71話 セフィル編 13
「久しぶりですね」
サイロは牢の中からニヤッと笑った。
ほんの数日牢に入っていただけのはずなのに、顔は腫れ上がり痩せこけていた。
「何故、自分は何もしていないと訴えないんだ?」
「旦那様は俺をブロア様から離したいんだと思います。それにブロア様の言うことしか聞かない俺のことを憎らしいと思ってるみたいだし、俺の話なんてまともに聞こうとはしないですよ」
「まっ、俺も生意気な態度しか取っていないけど」サイロがボソッと呟いた。
「君をここから出したいと思ってる」
「へぇ、俺を出す?あなたにそんなことできるんですか?」
「確かに俺の力だけでは無理だ。宰相は他国とは言え発言力も強く、宰相の意のままになっている。だけど君が無実なら出られるはずだ」
「……俺は無実です…ただ……ルッツが隠していたネックレスをサマンサが取りあげて自分のものにしていたのを、俺が無理やり取り返したので、盗んではいませんが……まぁ、ちょっと?かなり?強引だったかもしれません」
「メイドのウエラから話は聞いているらしい。ここは他国だ。無実なら宰相がなんと言っても出せるはず。ここの国の騎士達とも話し合いをしている、もう少し待っていてくれ」
「ブロア様にはお会いしましたか?今ブロア様は?」
「すまない……まだ会いに行っていない」
「何してんだ?場所ならわかってるんだろう?」
「先に君を助ける。そうしないと会いにはいけない」
「俺は無実なら出られるんだろう?だったらあんたは必要ない。さっさと会いに行ってやってくれ」
「いつもブロアのそばで俺に冷たい視線を送っていた君からそんな言葉を言われるなんて思わなかったよ」
「へぇ~、自覚あったんだ。ブロア様がいるのに他の女とイチャイチャしていたあんたをブロア様の婚約者として認める気持ちはなかったんだ……もちろん今もあんたのことは軽蔑してる。だけど、俺の気持ちは置いといて、今はブロア様のことが大切なんだ……時間がない……」
「ブロアに何があったんだ?」
「………今まで話していないのに……俺からは言えない……本人に会ってからにしてくれ」
サイロはそれ以上何を聞いても返事はなかった。
騎士達と話し合い、サイロのことをどうするか決めかねていた。宰相のご機嫌は悪く、サイロを牢から出せないでいる。
バルン国の騎士達も勝手に牢から出すとアリーゼ国の重鎮である宰相の気分を損ねることになっては困る。
たかが一兵卒でしかない騎士のサイロ。身分は低くバルン国としては助け出さなければいけないとは考えていないようだ。
一方アリーゼ国の騎士達は、ブロア様のためにと、サイロを助け出そうとしている。
しかし、宰相がいつサイロに会いに牢へ行くかわからないので勝手に出すことはできないでいた。
俺は明日また宰相に会う約束を取り付け、宿へと帰って行った。
ブロアがいる別荘へは、明日宰相と会ってから行くことにした。
なんとか明日、宰相にサイロを出してもらえるように話してみるつもりだ。




