいのよ〜」
「ほんとっ!!」
「来る者こだわらずって感じよ!!」
と生々しいしい話しをしている
子供の前で、そんな話しはやめて欲しかった……
想像しながら、つい顔が真っ赤になってしまう……
「あっルーク坊やの顔真っ赤よ?!」
「そっそんな事ないですよ!!」
「うふふふ、今晩私の部屋に来る?」
また懲りずにネーヴェは俺を誘って来る。
「おっお断りします!!」
そう言いながら俺は、立ち上がり、
「へっ部屋に帰ってもう寝ます!!」
「いつでも待っているわよ〜」
“うぅ……セルビアさんに似た姿や声で、そんな事を言わないで欲しい………”
そんな思いをしながら俺は、談話室から出て行き部屋へと戻る事にした。
俺が今までいた部屋は、ルドベキアの部屋の奥にある。
その為、一度ルドベキアの部屋を通らないと行けないのであった。
ルドベキアの部屋の前まで行き、ドアノブに手をかけ開けようとした時、部屋からなにやら話し声が聞こえてきた。
思わずドアに耳をあて、その話に聞き耳を立ててしまう……
「それでどんな感じだ?」
「あぁ、勘はいい方だな………しかし、実践不足は否めないな……」
「そうか、なら明日から実践を想定した依頼を回す事にしよう」
「あぁ」
「後、正体は明かさないのか?」
“何処かで聞いた声だな………”
「自立して頑張ろうとしているんだ、暫く見守るさ」
「そうか、わかった」
“うーーーん……誰だっけ………”
“ん〜まだ部屋に入れそうにないし、どうするかな……”
夜になるとルドベキアの部屋以外、全部に鍵がかかり入る事は出来なくなる。
だからと言って談話室にいけば、またお姉さんたちに絡まれる……
八方塞がりになり、思い切ってドアを叩いて見た。
コンコン……
少し待てとルドベキアの声が聞こえ、五分後ルドベキア自らドアを開けてくれた。
ルドベキアは俺を部屋に招き入れてくれたが、先程まで話ししていた人間がいたはずなのだが、何故かそこにはいなかった……
盗み聞きしていたのが、バレるのも嫌だったので聞かない事にしたけど、あの声は確かに何処かで聞いた声だった………
「それで、どうした?」
「俺の部屋はルドベキアさんの奥の部屋でいいんですよね?」
「あぁ……あの部屋はもう使えなくした」
「えっ?」
「あの部屋は物置変わりにしていたのを、お前が使うという事で荷物をずらして使わせていただけだ
もう元気になったんだ、元に戻させてもらった」
「じゃ俺は、どこにいけば?」
「ネーヴェの誘いを受けたらいいじゃないか?大歓迎だと思うぞ?」
ルドベキアはニヤニヤと笑いながらそう言ってきた
「………」
「まぁそれは冗談として、まぁその背中もある事だし………どうするかな……」
“って考えていなかったのかい……!!”
