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108_倒れた石に座ってみる。

 長い歴史に埋もれた遺跡で、なんとなく地表にのぞいている、建材として使用されていた石に腰掛けて、悠久の時に想いを馳せる、というお話ではありません。

 その石は川沿いのアスファルトで舗装された細めの道、軽トラックが通れるかぐらいの、そんな場所のそばに忽然と倒れているのです。そばには、何やらその季節になると黄色い実がなる木が生えています。植えられていたのかもしれませんが、今は管理されていません。


 石が倒れているとしたのは、それが、不格好でデコボコしているけれども、細長い長方形をしているように見えるからです。その倒れた柱のような長方形が、ちょうど、ゴブリンくらいの大きさ、10歳くらいの子供が座るにはちょうど良い高さでしたので、待ち合わせの時や、駆け回って少し疲れた時や、ちょっとした食べ物をつまんでいる時など、ベンチのようにして、使われています。


 まさしく、そのような用途で、誰かが木陰になるところに置いたのだろうと、予想するわけです。それにしても、その石の柱のようなものは、何に使われていたのでしょうか?単純に建物の柱とするとしたら、ちょっとデコボコとしすぎているようです。ひねりが少しあったりするようにも見えます。

 何か芸術的な作品になる予定のものだったのでしょうか、白を基本とした色合いで、それに灰色が混ざり、黒や茶色のブツブツが模様のようにも見えます。

 ザラザラと磨いていない手触りで、指を這わせると、まったいらなところはほとんどありません。寒い季節には、座るのにちょっと勇気がいるくらいに冷えていますが、暑い季節でもそれほどひんやりとはしていません。

 木陰になっているかというと、ちょっと残念な小さな影に包まれる程度です。


 ベンチとしても少し不便ですね。座り心地は悪いです。でも高さはちょうどいいのです。ごろりと寝っ転がると、傾いているので転がり落ちそうになりますし、何しろ痛いのでむきません。

 なので、長くは座ってはいません。そうですね、ほんの数分、長くても二十分くらい座ったり、寝転んだりする程度です。

 登ったり、そこから勢いをつけて飛び降りたり、無意味に遊ぶ石であることもありました。なぜか、笑いながら、子供達がその石の周りで飛び跳ねたりしていたりもしています。


 それほど周囲で遊べるところではないところでしたが、待ち合わせとしてはちょっとした場所ではあります。ただ、明確にそこでとか、あそこで何時に集合、とか、いうものではなくて、ふとその道を歩いていると、たまに誰かが座っている、そのような雰囲気の、倒してある石です。


 石垣に使っていたものだったのかもしれません。ただ、結構の長さではありましたから、どこからか持ってくるには、それこそトラックが必要であっただろうかな?と推測できるわけです。

 子供が寝転んでも十分それより長い、石でしたから、けれども岩だとは言えないくらいの、小物的な印象があるのです。


 なので、だから、誰かが、そこに、木陰のベンチ的な風景を見せたくて、運んできたのではないかなとか思うわけです。

 全く違って、川沿いに要らない石材を捨てたら、たまたまベンチ風に使用できるようになったのです、かもしれませんが。


 こう、男の人、年配とか初老とかですね、自身の生活空間の中で、崩れた石垣とかで出た石材の処理に苦労して、思い出したのが、川沿いの道の木とそこの空間です。ポンと手を叩いて、その場に置いたらベンチになるなと、面白そうだから、持って行こう。とかして、長年の相棒である軽トラに、人力のクレーンで石をえっちらと乗せて、走り出す。そういう絵はいいですね。


 そういう石を思い浮かべた、という、ただそれだけのお話でありました。


「彼との待ち合わせスポットにも岩があったりするんですよ」

「一方的な待ち合わせというのがどうかと思いますが”ご主人様”」

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