第二十一話 急展開……押し付けられた烙印
ロールライトを出発してから、一日目……
「アルディスさん」
「ん?」
「アーツハンター訓練施設ってどんな所ですか?」
そう質問した俺に、アルディスは本を見ながら丁寧に読み上げてくれた。
アーツハンター訓練施設、通称『ラグナロク』
ヴィンランド領の中心にある、ガーゼベルトはアーツハンター協会本部がある。
そもそもアーツハンターになる為には、年齢不問で基礎知識、体力があり協会本部の幹部に認められる事が出来れば、誰にでもなれる事ができた。
しかしその機会は一年に一回のみしか行っておらず、高額な費用がかかる『ラグナロク』に通い十二歳で入学、十八歳で卒業と同時に認めてもらうか、『ラグナロク』に入らず独自の努力で幹部に認めさせるかは個人の自由であった。
『ラグナロク』に在籍出来るのは、十二歳から二十歳までで、二十歳になっても卒業を認められない場合は、『ラグナロク』から除名処分とされる。
そして学年というものは存在しなく、アーツハンターになるか『ラグナロク』を辞めるまで同じ、同じ教官と共に過ごす事になる。
アルディスは読んでいた本を閉じながら聞いてきた。
「という事だ。わかったか?」
「因みに『ラグナロク』は十二歳からしか入学試験を受付はしていない……
ルークは十歳だから特例だろうな」
「なんか、ズルしているみたいです……」
「何言っているんだ。
セルビアは『ラグナロク』に通わず十二歳でアーツハンターになった、最年少記録保持者だぞ」
「なんと!?」
「まぁ……頑張れ……」
「はい!」
◆◇◆◇◆
旅は順調だった。
ガーゼベルトまで後2日程でつく距離を馬車は山道の街道を走っていた。
ガクンッ!!
突然馬車が斜めに傾き、止まってしまった。
「どうした?」
アルディスは、ロールライトで雇った馬車の持ち主である御者に尋ねた。
「アルディス様、申し訳ない。
車輪が溝に挟まったようで………動きません」
「わかった、ルーク持ち上げるのを手伝え」
「はい」
アルディスと俺は、馬車から降りて、溝に挟まった車輪を力任せに持ち上げ、溝から外そうとした時だった。
ひひーーーんっ!
急に馬が暴れ出し外すどころではなくなった。
一旦車輪を降ろしアルディスは俺から離れて、御者の所へと歩み寄って行った。
「どうした!?」
と確認すると、馬は泡を吹きながら苦しみだし、そしてお尻には一本の弓矢が突き刺さっていた。
そして馬のすぐ側ではうつ伏せに倒れていた御者がおり、アルディスは仰向けにして確認すると、心臓に弓矢が突き刺さり、目は見開いたまま即死していた。
「くっくそっ……」
アルディスは御者の目に手を置き、目を閉じさせる。
そして御者をそっとその場に置きながら周辺に気を配る……
しかし、特に変わった気配をアルディスは感じる事が出来なかった。
「ん〜周辺に怪しい気配は感じられないんだが、御者と馬が殺られた。
ルークここからは先は歩こう」
アルディスは俺の方に戻りながら、そう話ししていたが俺の姿を見て事の真相がわかったのであった。
「ルーク………?」
「ごっごめんなさい………」
俺はアルディスが側を離れた後、その場で待機していた。
車輪を見つめながら、
“さてどうしょうかな?”
