夢の終わり
俺には、幼い頃からずっと見続けている「ヘンテコな夢」があった。
自分が直接動けるわけじゃない。ただ、自分とは違うどこかの世界に住む「ある男の日常」を、まるで特等席で見る歌劇のようにぼんやり眺めているだけの夢だ。
だが、何年も毎日毎日見続けていれば、あっちの男にもそれなりに愛着が湧いてくるってものだ。
幼少期は、誰しもそんな夢を見るものだと思っていた。だから普通に周囲に話していたのだが……成長するにつれ、周囲のドン引きしたリアクションから「どうやら変なのは俺の頭の方だ」と察し、夢の話はぴったりとやめた。
まあ、例外として、大好きな乳母のナタリーにだけは少しだけ話してあげたけれど。
なにせナタリーは優しく、そして豊かな母性と包容力に満ち溢れていた。文字通り、服の上からでもはち切れんばかりの包容力だ。俺は父親に必死にワガママを言い、乳母の役目が終わったあとも屋敷に残ってもらい、俺が立派な大人の男になるためのあれやこれやを手伝ってもらったのだ。
……いや、すまん。ナタリーの話はどうでもいいな。正直、今の俺はかなり混乱しているんだ。
混乱の理由は簡単だ。
数日前、俺はいつものように夢を見ていた。だが、その夢の中であっちの男が読んでいたのは、なんと俺が通うレガリア大学を舞台にした小説だったのだ。
しかも、出てくるのは大学だけじゃない。俺の一番の友人まで実名で登場していた。
そして──あの激しい衝撃と悲鳴。
夢の中の男が乗っていた飛ぶ車(ヒコーキというらしい)が墜落したあの日を境に、俺はぷっつりと「あの夢」を見なくなった。
……なぁ、これって一体なんだと思う?
俺の名はルーク・フォン・ヴェルディエ。
ヴェルディエ侯爵家の嫡男であり、歴史ある名門レガリア大学に籍を置く、ぴちぴちの16歳。
超・絶世の美少年で完璧超人の同級生、クロード・フォン・ヴァルテンベルクの一番の幼馴染にして、背景役を務める男だ。




