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Arts hunter   作者: kiruhi
少年編 ーパラケラルララレ学校ー
21/118

第二十話 それぞれの旅立ち

 六学年の新学期が、始まる準備期間中の出来事だった。


 ザァーーーーーーー

 雨が降り続く中、俺は泣きながら剣をがむしゃらに振り回していた。

「ルークちゃん、もうやめなさい!」

 セルビアの止める声は、俺には全く届いていなかった。




 それは数時間前の出来事であった。

 ライトは帰り支度をしている俺を呼び止め、学校の校庭に呼び出していた。

「なに? ライト? こんな所に呼び出して………」

「もうすぐ、六学年だろ……?

 その前にお前と決着を着けたい思ってさっ」


 ライトとの勝負は、惨敗……

 なにも出来ぬまま、俺はライトの動きにまったくついて行く事が出来なかった。

 そして手加減された上に、ぼろ負けしたのである………

「ルーク……あれはたまたまだったのか?」

 ライトは俺を見下ろしながら、そう言って去って行く。

「うっうぅ………」

 呼び止める事も出来ず、校庭の真ん中で倒された俺は、動けぬまま只々泣いていた。


 悔しかった……

 俺は、今まで何をやっていたのだろう……


 がむしゃらに振り回している俺の『成長の剣』をセルビアは止めた。

「もう、やめなさい」

 無理矢理止めた為、セルビアの手から血が流れていた。

「はぁはぁ……だって俺……うっ……うぅ……」

「ルークちゃん……」

 セルビアに連れて行かれるまま、俺は家の中へと入って行き、その日の夜、高熱を出して寝込む羽目になった……





 熱にうなされていたせいなのか、久しぶりにアーツバスターに村の皆が殺される夢を見てしまい、俺は飛び起きたのであった。

「はぁはぁ……父さん、母さん…皆……」

 ふとベットの横を見ると、セルビアが俺の看病をしていてくれたのか、側で眠っていた。

 支部長の仕事も大変なのに、セルビアは俺の事をいつも心配し見守っていてくれており、親のように時には厳しく、そして優しい接してくれている。

 あの返事をしていない俺に対して、嫌な顔せずにずっと側にいてくれていた。


「んー……ルークちゃん……」

 セルビアは眠たい瞳を擦りながら、俺に話しかけ、俺の額に手を当てながら熱がないか確認してきた。

「どうやら、熱は下がったみたいね」

「はい」

「若いっていいわね! すぐに元気になるんですもの!!」

「セルビアさん、もう大丈夫です。ベッドで休んで下さい……」

「そうね、ルークちゃん元気になった事ですし、(わたくし)も寝るわ」


 セルビアは何故か、俺のベットに潜り込んできた。

「ちょ!!」

「だってぇ〜(わたくし)の布団に戻るの面倒いんですもの♪」

「いや……そおいう問題じゃなくて……」

「嫌かしら?」


 心臓が口から飛び出しそうなぐらい緊張してきた。


 ドッキン!

 ドッキン!!


