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エリュシオン・オンライン  作者: 神城 奏翔
第2章 喜びの感情
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Chapter14 平凡な日常

お待たせしました!


今日から第2章の開幕です!!

 エリュシオン・オンライン内で最高難易度を誇る隠しダンジョンーー終末の祠。


 ゲームと現実(リアル)が混同していなかった時期では、そのダンジョンに行けたのは俺だけという不甲斐ない結果であった。

 行くための条件は簡単にも関わらず、誰もが到達出来なかった秘所。エリュシオン・オンラインは何十にも渡る攻略サイトが設立されているが、どれもかしこも載せられていない。


 終末の祠についての説明は受けれない。俺もそんなスタンスを取っていた。正直、あの場所は俺しか行っていないので、他プレイヤーとのレベルの差を作るには最適だと思ったのだ。

 レベルは高ければ高い程、強く成れるし、新しいスキルも覚えることが出来る。

 このまま行けば最強なプレイヤーに成れるかも。

 いつしか、そう思うようになっていた。自分一人で秘密の訓練場を作り上げ、誰とも協力せずに単独でダンジョンに挑み、そしてクリアする。

 仲間と触れ合い協力してクリアするゲームの趣旨とは正反対なプレイ内容だった。

 今思い返すと、馬鹿なことをしていたんだな。と、昔の自分を哀れむ。他人は全員信じられなくなり、ゲームの世界に逃げ込んだだけのことはあるな。ゲーム内でも、他人と接するのが嫌だったのだろうな。


(……だが、今の俺は違う。仲間達と助け合い、強敵を打ち破る楽しさを見つけた)


 人によっては、命が賭かっているデスゲームで何楽しんでやがる。と罵られるかも知らないが、俺は意見を曲げれない。馬鹿にする奴は馬鹿にしていればいい。こっちも最初(はな)から全員助けるつもりも無事帰すつもりもない。

 エリュシオン・オンラインで俺を慕ってくれて、今でも自分の保身よりも皆を助けるために努力をする奴らを優先して助けるつもりだったのだから。


「なぁ、『暴竜の延髄』って持ってる?」

「いや、持ってないわよ。そんなレアアイテム」


 あれから一週間後の昼下がり。

 ダンジョン攻略しつつ、終末の祠を探して旅をしていた俺達を迎えたのは、人通りが盛んな街だった。


 中に入ってみると、商品もそれなりに良いのを取り扱っており、結構高い道具から安い道具と種類も意外と置かれている。武器にしても防具にしてもそうだ、お高いブランド物や特殊効果持ちもあれば、リーズナブルな料金だが、能力が無く能力が低いのもあった。


「……お前に聞いてないけどな」

「なんですって!?」


 それを皮切りにあーだこーだ言い合う二人の姿を見て俺は思う。


 確かに言ってはいなかったがーー。


「痴話喧嘩なら他所でやってくれよな」


 店先で騒ぐなよ。NPCからはそうでもないが街中にいるプレイヤーから恨むような視線が降りかかって来てるから。主に俺とアーサーに向かって。


 俺らに降りかかる恨みの視線の理由は解るが、納得はし兼ねる。言ってしまえばモテない男共の嫉妬なのだが、俺まで巻き込まれる意味がわからないという感じだ。

 痴話喧嘩をしているカップルはともかく、俺が恨まれてるのはティナみたいな可愛らしい女の子と二人で買い物を済ませているからだろうな。


「「痴話喧嘩じゃない!!」」

「……息ぴったりじゃねぇか」

「「こいつが合わせて来てるんだよ!」」


 お前ら気が合い過ぎだな。むしろ双子なんじゃないの。という思いを視線に乗せ、二人が文句を言い合う姿をじっと見ていた。

 ーー喧嘩する程、仲が良い。って言うしな。


「え、えと、キリュウ君。ちょっと良いかな?」


 何かを言いたげな態度で話しかけて来るティナ。

 彼女の手には傷だらけの剣が握られており、俺はそれが前の戦いで摩耗した武器だと気付くのに時間がかかった。


「……それ。ギガントスとの戦いで壊れたのか?」

「うん。そうみたい。まだ使えると思ったんだけど、ギガントスの肌が意外と硬かったみたいで」


 武器が壊れたなら、修理するか新品を買う必要があるよな。

 この賑やかで品数が豊富なこの街でそれを言ったってことは。


「……もしかして、武器の修理代、あるいは新しい武器を買うお金を貸してくれって話か?」

「ち、違うよ!」

「じゃあ何が欲しいの?」

「修理ついでに武器を強化しようと思ったんだけど、『暴竜の延髄』を持ってないかな? 一つだけ欲しいんだけど」


 暴竜の延髄か……。

 確か一つしか持ってなかったような。

 メニュー画面、持ち物欄を表示し、目的の品物を探してみるも一つすらなかった。武器を作るのに使ってしまったっけな。


「悪い。持ってない」

「キリュウ君も持ってないか。まぁ、レアアイテムだからね。気にしなくていいよ」


 少しガッカリした様子で店の中へと戻って行くアルティナの姿を視界に入れた俺は、彼女のために何かをしてやれないかと考えた。


「……ジュリア。アーサー。ちょっと用事思い出したから行って来る」


 今日は攻略をしないオフの日と予め決めていたので別行動をしても問題はない。一応、二人にも声は掛けたので大騒ぎになることはないだろう。


「この街にあいつがいれば良いのだがな」

「……あいつって誰のことかな」


 中央広場にて人を探していると、聴き覚えのある声音で俺に問い掛ける少女がいた。

 彼女のプレイヤー名は『マリア』。フリーで活動していて、どのギルドにも属さない天邪鬼だ。


「探したぞ。マリア」

「ほぅ。キミの探し人はアタシだったのか。何が聞きたいんだ?」

「『暴竜の延髄』入手方法について。もっとも簡単な方法はないか?」

「……キミがレアアイテムを欲しがるなんて珍しいな」


 アイテム名を出した途端にマリアは目の色を変え、表情は驚愕に染まる。

 今まで無機質にゲームの世界も現実世界も生き続けた俺とは違うんだ。今や目的もあるし、守るものも見つけた。前の俺とは違う。


「私用で必要になったんだ。二つぐらいあれば助かるが、最低一つは必要だ」


 最低でも一つかぁ……。と呟き、額を指で抑えて考えるマリアを真剣に見つめる。思い当たる節があるのならば、それが例えガセかも知れない情報でも俺は向かうから。


「……この時期だと、取りに行くより貰う方が楽かな」


 取りに行く? 貰う?

 マリアの独り言が不意に聴こえて来る。取りに行くと言うのは実際に、『暴竜の延髄』をドロップする『バジリスク』を倒しに行けという意味だろう。勿論、レアアイテムなためドロップする確率は限りなく低いが、何度も何度も出現しては倒す。の繰り返しの果てに手に入れろという戦法。だと、俺は予想するが、貰うの意味がわからない。


「キリュウはさ、明日、この街で行われる『子竜の舞(ドラグナードダンス)』の概要を知ってる?」

「……確か、一対一の戦闘で、敵を瀕死にしたら勝ちだっけ? 殺したら反則負けだったかな」 

「そ。その大会の優勝賞品が『暴竜の延髄』なんだよね」

「マジか!!」


 興奮のあまりマリアに詰め寄る。仲間のために欲しい素材なので、真剣になってしまう。俺にとってはいらない素材だが、仲間にとってはいる素材ならば、それを取るために頑張ってやる。


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