Chapter12 協力の方法
「あなたね……。無茶するならするで、ちゃんと仕留めなさいよ」
衝撃が来ると予想していたのだが、来たのは衝撃ではなく聞き覚えのある声だった。
つい先程、別れたばかりで、一度としてパーティーに入ることなくソロで狩り続けた俺が始めてパーティーに入ったことのあるパーティーメンバーの声が。そして、俺が手こずった巨大モンスターを退かせるプレイヤー達の姿が目に映った。
「ま、キリュウは一人で戦ってましたからね。仕方ないと思うけどね」
「まったく、一人で何でもしようと思いすぎです」
きっかけはジュリアの一言。だが、それが他のメンバーに伝わり、口々に俺の文句を言い始める面々。
最終的には俺に対する文句しか言わない会場と化し、ギガントスはいないものとされ会話が成されていた。
「……大体、キリュウ君は」
「まぁまぁ、キリュウも悪気はないんだしさ。ただ少し思い詰めていただけだし」
予想外なアーサーの援護に驚きながらも「うんうん」と頷く。俺の立場を四文字熟語で表せば「四面楚歌」なのだ。
仲間になってくれる人がいるなら、縋り付いてでも引き止めてやる。そんな想いを抱いていた。
「それに僕らを守るためだからね。無理したのぐらい許してあげようよ?」
怒るだけ怒っておいて、手のひら返したかのように優しくするな! なんて、ツッコミたい気分ではあるが、ツッコまないよ?
味方になりうる存在を何故、自分で手放すんだ。
俺には目的があるし、こんなところで死んでられない。志半ばで死んでしまうなんて一番嫌なパターンなのだから。
目的がなく死ぬなら、まだ許せる範囲内ではあるけど、正直死ぬのはごめんだな。
「……てか、それよりも敵をなんとかしましょ」
「それもそうですね。キリュウに色々と言いたいことはありますが、今はいいでしょう」
俺もお前には聞きたいことが何個もあるんだよ。女の子二人は俺と一緒に行動していたからまだわかるが、お前はなんでいるんだよ。
二人が呼んだ可能性も考えられなくもないが、ジュリアとアーサーはあまり仲が良くなさそうだし、それはないかな。
となると、アーサーの野生の勘というやつかな。
「勘だけで生きてる奴ってのは、面倒だよな」
「何かいいましたか。キリュウ?」
「ああ。勘を頼りに生きている獣は厄介だなってさ」
目の前で俺達を必死に探しているデカ物の姿を視界に入れる。
入った攻撃と入らなかった攻撃。
単に威力の問題かと思ったが、じっくりとモンスターの様子を観察していると違うことがわかる。
手で攻撃する際に手に魔力を注入し、威力をあげる。それがスキルによる主な攻撃手段だが、それは防御にも適用可能なはずだ。
一部分に魔力を集中して来るべき攻撃を弾く。
俺の攻撃は基本的に一直線で、防御もし易い。しかし、『狂戦士の乱舞』は防御されなかった。
一点特化した防御は鉄壁ではあるが、他方からの攻撃による威力には弱い。
『狂戦士の乱舞』は、決まった攻撃パターンではなく、その場その場で応用出来るという利点を持つ反則スレスレのチート技だ。代わりに非ダメージが増加するのだけどな。防御力がないに等しくなるから。
「……そうか。あいつはだからガード出来たんだ」
「あの防御力の強さの秘密、わかったのか?」
「ああ、わかったよ」
まだ確証は持てないが。おそらくはこれで合っているだろう。
「それじゃあ、教えてくれよ。あいつの防御はどうやったら破れる?」
「その質問に答えるのは簡単だが、もう少し待ってくれ。今から確証を得るために試す」
メニュー画面を開き、パーティメニューからこの場にいる三人をパーティに誘う。
唐突なパーティ勧誘だが、三人は動じることなく参加してくれた。
俺がしたいことがわかっているのか知らないが、追求されないのは助かる。
『聴こえるか?』
普通に話せばいいものをわざわざ、パーティチャットを使用して 話しかけてきた俺を見るが詳しい話をしている暇はない。
三人は口を使ってはいけないのだと察したのか、それぞれ首を縦に振る。
俺がパーティチャットにした理由はそれじゃないんだけどな。
『あいつの弱点はおそらく、一点防御による防御力の無さだ』
『一点防御? 防御力の無さ?』
『……なるほど、そういうことね』
アルティナとアーサーの二人はまだわかっていないみたいだが、ジュリアは理解出来たのだろうな。
やっぱりこいつらと一緒にパーティを組んで行動するならジュリアをリーダーにするね。アーサーに任したら特攻になるし、アルティナに任せたら特攻にはならないにしても罠に引っ掛かりそうだ。
『要するに多方面から攻撃しなさいってことよ』
『あー、なるほどね』
『そういうことか。了解だ』
マジで一緒に行動するならジュリアがいいわ。やはり力と頭は比例しないんだな。
俺もどちらかと言えば頭は悪い方だし。と、言ってしまえば、俺は頭は悪いが力はあるって言ってるようなものだな。
普通に強いとは思っているが、やはり驕りというのはダメだな。自分は何でも出来る完璧人間だと思い込んで底辺まで落ち、未だに復帰してこない人間を俺は知っている。
何をやらせても出来ていたのに、たった一度失敗しただけで何かが切れたのか失敗続きになり、何をさせてもダメダメな結果にしかならなくなった可哀想な男を……。
「さっ、行こうぜ」
いつの間にか出来上がっていたパーティ。
お互いがお互いの足らない点を補い、今まで手に入れることが出来なかったものが手に入った気がした。
これからはそれを守らなければいけないんだ。そう思うと俄然やる気が出て来たし、なんとかして元の世界に戻り、「自分が一番不幸だ、仲間なんていないんだ」と思っている男に会わせたい。
俺の決意を無に返そうと猛々しい雄叫びを挙げるギガントスだが、怯むことなく剣を取り立ち向かう。
今の俺には仲間がいる。
彼らを元の世界に戻すために俺は勝つんだ。