と突っ込みを入れたくなってしまった。
ルドベキアはうーーんと暫く考え込み、机の中から鍵を取り出し俺に渡して来る。
「この鍵は?」
「客室だ、ペリアが来た時とかに使っていて普段は使う事はないから、自由に使っていいぞ。
但し部屋にいない時以外、鍵はかけるなよ」
「なんでですか?」
「何かあった時すぐに対処出来ないだろ?」
「何か起こるのですか?」
「さぁ〜それはわからんが用心に越した事はないだろ?」
「えぇ……まぁ……」
鍵を受け取った俺は客室へと移動し眠る事にした。
「あぁ疲れた……」
“それにしても……ここの人たちは、変わっている人が多すぎ………”
そんな一日を振り返りながらどっと疲れた身体を癒すかの様に俺は眠りにつくのであった。
ルドベキアは夜遅くまで、雑務をこなしている。
当然秘書もいるのだが、ルドベキアは夕食後からは秘書にも自由時間を与えていた。
ルドベキアの仕事が終わるまで、秘書に手伝ってもらう事も可能なのだが、そうなれば秘書の自由時間はなくなり、拘束時間となってしまい、秘書に対して高い賃金を払わなくてはならなかったからである。
ルドベキアはここにいる者たち全て自由で平等な、当たり前の生活を送って欲しかった。
だから、お金も以外と赤字を繰り返したり、たまに黒字になったりとそんな経営を繰り返していた。
それでも生活が破綻しなかったのは、やはり『だわさおばちゃん』が上手に食費を計算してくれたおかけだろう……とルドベキアは思っている……
ここに住む者の大半は奴隷と、元アーツハンターたちで構成されている。
何かのミスを犯し行き場を失くしたアーツハンターたちは、次第に犯罪を犯しアーツハンターを恨みながらアーツバスターへと変貌していく。
それを未然にルドベキアは『プルキブウム』に来る事で防いでいた。
更に奴隷となっている者たちは、人間を人間と見なされず迫害を受け続けていたのである。
そんな奴隷たちをルドベキアは、雇い主から買取『プルキブウム』に衣食住を約束し働かせる事や、ごく一部ではあるが迫害のない家へと安全を保証された上で送り出し、逃亡奴隷にならないように配慮していた。
逃亡奴隷でなければ、背中の烙印が見られたとしても、然程迫害を受ける事はなかった。
今回ディアルスとルークが、助け出した奴隷もそうだ。
あの青年は一度貴族の元から逃げ出しルドベキアに助けを求めて来た。
ルドベキアはそれを受け入れた上で貴族へと連絡をとり、買取交渉を行ったのである。
交渉は上手く行ったが、やはり貴族にも面子と言うものがあり逃亡奴隷を出したとなれば、貴族間同士でそれなりの迫害を受けてしまい、貴族はそれだけは避けたかった。
そこで、ルドベキアは貴族の男に公開処刑を行い、その場で誰にも見つからずに救出をすると話し、こうして闇取引が成立したのであった。
闇取引が成立した背景には、これはひとえにルドベキアが『水の街ヴァル』で長年培って来た功績とも言える。
しかし、ルークの場合は違っていた。
ルークの雇い主は『メシュガゴロス』にいるアーツバスターのドランゴ・サーガである。
故に、ルークが『水の街ヴァル』に居ると言う事時点で背中の烙印が見られれば、逃亡奴隷になってしまうのであった。
それは、ルークにとってやはり死を意味していた……
ルークが一生ここで住みたい、ルドベキアの元にいるともし決断したのなら、その時ルドベキアはドランゴと闇取引をしなければならないのである……
ルークはいつかロールライトに帰らなければならない………
その事をわかっていたルドベキアは、敢えてその事に触れないでいたのである。
だから、あの時ルークに聞かれ真実を話す事はしなかったのであった。
雑務を終えたルドベキアは、居住空間へと歩き出す……
皆が寝静まった頃、ルドベキアは毎日欠かさず皆の見回りを行っている。
ドアは常に開かれていた為、轟音のいびきをしている者、腹を出して寝ている者がいれば布団を掛け直したり、いやらしい事をしている者がいれば見て見ぬふりをし次の日の朝にちゃかしたりし、不安を抱え寝付けない者がいれば相談に乗ったりと、皆の体調に気を使っているのである。
「ふむ、こんな所かな…………」
自分の寝室へと歩き出し、ルドベキアの一日は終わるのであった。
◆◇◆◇◆
次の日の朝、俺はディアルスと共にルドベキアの部屋へと赴き、今日の依頼内容を受け取ったのである。
依頼はどれも戦闘を要する物が大半を占めていた。
「まぁルークはよわっちいが、ディアルスもいるし大丈夫だろ…………」
“一言余計だよっ!”