 俺は顔を真っ赤にしながら、セルビアから眼が離せなかった。

「ルークちゃん、顔真っ赤……」

 セルビアは俺の頬を触りながら、クスクスと笑っている。

「ねぇルークちゃん……以前に話ししていた

『いつか(わたくし)の本当の……』

 って話の件なんだけど……考えはまとまったかしら?」

「えっ?」

 突然の話に俺は、少し困惑してしまった。



 一学年の終わりの頃に、セルビアは俺にいつか本当の息子になって欲しいと話をしてくれた。

 それを俺は今まで何ひとつ返事をしないまま、セルビアの世話になっていた。

 もし例えここで断ったとしても、セルビアは俺をこの家から追い出す事はしないだろう……

 今まで同様の対応を、きっとこれからもしてくれると思う。

 その事をずっと考えていた。

 でも結論を出せぬまま、今に至っていた……

 ここではっきりさせない事は、今まで俺の事を大切にしてきてくれた、セルビアを傷つける事になるのでは? と俺は考え結論を出す事にした。



「セルビアさん……俺……俺でいいのですか?」

「もちろんよ」

「父さんと母さんの夢を今日みました。

 まだ忘れる事が出来ない俺が……セルビアさんの息子になっても、本当に大丈夫なのでしょうか?」

 俺は泣きながらセルビアに今、思っている事を伝えた。

 セルビアは俺を抱きしめ、頭を優しく撫でながら話ししてきた。

「大丈夫……ご両親はきっとルークちゃんの幸せを祈っていると思うわよ」

「セルビアさん……」

(わたくし)の息子になってくださるかしら?ルークちゃん」

「はい……はい…セルビアさん……よろしくお願いします」




 次の日

 セルビアと共に書類を提出した俺は、正式にセルビアの養子となり、ルーク・ゼナガイアから、ルーク・フォン・タルトへと名前を変更する事になった。


 セルビアはタルトの名の事、ベイウルフの事、子供がいた事を教えてくれた。

 そして今は、タルトの名を封印している事を話ししてくれた。

 だから俺も名前を名乗る時は、ただのルークと名乗る事にし、深く聞かれた時にのみセルビアの息子のルークです、と答える事にした。

 ニコッと微笑みながらよろしくねと、セルビアは言い……


 一つのお願い事をされた。

「いつかお母さんと呼んでね♪」

「!!!」

 そんな日がくるのだろうか……

 俺にはまだそれは、わからなかった。




 その話をアルディスは支部長室で、直接セルビアから聞いたのであった。

「それで、俺の気持ちはいつ答えてくださるのですか?セルビア……」

(わたくし)は、アルディスちゃんの事、今は弟として思っていますわ」

「今は……ですか……」

「えぇ……」

 セルビアは今もまだベイウルフ・デーンの事を好きなのかもしれない。

 時間をかけながらセルビアから、ベイウルフを忘れる日を待つ事にしたアルディスであった。




 ◆◇◆◇◆



 パラケラルララレ学校最後の学年、六学年がいよいよ開始された。

 この学年が終われば、俺は卒業しアーツハンター訓練施設へと進む。

 悔いのないように俺は目標を立てた。


 “『成長の剣』を進化させて、卒業までにライトにリベンジする”


 六学年にもなると、授業の内容は基礎知識より実践練習の授業が、多く厳しい内容になっていった。

 毎日教官の指導を受けながら実践練習を行い、週末になるとギレッド爺さんからの手加減のない指導を受け、ボロボロになりながらも確実に俺は成長して行くのがわかった。


 半年が過ぎた頃、俺はいつものように庭で素振りを行っていると。

「ルークちゃん、少したくましくなった?」

「えっ? そうですか?」

「うん、筋肉とかいい感じね……流石師匠だわ…」

 などと言う会話をしていた。



 俺はライトにリベンジする前に、どうしてもセルビアと一戦やりたかった。

 勝つのが目的ではなく、今の自分の強さを知っておきたかった。

 お願いしてみると、アーツを発動しないという条件であっさりと了承してくれた。

「うふっ手加減はしないわよ」

「はい……」


 セルビアは眼つきが鋭くなり木刀を持ち出し、俺の方へ向ける。

「どこからでもいいわよ」


 俺も『成長の剣』を構えセルビアにかかって行った。

「うぉぉぉぉぉぉぉおっ!!」

 セルビアは俺の攻撃を真っ向から一瞬だけ受け止め、気がついた時には俺の剣は手元にはなく、頭の上に飛ばされていた。

「あっ!」

 剣の行き先を見てしまい、セルビアから目を離した瞬間。

 セルビアの木刀は俺の脳天を直撃し、一撃で気絶させられた。

「あぁ……あぁ………ん…………ルークちゃん大丈夫!?」

 オロオロと慌てるセルビアは、凄く強かった。


 普段はのほほんとしているくせに、甘くみていた……

 流石、ギレッド爺さんの弟子……

 



 気がついた俺は、セルビアの話は耳に入っていなかった。

 どんよりと落ち込み庭の茂みに歩いて行きそのまま座り込む。

「はぁ〜〜」

 と深いため息をつく。


 “セルビアさんは強かった……”


