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187_禁止しても、やらない。

 趣味の時間やら、ぼんやりする時間やら、ゲームやら読書やら漫画やら、とにかくも、数学やら国語やらの学習時間を確保させるためにそれらを禁止したからと言って、学習時間が増えるわけではないのですよ、と言う意見が少し前に眺めたことがありまして、今回はそのあたりをとっかかりにしてお話を進めてみようかと、企む今日のゴブリンであります。


 何かしてもらいたいことがありまして、さらにはそれを自発的にしてもらおうと思うと、これは報酬をぶら下げて誘導するか、不利益を提示して追い立てるか、の二択になりそうであります、と思うわけであります。報酬というのも直接的な利益ではなくて、将来に役に立つかもしれないという想像をさせることで自ら修練とかを行うようにさせることも、その範囲の中であるとする方がよろしいとは思います。

 金銭を報酬にしたり、物欲を満たす方向での誘導は、短期的には効果的でありますが、長期的にはいささか問題があるのではないか、とおっしゃられる方がおられます。理由としては、最初のうちは報酬につられて行動するのでありますが、その後、その個体とか個体群は、報酬がなければ、その行動をすることをやめてしまうわけでありまして、行動をし続けてもらおうとするならば、報酬を支払い続けなければならなくなるようになるわけですね。これは不経済でもありますし、第一、明確にこれこれをすれば報酬がありますよ、といちいち指示しなければ、動かないようになるかもしれません。つまりは先に報酬が提示されなければ動かなくなるわけでありまして、これはどうもよろしくないのではないかという理論であります。

 逆に、最初に報酬をしっかりと取り決めてから動くようになれるので、これはこれでよろしいような気もいたします。特に仕事として行動する、しっかりとした対価を必要とする意識を作るという上では、この手の報酬のやり取りとかは、むしろ推奨するべき段取りかもしれません。

 大事なのは、仕事に取り掛かる前に、しっかりと報酬の話ができる空気というか、雰囲気を自然にできるようにするべきでしょうか、名誉だけでは食べていけないのでありますよ、と嘯かなくても、常識として、利益のすり合わせはできるようにした方がよろしいのかもしれません。


 善意とか、ボランティアとか、人助けとか、その辺り、無償ですることに美徳を感じるので報酬がどうのこうのとするのは美しくないという美意識というか、これはむしろ趣味の範疇に入りそうな意見でありますが、前提として人助けは、自分が満足できる、精神的な充実を得られるという利益があるのですよと、名文化されてはいない報酬があるという、相互認識、意識的にせよ、無意識的にせよあるわけでありまして、このお約束が守られている限りは、関係は穏やかで、幸せなものになるのではないかとかは思うわけです。


 ただし、そのように善意とかで無償提供してしまうと、それを仕事としている方々の利益を損なってしまうのでありまして、この辺り、少々調整が必要な案件になるのでしょうねとか、想像できるわけです。


 精神的な充実やら、未来への投資やら、若い時には苦労を買ってでもしろとかいう格言やら、お言葉があるわけですが、これらに囚われ過ぎても、搾取されるだけで歪な経済形態を社会が作ってしまうことになりかねないわけでありますから、何にしてもバランスが大事であろうと思うわけであります。


 無償の善意というものは、とっさの時に無意識に出てしまうくらいのものでよろしいのではないかとかは思います。これを計画的に長期にわたって強いられるような行為にしてしまうと、これはこれで優しくない社会になりそうな予想もできそうです。

 この辺り、うまく制御できるノウハウとかが、どこかに蓄積されているような、予想があるのですが、おそらくは個々の資質として一般化されていないか、状況による判断がデリケートであるので、職人芸に近いカテゴリになっているのかもしれませんね。


「学ぶということが、素晴らしいことであると知らない子が多いのよ」

「知識が得られることを利益と考えない方が多いようですな”ご主人様”」

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