等と呑気に考えていたのである。
ガサッ
と音がして振り向いた時には、もう遅かった……
体格のいい男は、ニヤニヤと笑いながら俺の方に剣を向けている。
その男に目を取られている隙に、俺の背後からもう一人の今度は女が現れあっという間に縛られ、身動き取されてしまったのだ。
「お前達……何者だ?」
アルディスは【疾風のアーツ】を構えながら、警戒している。
「山賊……動くとこの小僧は殺す、この意味わかるよな?アーツハンターさん?」
「くっ……」
アルディスは山賊を睨んでいたが、両手を上げ、
「わかったよ、好きにしろ」
アルディスは山賊に手枷をさせられ、俺は縛られたまま山賊のアジトへと連れていかれるのであった。
「隙を見て脱出する……」
アルディスは小声で俺にそう言い、俺も黙って頷きその機会を待つ事にした。
大昔の戦争中に使われたと思われる砦は、戦争終結後使われる事なく野ざらしのまま放置され、いつしか山賊達のアジトへと変わってしまったらしい。
前方は山道、その周りは草木がお生い茂る程の深い森、そして後方は二百mぐらいある絶壁でその周りには広大な海が広がっていた。
戦争に使われたという事もあり、中は以外と広く大きな広間、食堂、会議室そして鉄格子の檻等があり、山賊達は動き回っている者や、談笑している者、剣や鎧の手入れをしている者、なにやら打ち合わせをしている者等様々いた。
そして、鉄格子から手を出しながら助けを呼ぶ者、その場で震えながらしゃがみ込む者もいた。
広場の中央では、大きな剣を持った山賊と俺たちの前に連れて来られたのだろうか?アーツハンターらしき人達が5人手枷をされたまま、立っていた。
「おいっあれは何をする気だ?」
アルディスは前を歩いている男に聞いたのであった。
「決まっているだろ、処刑さ」
「何!」
「だってよ、お前達が持っている【アーツ】は、殺さないと回収できないだろ?」
そんな話を男とアルディスがしている中、俺の目の前で大きな剣を持った男は横に一線剣を振るう。
立っていた五人のアーツハンターの首が次々と飛んでいき、血が飛び出していた。
中にはピクピク手を動かしている人もいた……
「おい、ルーク大丈夫か!?顔真っ青だぞ!」
アルディスにそう聞かれた時、俺は冷や汗みたいなのをかいていたらしい……
「あらあら、坊やには刺激が強すぎたかしら?」
動かなくなった、アーツハンター達から【アーツ】を回収し大喜びしながら山賊達は用済みになったアーツハンター達を、ゴミを捨てるかのように窓の外へと放り投げて行った。
「この下は崖ですぐ下は海だから、処分に困らんなっ!」
がはははははっ
等という話が聞こえながら、俺たちは頭と対面する事となったのである。
「頭〜オルルベイトの頭〜
若い男と子供連れて来たぞ〜一人はアーツハンターだ」
「ほぉ〜」
山賊の頭と名乗るオルルベイトは、俺たちの顔をジロジロと見てくる。
「ふむ、なかなかいい身体つきをしているな。
おいっ!確か、明日にはスピュキュレが来る予定だよな」
「へいっ」
「子供は高く売れるが、アーツハンターは高く売れん。
子供を引き渡した後にでも殺して、アーツだけ回収しとけ」
「りょーかいしゃしたぁ〜」
山賊に連れて行かれそうな時、アルディスは足を止め立ち止まる。
「まっまて……」
「あぁん?」
「この子供は助けてくれ。
俺はどうなってもいいから……」
「アルディスさん!」
見上げるアルディスは真剣な眼差してオルルベイトの方を見ていたが、ふっと笑いながら。
「ふっ捕まった人間は大抵同じ事を言う……
俺たちがそんな事聞くとでも思うか?」
「くっ……」
アルディスは悔しそうに俺の方を見つめる。
「大人しく死んでくれや……」
オルルベイトの言葉が俺の耳に最後まで残っていた……
オルルベイトの部屋から無理矢理出された俺たちは、アルディスと離され俺は牢屋の前へと連れて行かれた。
そして父の剣や自分の『成長の剣』、そしてセルビアに買ってもらった服まで脱がされ、変わりにボロボロの服を着せられたのちに牢屋に閉じ込められた。
父の剣を手に取りながら山賊は、
「ほぉ中々いい剣を持っているな……」
「返せ!その剣は父さんの!!大切な剣なんだ!」
牢屋に閉じ込められ、鉄格子を掴みながら叫ぶ。
「小僧……お前の人生に運がなかったと思うんだな……」
広場辺りが急に騒がしくなりそちら方へ目を向けると、アルディスが広場の中央で手枷をされたまま立っていた。
そして、先程の大きな剣を持った男が、アルディスの前に現れたのである。
「ちょ!まさか!!」
鉄格子を掴みながら俺はアルディスの名を呼ぶのだが、山賊達は歓喜に溢れアルディスに対して殺せコールが、響き渡り俺の声はかき消されていた為、届くことはなかった。
その中でオルルベイトが広間中央に現れ、辺りは静まり返る。
アルディスを見ながら、オルルベイトは、
「あんたにチャンスをやるよ。
こいつの攻撃を全て避ける事が出来たら、処刑は明日までに延ばしてやる」
「………反撃はしていいのか?」
「!」
オルルベイトはアルディスの以外な質問に一瞬戸惑っていた。
「出来る物ならどうぞ」
オルルベイトが後ろに下がり椅子に座り広場中央を目を向けると、大きな剣を持った男はアルディス目掛けて、横に一線剣を振るう。
それをアルディスは下にしゃがみ込むことで回避し、手枷をされたまま【疾風のアーツ】を構える。
「あれ?」
しかしなぜか発動はしなかった…
男は剣を今度は縦に振り下ろして来た。
その攻撃もアルディス後ろにバク転しながら、回避したのである。
「??」
男の攻撃を幾度も避けながら、発動を試みるがアーツが発動することはなかった。
「アーツハンターさんよ、なぜ発動しないか教えてやろうか?」
剣がアルディスの目の前スレスレに振り下ろされ、剣先が地面に食い込んでいる。
「あぁ是非、願いたいね!」
アルディスは食い込んでいる隙に距離を取り、次の攻撃に備えていた。
「その手枷には、アーツを発動させないのが刻み込まれている」
「ほぉ」
今度はアルディスの鼻先を剣先が通る。
「ふぅ」
と一呼吸置くアルディスにオルルベイトは話を続けていた。
「その男は、【大剣のアーツ】を使う剣豪だ、なんでも良く斬り飛ばしてくれる。
手でも首でもな……」
「そうか……」
スパーーーン!