 現役で尚且つ経験豊富なセルビアに挑んだのが、間違いだったかも……

「いい勝負できると思ったのになぁ〜何もできなかった……」

「なに悩んでいるの? ルークちゃん!?」

 セルビアはヒョコッと俺の前に顔を出した。

「うわっ!」


「いや……セルビアさん強いなと! 思いまして……」

「ん〜(わたくし)まだまだ現役でいたいし……

 ルークちゃんに苦戦していたら、(わたくし)は支部長を引退しないといけなくなちゃうわ……」

 さりげないその一言に俺は、少し傷ついた……

「でも、ルークちゃんの成長の伸び代はこれからだとは思うわよ」

「慰めはいらないです……」

「そして力だけなら今のルークちゃんに(わたくし)は負けると思うわ」

「セルビアさん!!」

 俺は、立ち上がって怒鳴ってしまう、それでもセルビアは話を辞める事はなく続けて言ってくる、

「それにルークちゃんの剣は軽いわ。

 己の想いを乗せない限り、これ以上ルークちゃん自身の成長は永遠にないわ」

「想い…………」

「悔しいなら、強くなりなさい! 誰よりも強く!!」

「わかってる! わかっていますよ!

 でも俺は、どうしたらいいのかわからないんです!!」

 俺は、再びセルビアに怒鳴り、罰が悪くその場から逃げ出してしまった。

「あらあら、反抗期かしら?」


 自分の越えられそうで、越えられない壁に俺は悩んでいた。


 それからしばらくセルビアは、俺に気を使い色々な話しをしようとしてきたが、俺は目を合わす事が出来ず避けるようになってしまった。

「はぁ〜」

「珍しいですねセルビアが、深いため息をつくなんて」

「むぅ〜アルディスちゃん、(わたくし)だって悩む時だってあるわよ?」

「ほぉ、今日の晩御飯とかですか?」

 アルディスの冗談にセルビアはギロリと睨まれてしまう。

「すみません……冗談です。ルークですか?」

「えぇ……ルークちゃん最近私を避けるのよね……お母さん悲しい……」

「…………」

 アルディスは一呼吸置いてからセルビアに、なにかルークに言ったのではないのでは?と聞いてみた。

 セルビアはこの前ルークに戦いを挑まれたので、手加減しないで一撃で倒してしまった事等、一連の流れを話しした。

「ルークは確か、ウォルト卿のご子息ライトにぼろ負けしてますよね?」

「あぁ……確かにそれでいじけてましたわね。それがどうかして?」

「そしてセルビアにもぼろ負けしたと……」

(わたくし)、ルークちゃんに負けるような事があれば、支部長やめて修行の旅に出るわ!」

「………………」


 “大人気ない………戦いの事となると相変わらず容赦ないな……

 一切妥協を許さない……

 それがセルビアの強さだな……”


 等とアルディスは考えていた。

「どうしょうかしら………」

 セルビアは仕事はすべてアルディスに任せ、頭を悩ましていた。




 一方俺は、結論がでないままずっと悩んでいた。

 授業に身が入るわけもなく、教官に怒られる事が多くなった。

 このままでは、卒業も危ないらしい。



 そんなある日、俺はアルディスにアーツハンターギルドに呼び出されていた。

 ずっとセルビアを避けていた俺は、行きたくなかったが必ず来いとの事で渋々行く事にした。


 アーツハンターギルドに着くとすぐにアルディスは現れて、理由を言わぬままアルディスは黙ってついて来いとだけ言って俺は後をついて行く事にした。

 街から南へ少し進むと辺り一面お墓がある場所にたどり着いた。

「ここは……お墓??」

「こっちだ……」

 アルディスはお墓の奥の方へと進み、足を止めた。

「ここだ……」

 そこには、アルベルト・ゼナガイアの墓と刻まれており、その隣には俺の村の名前と村人一同と刻まれた墓があった。

「これは……? なぜここに!?」

「この墓はな、セルビアに口止めされていたが、セルビアがお前の為にと思い建てた物だ……」

「えっ………?」

「アードから村を出る前に、墓を建てて来たという事は聞いている。

 だけどセルビアは建てたかったんだろうな……」

「…………」

「はぁ………ほっんとセルビアはお前に甘い!」

「アルディスさん……」

「お前が何に悩んでいるのか俺にはわからんし、解決してやろうとも思わん。

 ただセルビアは支部長ではなく、いつか現役に戻りたいんだろうなと俺は思う」

 アルディスは、俺の肩をポンと叩きその場からいなくなって行った。


 その墓の前でしばらく俺は考えていた。

 そしてある結論を出した。


 “いつか必ずセルビアに恩返しをしたい!”