と思ってしまった。
早速依頼をこなし要所要所で【黒のアーツ】を発動したり、傷つく者がいれば【白のアーツ】を発動し、あっという間に一日は終わってしまった。
そんな感じでルドベキアから出される依頼をディアルスとこなしながら、いつお金は返し切るのだろうかと思いながらもあっという間に、三ヶ月すぎていく………
いつしかネーヴェの姿を見る事はなくなった。
ネーヴェに会えば、その色気で俺を誘惑するから会わない方が、俺的にはすごく嬉しかった。
そんなある日俺は、いつも通りディアルスと依頼をこなしに、アジトを出ようとした時だった。
「アーツバスターだっ!!!!」
その声に俺は足を止め、振り返るのであった。
「街から五キロ程離れた場所にアーツバスターを発見!」
と周りに聞こえるぐらいの大きな声で叫び、周りの皆を驚かせその男はアジトの中へと入って行った。
某然と立ち尽くしていた俺に、ディアルスは依頼に行こうと合図を送って来る。
「ディアルスさん、ちょっと待って下さい!
アーツバスターが来たんですよ?
依頼どころではないですよ」
その問いかけにディアルスは、首を横に降り拒否してきた。
「依頼が優先と……?」
ディアルスは頷いてくる。
「行けません!」
激しく拒否の態度を示した俺を、ディアルスは首根っこを掴みズルズルと無理矢理出発しようとしたのである。
そんな時、ルドベキアは俺たちの前に現れたのであった。
アイブロウや他の皆は、思っている事を言いながら、ルドベキアに詰め寄って来る。
「旦那!アーツバスターが来たって本当か!?」
「これからどうなるんだ!?」
「戦うのか!!」
そんな話をルドベキアは聞きながら、少しイライラ君に一蹴し始めた。
「えぇーい!うるさいわい!!
これから、どうするか話し合って来る!
お前たちは待機室で大人しく待っていろ!!」
それだけ言いルドベキアは、アジトを後にしたのであった。
皆は落ち着かなさそうに、アジトの中へと入って行く。
ディアルスもやれやれと言う顔をしていたが、俺も依頼をそっちのけで中へと入って行きルドベキアが帰ってくるのを待つ事にしたのである。
『水の街ヴァル』の重役達が集まる会議所に、ルドベキアは赴いていた。
会議所にはルドベキアの他に、アーツハンター支部長や貴族街代表者、商人街代表者、繁華街代表者などが参加していた。
そんな中、先刻報告されたアーツバスターの襲撃に関して今後どうするか?
その事について、話し合いが行わられていた。
まず何故、アーツバスターが『水の街ヴァル』を目指して、進軍を開始してきたのか……
この件については、アーツハンター支部長から説明があった。
『アーツハンター達は先に我々に先制布告をしてきた、よって我々はアーツハンターに反撃を開始する。
アーツバスター総司令官ドランゴ・サーガ』
この文章は、アーツハンター協会から各支部へと一週間程前に配られていた物だ。
しかし、支部長はこの手紙の存在を知らなかった。
人手不足の上、更に過密な日頃の忙しさに気を取られていた支部の受付は、この手紙を確かに受け取ってはいた。
だが、いつもの事業報告書の催促と勘違いしそのまま放置してしまっていたのだ。
その為この手紙を、支部長は知らされる事はなかったのである。
支部長がこの手紙を見たのは、アーツバスターが目前に迫っていると報告を受けた後に、慌てて受付に探しださせた物なのであった。
そして協会から出されたもう一通の書類には、『各国の判断で、守り抜き撃破せよ』と書かれていたのである。
どうやら本部は増援を、送る気は全くないらしい。
現在、『水の街ヴァル』にいるアーツハンターの殆どの者たちは、他の任務に着いていた。
その為、現在アーツハンター支部には新人がほとんどで、とても戦力になるはずもなく、実践経験が乏しい新人たちを最前線に送り出すという事は、厳しく無謀とも思わられる選択であった。
そこで、支部長は苦渋の策として、会議の中でルドベキアの率いる『プルキブウム』が最前線に行き、対応する事を願い出たのである。