おおおぉという歓声が響き渡る。
「アルディスさん!!」
山賊達が俺の目の前を防ぎ、よく見えない。
その直後に剣を持った男が壁の方へと、吹っ飛ばされ激突し気絶していた。
剣を持った男が剣を振り下ろした際、アルディスは手枷だけを斬られるように前へとだし、当たる瞬間微調整をしながら狙い通りに手枷を斬らせたのである。
アルディスは【疾風のアーツ】を構える。
「反撃開始だな」
ドスン………
しかしアルディスの右肩に一本の弓矢が突き刺さった。
「!!」
その弓矢を引き抜きながら、アルディスは膝をつき倒れこんでしまい【疾風のアーツ】の発動は停止した。
オルルベイトは弓を持ちながらほくそ笑んでいた。
「アーツハンターさん、油断大敵だ」
「きっ貴様………」
「その弓矢には神経毒が塗られている。
死にはしないが二、三日はまともに動く事は出来ないぜ」
そして、アルディスその場に倒れこんでしまうのであった。
「くっくそ………」
倒れこむアルディスをオルルベイトは見下ろし。
「最後のお別れの時間ぐらいはくれてやるよ。ゆっくりと楽しみな」
オルルベイトは念の為、再度アルディスに手枷をはめる事を命じ、牢屋へと連れて来られたのである。
「アルディスさん!!」
駆け寄る俺にアルディスは、ぐったりとしている。
「くっすまんな………これではセルビアに怒られてしまう………
なんとかルークだけでも……助けるよ……」
「一緒に逃げましょ……僕がセルビアさんに怒られてしまいます……」
「ふっそうだな……」
そのままアルディスは気を失ってしまうのであった。
牢屋の中から辺りを見渡す。
どこか逃げ出せる場所はないか……
しかし、逃げ出せそうなのは、下は崖で海が広がっている窓しかなかった。
後は門兵を無理矢理倒して脱出?
無理だ、武器も剣も取り上げられている。
俺の武器と服どうなるんだろ………
「なに考えているの?」
「えっ?」
牢屋の奥の方から色々な事を考えていた俺に話しかける声がした。
俺より少し年上の少年が座り込みながら、見つめていた、
「なんとか抜け出したいなと思って……」
「無駄だよ……隣に倒れている人、君の連れだよね?」
「うん」
「明日には殺されるよ……」
「………」
「僕は、昨日ここに連れてこられたんだ……
一緒について来てくれた人や、その他にも新たに連れて来られたアーツハンターたちが五人ぐらい、いたけど、皆目の前で首を落とされ殺されたんだ……
僕たち子供が逃げ出さないように……恐怖を植え付けているんだよ……」
「……来た時にみたよ…」
「だから、その人もきっと……」
「なんとかするよ……」
まだ目が覚めないアルディスを見ながら、俺は考えた……
しかしなにも思いつかなかった。
そんな自分が悲しかった。
“セルビアさん助けて!!アルディスさんを守って!”