 と……

 お墓の前で一礼した俺はセルビアの待つ、家に急いで帰ったのである。




「セルビアさん!!」

 俺は、勢いよくドアを開けセルビアの名を呼んだのであった。

 しばらくしてセルビアは、のそのそと俺の前に現れたのである。

「はいはい、ルークちゃんなにかしら?」

「いつの日か必ずセルビアさんより強くなって、そして……」

「ほぉほぉ、そして?」

「ギレット先生よりも強くなって!」

「あらまぁ……」

「だから、それまで待ってて下さい!!」

「はい、わかりました」

「そして、ずっと避けててごめんなさい!!」

 言いたい事だけ言って、俺は部屋に入ってしまった。


 ドキッドキッ

 “うまく伝わったかな………”



「うふっ楽しみにしているわ…ルークちゃん♪」

 俺の部屋を見ながらセルビアは微笑みながらそう呟いていた。




 ◆◇◆◇◆



 一つの壁を超えた俺は、そこから更に飛躍して成長を遂げる事が出来た。

 まず、ライト以外の皆に勝つ事ができた、それはすごく嬉しかった。

 そして、まだまだ勝つ事は出来ないがセルビアやアルディスに相手になってもらい、更に強くなって行く事が実感出来てきた。


 そんな毎日を繰り返しているといよいよ卒業試験が明日と迫った頃、いつもの通り俺は学校が終わると家の庭で素振りをしながら、ライトと戦うイメージトレーニングをしていた。

「おい、ルーク」

 そう呼んだのはライトだった。

「ライト?? どうしてここに?」

「あぁ、ギレット先生にここの場所を聞いた………」


「もうすぐ卒業試験だろ? それが終われば俺は、近衛兵訓練施設に行く。

 もうお前と戦う事もないだろう……

 だから、最後の勝負をしようと思ってきた」

 ライトはそういいながら俺に剣を向け、俺も黙ったままライトに剣を向けた。



 先に仕掛けたのはライトの方だった。

 鋭い踏み込みから一閃、その攻撃は俺の首元を狙っていた。

 それを後ろに回避する事でよけ、反撃する。


 お互いの剣が、何度も何度も交わり合い激しい激突を繰り返す。

「はぁはぁ……半年ぐらいしか経っていないのな……」

「はぁはぁ……」

「でも俺が勝つ!!」

 再びライトは俺に向かってきた。

 ライトの剣の風圧が円状になって、俺を襲いかかってきた。

 それを受け止めている間にライトは俺に詰め寄り剣を振り下ろしてきた。

 咄嗟にライトの足を払い、バランスを崩した所に下から斬りあげてみると、ライトもまたそれをよけるのであった。


 三十分程戦ったがなかなか決着がつかず、お互いの体力の限界が来てその場で座り込んでしまった。

「はぁはぁ……」



「決着つかずか……はぁはぁ」

「強いね……はぁはぁライト………」

 それ以外何も話す事なく、呼吸が落ち着いた頃ライトは立ち上がり俺の方を見下ろしてきた。

「勝負はいずれまた」

 といい、ライトはセルビアに一礼し帰って行くのであった。


「あの子、強くなるわよ……」

「はい……」

 その一言だけセルビアは話ししてくれたが、妙に嬉しかった。





 次の日

 今日はいよいよ卒業試験の日だ。

 合格の条件はただ一つ、ギレット爺さんと一対一で戦いその中で『成長の剣』を進化させ目標である、七段階にし、その強さを認めてもらう事だった。



 教官に呼ばれた俺は、教官の後をついて行き連れていかれる。

 連れて行かれた場所は闘技場みたいな広い場所で観客席には皆と教官達、そして校長等学校の先生達が見守る中心にギレット爺さんは立っていた。



「手加減はせぬぞ……ルーク」


 この学校で最後となる、ギレット爺さんの熱い授業が今始まるのであった。





 ギレット爺さんは【衝のアーツ】を発動し、左腕をぐるんぐるんっと回しながら近づいてくる。

「さてと………復讐を遂げた先にお前はなにを求める?