そして、アーツハンターである新人たちは後方支援を行う、という事で結論に至ったのであった。
貴族たちは万が一に備え、いつでも逃げ出せる準備を行う。
回復のスペシャリストであるペリアを中心に、医療班は入り口付近に仮設テントを設置。
最前線はルドベキアが率いる『プルキブウム』
アーツハンターたちは、『プルキブウム』が倒し損ねたアーツバスターたちを倒す事、また負傷者を仮説テントまで避難誘導。
こんな感じで会議は、終わったのである。
会議が終わるとルドベキアは、早足でアジトへと戻ろうとした。
そんな時、ペリアに呼び止められたのであった。
「ねぇルドベキア………」
「どうした?ペリア?」
「…ルーク坊やも連れて行く気?」
「あぁ……あいつも、貴重な戦力だからな」
「連れて行かない方がいいわ……」
「ふむ……その根拠は?」
「勘!」
そう即答したペリアは滅多に見られない程、真剣な眼差しをしていた。
ルドベキアはそれを受け入れ、最前線には出さない事をを約束し早足でアジトへと、戻ったのである。
ペリアも仮設テントへと赴き準備を始める。
ルドベキアがアジトを出てから一時間ほど立った頃だろうか……
待ちくたびれた『プルキブウム』の皆は、次第に騒ぎ始めた。
「あぁぁぁ!!もう待ってられん!」
「あぁ、そうだな……
この間にも、 あいつらはここに向かってきているんだ」
「準備を始めよう!」
「まて!ルドベキアの旦那が戻ってくるまで待とう!」
待ちくたびれ口論をし始める中、アイブロウだけは冷静に判断をしていた。
そんな中、ルドベキアは待機室に姿を現したのである。
「旦那!」
ルドベキアは、周りを見渡しながら話しはじめた。
「アーツバスターたちは、間も無く『水の街ヴァル』に到着し侵略、征服するために攻撃をしかけて来るだろう……
俺たち【プルキブウム】は水際で奴らと応戦する!!!」
「ルドベキアの旦那、よーするに!?」
「最前線だ!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「やつらを絶対この街に入れるなっ!!」
「おぉぉぉっ!!」
歓喜喝采の元、血の気の多い若者達はさっそうと出撃準備を始める。
その慌ただしい中、俺も客室へと戻り準備を始める。
準備をしている俺に、ルドベキアは客室へと入ってきた。
「おい……ルーク」
「はい?」
「お前も行く気か?」
「勿論です!俺はアーツバスターを倒す為だけに、今まで生きてきたんですから!!」
準備をしながら、俺はルドベキアの質問に答える。
ルドベキアは、ちょっと来いといい半ば無理矢理食堂へと連れ出していくのである。
食堂には、だわさおばちゃんといつも美味しい料理を作ってくれる、賄いの女の人たちが五・六人、そして負傷者が二・三人待機していた。
「はっきり言おう………俺は、お前は最前線に連れていく気はない!」
「えっ!!」
その言葉に俺はルドベキアに駆け寄っていくのである。
「何故ですか!!」
「アーツバスターの総司令官はドランゴ・サーガだ」
「!!!!」
「あいつに発見されると、どうなるか……そんな事言わなくてもわかるだろ?」
「でっでも……アーツバスターが来るんですよ!
俺にも行かせて下さい」
「これは、『水の街ヴァル』の問題だ! 関係ないお前は引っ込んでいろ!」
「嫌です………」
「どうしてもか!?」
「はい!!」
「そうか、わかった……」
そういうとルドベキアは俺の背中を蹴り飛ばし、壁に衝突させる。
「いっいて!」
その隙にルドベキアは俺の頭を右手で壁に押さえつけながら、俺の左腕を後ろに回し紐で縛りあげ首の方に回し、首に回した紐を更に右腕まで伸ばし後ろで縛りつけてきたのである。
「ちょ!ルドベキアさん!!」
「食堂には非戦闘員が待機している。
お前もここで大人しくしていろ、全てが終わったら紐は解いてやる」
そういいルドベキアは、だわさおばちゃんに絶対紐は解くなと念を押し、俺を食堂に置いたままディアルス、アイブロウそして他の皆を連れて、アジトを後にしたのであった。