届かない思いだとはわかってはいたけど、なにも出来ない俺は祈る事しか出来なかった………
そして一睡も出来ぬまま、夜は明けてしまった……
オルルベイトと一人の男が牢屋にやって来て、俺の目の前で止まる。
「スピュキュレどうだ?」
「兄貴ぃ〜こいつは、上玉ですな」
「そうか、では早速儀式を始めるか」
オルルベイトは部下に命じ俺を地下牢から連れ出し、上着を脱がせられた。
そのまま膝立ちにさせられて、両腕は後ろに引っ張られる。
「やっ……やめろ………」
動けないアルディスが必死に声を振り絞り、声をだしていた。
スピュキュレが丸い金属板で熱し、プシュップシュッといいながら俺の目の前に立ちながら話しかけて来た。
「小僧、これからどうなるか、教えてやろうか?」
「お前は今から焼印を押され、奴隷となる。
そして死ぬまで馬車馬のように働き続けるんだ…」
そして俺の背中に金属板が押し付けられ、ジュワァ〜と背中が焼かれ熱さと痛みが襲って来る。
「うがぁぁぁ!!」
「くっくそ……ルーク………」
アルディスはそんな俺の姿を見ながら、動けないまま拳を握りしめ悔しがっていた。
堪らずその場で倒れこむ、丸い金属板で熱してた物はまだプシュップシュッと言っている。
「はぁはぁ」
スピュキュレは俺を見下ろしながら、
「これで、お前は俺の者だ。素敵な地獄へ連れて行ってやるよ……」
そう言ってスピュキュレは俺の両足に足枷をした。
「さて…次はお前だな」
オルルベイトは動けないアルディスを、見つめる。
「まっ待って……彼だけは助けて!」
俺は這いつくばりながらオルルベイトの足の服を掴み必死に訴えた。
オルルベイトは俺を睨みながら、見降ろしている。
しかし、オルルベイトではなくスピュキュレが俺の背中を足で踏みつけて来た。
「ぐあっ!!」
「お前はもうお前の物なんだよ!兄貴に意見するなんておこがましいのも大概にしろ!!」
何度も何度も蹴られる。
「はぁはぁ」
アルディスは倒れこんだまま、ひきづられながら中央広場へと連れ出された。
「やっやめろ……」
スピュキュレは俺の背中を踏みつけながら、ニヤニヤと笑っている。
「ルーク、気にするな………」
アルディスは俺を、見ながらそれだけ言ってきた。
昨日アルディスと戦った大剣の男が、アルディスの前に現れる。
「いっ……いやだ………」
そんな俺を見ているオルルベイトは、
「無力だな……小僧………」
“この前まで、楽しい毎日を送っていたのにこんな結末なんて絶対駄目だよ
アルディスさんだけはなんとしてでも、助ける!”
俺は窓の方を見ながら、決意した。
スピュキュレに背中を踏まれ、身動きが取れない俺は、アルディスに向けられている剣がスローモーションの様に見えた。
そして振り下ろされる瞬間、
「発動しろ!!【疾風のアーツ】!!」
そう叫ぶとアルディスに装着されている【疾風のアーツ】は応えてくれた。
碧色の【疾風のアーツ】は光を放ちながら発動し、アルディスを包み込むように風がおこった。
俺はそのままアルディスを窓の外に吹き飛ばすよう念じた。
するとアルディスを包み込んでいた風は、俺の予想通りにアルディスを飛ばし窓の外へと落として行く。
アルディスは飛ばされながらも俺を見てくれていた。
「ルーク……お前………!!」
「生きて!アルディスさん生き延びて!!」
アルディスは手枷をされたまま、そのまま海に落ちて行った。
呆然に立ち尽くしていた周りの山賊より先に、状況把握したのはスピュキュレだった。
「きっ貴様ぁ!!!」
スピュキュレは俺を動けなくなるまで蹴りまくり痛めつけてきた、その痛みに耐えられず気絶していた。
「スピュキュレ、もうやめとけこれ以上は死んでしまうぞ」
「はぁはぁ……すまない兄貴……」
「いや、気にするな。この海は潮が結構激しい。
あの手枷をされたままでは生き延びることは不可能だ。
打ち上げされそうな海岸に人を回して回収させるさっ」
「わかった……」
スピュキュレは気絶している俺を睨みながら、もう一発蹴りをいれるのであった。
◆◇◆◇◆
気がついた時は、鉄の壁で囲われた護送車みたいな馬車に、閉じ込められ馬車は動いていた。