 その答え聞かせてもらおうか……」

「俺は、もう悩みません!」

「ほお?」

「アーツバスターは倒します!

 そして、更に強くなってギレット先生やセルビアさんよりもっともっと強くなって、セルビアさんに恩返しをしたいです!!」



「それが俺の復讐を遂げた先に求める物です!!」

「………そうか儂を越えると言うか……フハハハハッ!

 面白い! 今ここでその片鱗を見せてもらおう!」


 来る!!

 そう感じる事ができる程の殺気と共に、ギレッド爺さんは左拳を俺目掛けて踏み込みながら、突き出してきた。

 衝撃波が俺に届く前に後ろに飛び、衝撃波の勢いに乗って更に大きく後ろへ移動する。

 何度もシミュレートしていた、この日の為に……

 予想通りだったが、俺が距離をあけた空間をギレット爺さんはすぐさま消し去り、俺の前に立ちふさがり、前傾姿勢で力任せに拳は振り下ろされる。

「うわっうわっ!」


 “避けなきゃ! 後ろはダメ!”


 真横によけてみたが、それはギレット爺さんの予想通りの行動だったらしく、避けた方向にギレット爺さんの右拳が待ち構えていた。


 ドスンッ!


 避ける事は出来ず、俺の身体に衝撃波が突き刺さり、くの字に折れ曲がる。

「くはっ!!」

 右脇を抑えながら、逃げる。

 しかしギレット爺さんの追撃は続き、俺の服の裾を掴みそのまま一回転し床に叩きつけられた。

「!!」

 一瞬声が出せずにのたうちまわる俺に、いつの間にかギレット爺さんの拳が俺の顔めがけて、振り下ろされていた。

「うおっ!」

 慌てて、避ける事ができた。

 ギレット爺さんの拳は、地面に減り込んでいた。



「はぁはぁ」


 “つっ……強い……攻撃する隙がない”


「これで終わりか? ルーク?」

「はぁはぁ」


 俺は、『成長の剣』を振りかぶり、思いっきり地面に叩きつけた。

 その衝撃波は地面を少しだけ割りながら、ギレット爺さんに向かって石の槍の形をしながら攻撃していくが、軽々と避け着地した。

 ギレット爺さんの着地する場所を、予測した俺はその場所に移動しギレット爺さんの片足をつかむ事に成功した。

 そのまま体格のいいギレット爺さんの足を持ち上げ、力任せに転ばす事がなんとか出来た。

「はぁはぁ……」

 そしてそのまま『成長の剣』をギレット爺さんに振り下ろしたが、突然衝撃波が俺を襲いかかり2m程吹っ飛ばされた。

「くそっ……はぁはぁ」

 ギレット爺さんは両足で立ち上がり、俺に近づいてくる。

「ふむ、今のは予想して儂の足を掴み転ばすまでは、良かったが最後の攻撃は爪が甘かったの」


 ギレット爺さんの【衝のアーツ】は一つだけ弱点がある……

 それは、直線的な攻撃が多い事。

 直線的な攻撃を俺が避ける事が出来れば……

 もしかしたら勝機はあるのかもしれないが、今の俺には体力的にも技術的にも避ける事は不可能だった。

 それに、『成長の剣』一本のみでは、とてもじゃないが防ぐ事は……


「さて、次はなにをしかけてくる?」

「はぁはぁ…………」

 どうやら、体力も後一回の攻撃する分しか残ってないのがわかる。


 ふと何故かわからないが、鞘が気になった。

 俺は『成長の剣』の鞘を取り出し、片手には『成長の剣』、もう片方の手には鞘を持ってみた。


「ほぉ〜」


 “その構え懐かしいな………

 ルークはお前にそっくりだな、二刀流のアルベルト……

 その背中を見せる事はできなかったようだが、ルークの中で少しずつ目覚めて来ているようだな……

 さて、ルークの体力もそろそろ限界だろ……

 ならば、思いっきりいかせてもらう!”


「いくぞ! ルーク!!」

「……はぁはぁ」



 ギレット爺さんは大きく足を広げ、両手の指は外に向かせ、そして手首を合わせ(カ◯ハ◯波の形)

「特大衝撃弾!」

 その衝撃は、ギレット爺さんも後ろに下がらす程、凄まじい威力だった。


 特大衝撃弾は俺めがけて飛んでくる。


 ズドーーーーーンッ!!

 激しい音と共に、砂煙が舞い起こる。


 その砂煙が晴れると俺のいた場所は、徐々に見えてきた。

「なにっ!」

 ギレット爺さんは一瞬驚いた……



 俺は、ギレット爺さんの特大衝撃弾を『成長の剣』と鞘でほんの少しだけ受け止め、上にジャンプしながらギレット爺さんの真後ろに着地した。

 ギレット爺さんも攻撃に集中していた為、俺に後ろを取られた事に気づく事はなかったのだが、俺にはもう攻撃する力は残っていなく、ギレット爺さんにもたれかかるように気絶していた。


「やりおるわい…………合格じゃな……『成長の剣』も進化しとるわい……フワァハッハッハッハッ!!」


 俺の卒業試験はこうして終わった………




 ◆◇◆◇◆



 俺が気絶している間に、皆の卒業試験はあっさりと終わってしまった。

 どうやら俺との戦いで大技を使った事で、体力が落ちてしまったらしい……

「なんか腑に落ちないな……」

「なに、怒っているんだ?」

 教室で怒っている俺に、ゼーンは話しかけて来た。

「ゼーン、おかしいと思わないか?」

「なにが?」

「なんで、俺の時だけギレット先生元気で、皆の時は元気じゃないんだよ?」

「あぁ〜ルーク……ありがと!」

 肩をポンッ!と叩くゼーンを、思わず睨んでしまった。

「まぁそういうな、ルークのおかげで結構体力消耗していたけど、皆苦戦したんだぞ!?」

「むーーーっ!!」

「ハッハッハッじゃ明日な」

「あぁ……」


 卒業試験に合格した俺たちは、明日卒業式を迎える。

 随分と急だな?

 と思ったが、入学当時に渡されたプリントにきちんと記載されていた。





 家に帰ると何処かで聞いた笑い声が、聞こえて来た。

「フワァハッハッハッハッ!!」

 笑い声は、どうやら奥の部屋にあるリビングルームから聞こえる。

 そっと覗いてみると、セルビアとアルディス、そしてギレット爺さんがいた。

 ギレット爺さんはもう既に大量の酒を飲み干し、上機嫌で酔っ払っており側にいるセルビアとアルディスは何処となく、傷だらけだった。


 “卒業試験の後、家に来てセルビアとアルディスともやったのか……

 すげ〜元気だな〜

 それとも物足りなかったのかな?”


 と感心しているとアルディスに気づかれ、無理矢理リビングルームに連れ出されてしまった。

「よぉ〜ルーク〜おかえり〜」

「たっただいまです……ギレット先生……」

「お前〜強くなったなぁ〜」


「ぬぬぬぬっ!! いかん! 少し酔いを冷ます! ついて来い、セルビア!!」

「えぇ〜(わたくし)だけですか………」

 ギレット爺さんは嫌がるセルビアを無理矢理連れて行き、しばらくすると激しい音が家中に響き渡ってきた。


「うわぁ…………」

 ドカーーーン!!

「ギレット先生の後ろを、とったんだって?」

 バコーーン!!

「あっはい。でもその後気絶したので………」

 ズドーーーーーンッ!!

「まぁそこらへんは、今後の課題にしとけ」

 ガキーーン!!

「はい……」




 しーーーーーん


「あっ音が止みましたね………」

「戻ってくるかな…」


 バンッ!


 とドアが開き、清々しい顔をしたギレット爺さんが戻ってきた。

 その後ろでは、ボロボロになったセルビアがしょんぼりとして立っていた。

「いやぁーすっきりした!

 ルークを待っているつもりが、つい酒を飲んでしまった!

 セルビア、もう儂に酒は勧めるなよ!」

「はい………師匠……」


「ギレット先生、俺を待っていたって何か用事でもあったのですか?」

「あぁそうだった!そうだった!