十人ぐらいの子供達が押し詰められ、俺だけ倒れていた為狭いスペースが更に狭くなり、小さく座っている姿が見えた。
「いっ……いてぇ………」
背中が猛烈に痛い……
「あっ気がついた?」
「無茶しすぎだよ、君………」
「いや、でもかっこ良かったよ!」
と知らない子供達が俺に話しかけて来る。
そして昨日話しかけてくれた少年が俺に話しかけてきた。
「あの人、無事だといいね」
「うん……ここは……さっきの所じゃないよね?」
「あぁ、ここはスピュキュレの馬車の中だよ。
どこに向かっているかは、わかんないけど………」
「まだ背中の焼印が痛むだろう…着いたら教えてあげるよ。
それまで寝ているといいよ」
俺はその言葉に甘え、眠る事にした。
それから三日三晩馬車は走り続け、食事という食事をもらえぬまま、背中の焼印のせいで高熱が出てしまい手当を願うも、スピュキュレはコップに水一杯のみ俺目掛けて掛けそれっきり放置された。
身体が燃えるように熱い……
ぼんやりとしながらもアルディスは、無事なのかそれだけが心配だった。
額が冷んやりと冷たい。
少し楽になり、ぼんやりと目が覚めた。
少年が、俺の額に手を置いてくれていたのだ。
周りの子供達は、両手を壁につけそのまま動かないでいる。
「少しは楽になった?」
「うっうん……みんなは何やっているの?」
「ここの壁は鉄で出来ていて、以外と冷たいだ……」
みんな俺の為に冷たい壁に手をつけ、そして冷えた手を代わる代わる俺の額に手を当て、熱を下げていてくれた。
「うっうっ……ありがとう」
「なにいってんだ!困った時はお互い様さ!」
「そうよ!気にしないで!」
みんなだって、辛いはずなのに……
俺は嬉しかった。
少しずつ熱が下がりはじめるも、馬車は只々目的地を目指していた。
それから、更に三日が立った頃だろうか馬車は止まり、スピュキュレはドアを開ける。
「降りろ」
足枷をされたまま降ろされ、どこかの会場みたいな所の通路を歩かされ、騒がしい声が聞こえてくる。
一人ずつ壇上に上げられ、なにやら数字が飛び交っていた。
本で読んだ事がある。
“これは奴隷オークションだ!
一番高い値段で提示した買い手に売られるんだ。”
などと考えていると、スピュキュレに俺は無理矢理壇上連れて行かれる。
壇上中央には、俺を照らすスポットライトが眩しかった。
大勢の人が俺を見ている……
そして、中央にある文字盤の数字が次々と上がって行っている。
カンカンカンカン!
と音と共に俺はどうやら落札されたらしい……
そのままスピュキュレに連れて行かれるがまま、俺を競り落とした奴隷商人ローリンアウェイに出会う事となった。
「他にも何人か連れてくる、そこで待っていろ」
とだけ言われ、ローリンアウェイは俺を馬車の中に閉じ込め会場へと戻って行ったのである。
馬車の中には俺の他にも数人の子供達が座っており、震えて泣いていた。
本来ならこんな感じになるのかな?
“でもギレット爺さんの特訓の方が、数十倍怖かったけど………”
等と考えているとローリンアウェイは再び子供達を連れて戻ってきたのである。
馬車の外でなにやらスピュキュレとローリンアウェイの話し声が聞こえてきた。
「スピュキュレ、いい奴隷が手に入った。この次も頼むよ」
「ローリンアウェイの旦那、一体何人の奴隷を殺せば例のアレは完成するのですか?」
「さぁな、なんせ強大な砦だ。
しかし今回は若いのを結構手に入れる事が出来たから、しばらくは大丈夫だろうさっ」
「程々にな、ローリンアウェイの旦那」
「あぁ、また頼むよ」
そんな話し声が終わり馬車は出発した。
食事も与えられず五日間、馬車はひたすら走りようやく目的地に着いたのである。
ローリンアウェイは俺たちを降ろし、一人の鞭を持った男に引き渡したのである。
連れて行かれた場所は、大きな広場で大人や女子供達が採石場から大きな石を運びながら壁を積み上げていたり、内部では更に細かく作り込んでいた。
「奴隷諸君、ようこそ地獄へ
お前たちはこれからここで、死ぬまで強固な砦『ラッセル』を建設するんだ!」
こうして、俺は『ラグナロク』に行くはずが、奴隷となりここで砦を作る羽目になった……