 ルークにこれをやろうと思ったのだ」

 ギレット爺さんは一本の剣を渡して来た。


 それは見覚えのある、父の剣だった。

「こっこれは……」

「そうだ、アルベルトの剣だ。

 お前に、初めて会ったきっかけもその剣だったな」

「はい………」

「お前に会って、興味が湧き本来ならヴァルヘルム学校に行く予定だったのを、急遽変更した」

「えっ?」

「卒業祝いにその剣を、儂はお前にどうしても渡したかった………」



「最後の攻撃の際、鞘を使っての二刀流にしたよな?」

「はい、無我夢中でしたけど………」

「二刀流はアルベルトがもっとも得意としていた」

「えっ!?」

「あっ確かにそうですわね」

「今はまだ扱えないかもしれない、だが本格的に二刀流にする時が来たのならアルベルトの剣を、使ってやれ」

「………はい……ありがとうございます」


「では、ルーク明日また……」

 ギレット爺さんはそういい、嵐の様に去って行った。





 次の日、俺はセルビアが買ってくれた服を着て卒業式に参加した。

 俺が座っている後ろの父母席では、セルビアが涙を必死に堪えている姿が、妙に面白かった。

 セルビアは支部長として顔が広く、父母席でも結構話題になっていた。

 なので、ここで号泣する訳にもいかなかった様だ。



 卒業証書を受け取った俺たちは居室で、ギレット爺さんの話を聞いていた。

「この六年間色々な事があったと思う、お主達は今日卒業をするが儂は、いつまでもお主達の師匠でありたいと思っている。

 これから更なる力を身に付け、儂にいつでもかかってこい!」


 “ギレット先生らしい言葉だな〜”


 と思いながら俺は、いつか出会うと信じて皆とお別れをした。


 そして、皆がそれぞれの夢の為に旅立って行く………

 ・ライト・フォン・ウォルト

 ライトは希望通り、近衛兵訓練学校に入り未来の近衛兵隊長を目指し、更なる力を身につける事になる。


 ・ラスティ・フォン・ゼクタール

 やはり、ライトの申し出に断る事が出来ず近衛兵訓練学校に進む事になる。

 しかし彼の眠っていた才能はここで華を開き、ライトの良き友と同時にライバル関係になって行く。


 ・ゼーン・フォン・スプリンフレア

 剣王を目指すべく剣の聖地へと旅立って行った。


 ・ガイアッ・フォン・ツバィツ

 己の野心を叶える為、パラケラルララレ学校高学年部に進級する。


 ・リーサ・フォン・ルーベルト

 途中退学となる。


 ・ヴァルディア・フォレルーン

 途中退学となる。


 ・サン・イノール

 最後まで親の反対を押し切り、商人の後は継がずにゼーンと共に剣の聖地へ旅立つ。


 ・ムーン・ミハアル

 アーツハンター訓練施設に希望していたが、お金がなく断念しガイアッと同じくパラケラルララレ学校高学年部に進級する。


 ・ディア・ギオルレス

 パラケラルララレ学校在籍中に祖父が死去し、一人になった彼女は卒業まで祖父の残してくれたお金でなんとか生活をしていた、卒業後両親と祖父の思いと共に剣の聖地へと旅立つ。


 そして俺、ルーク・ゼナガイア改めて、ルーク・フォン・タルトはアーツハンター訓練施設、通称『ラグナロク』に進む。



 そこからは、目まぐるしく忙しかった。



 アーツハンター協会がある街ガーゼベルトから、すぐ近くに『ラグナロク』はある。

 まずロールライトからガーゼベルトに行くまでに徒歩で約二週間弱かかる。

 そして、アーツハンター協会で入学試験を受けなければならない。

 その入学試験日に間に合わなければ、更に一年待つ事になる。

 日数的にギリギリらしい。

 なので、馬車を使い一週間程でつく予定である。



 セルビアはガーゼベルトに行く事はできない為、アルディスが送り届けてくれるとの事で、セルビアとはロールライトで別れる事になるが、休みの日があるのなら会いに来たいと思っていた。


 ロールライトの入り口の門の前で、セルビアは俺に手を降りながら、

「ルークちゃん! 仕送りするからね〜無駄使いしちゃダメよぉ〜」

 俺が見えなくなるまでセルビアはずっと俺に話しかけていた。


「アルディスさん………」

「なんだ?」

「俺………恥ずかしいです………」

「おぅ…俺もだ……」


 こうして俺は、アルディスと共にセルビアが見送る中ガーゼベルトへと旅立った。

 まずは俺の【黒と白のアーツ】の封印解除だ!





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