91話「恋愛戦争勃発」②
なに話してたの?」
「いや、まあなに。なんでもねえよ」
「じゃあなんでこんなに遅かったの?」
「それはほら、うんこだから」
「僕嘘つきは嫌いだよ?」
いつもの穏やかな声音なのに、冷たく鋭い視線が突き刺さる。
「うっ。それは、そのーー」
話しかけたところで二夕見も戻ってきた。
「お待たせ」
「お、おお」
「おかえり二夕見さん。うんこ長いね」
笑顔でとんでもないことをぶっ込む白銀。
「っ!は、はいっ!?私は別にそんなことっ」
「あれ?じゃあなにしてたの?」
「っ!け、化粧直しよ!」
「ああごめんね。あんまり長いからそうなのかと思ったや。一ノ瀬くんはいつもそうだからね。ね?」
などとウインクしてくる。
「は、ははは」
乾いた笑いが出る俺。
バチバチ2人が睨み合う。
「と、とりあえずなんか頼まないか!?な!?」
「私おこがましいからいらないわ。お腹空いてるけど、人にたかるおこがましい女だから我慢する」
「お、おいおいおい!?そんなこと誰も言ってないって!さっきも言っただろ!?」
「そうだ。この前奢ってもらった分返すわ。いくらだった?これでもう終わりにしましょ。二度とあんたとご飯なんて行かないから」
「いいってまじで!返さなくていいから!ていうかお前らここは俺に任せとけって!ほら!好きなのいっぱい頼めよ!俺二夕見がお腹いっぱい食べてるところ見たいな〜!いっぱい食べる女の子好きなんだよな〜!満腹の時に見せる幸せそうな笑顔可愛いんだよな〜!」
「ふ、ふーん?そーなの?可愛い?」
「めっちゃ可愛い!まじで!なんか俺まで嬉しくなるよね!あれ!今日なんか服可愛くね!?なーんか夏の服も女の子っぽくて可愛かったけ、秋服は可愛い上におしゃれなんだな〜!超良いじゃん!」
「そ、そう?ふふっ!そーかな!ありがとっ!じゃ、じゃあご馳走になろうかな?いいの?」
嬉しそうに微笑み、たおやかな笑顔を俺に向けてくる。いよしっ!
「じゃー僕明太子パスタ爆弾ハンバーグ唐揚げ丼山盛りポテトシーザーサラダコーンポタージュスープストロベリーパフェで」
真顔で淡々と吐き捨てるように告げる白銀。
「お、おう。その、え、遠慮ないな。そ、そんなに食べれるか?二人でシェアとかした方がいいんじゃないか?な?」
「ううん大丈夫。一人で全部食べるから。なんなら君にもあげない。女の子がいっぱい食べるの見るの好きなんでしょ?ならいいよね?」
感情のこもっていない暗い目で見つめてくる。
「そ、そうですはい。分かりました」
そして店員さんを呼んでほんとに注文する。
俺は2人に気づかないようにそっと財布の中身を確認する。
「あ、じゃあ私いいですか?私は、ナポリタンサラダにー、フィッシュアンドチップス、エスニックサンドウィッチとー、チャーハン餃子セットとー、クラムチャウダースープでお願いします♡あっ、デザートでりんごジュースとアップルパイもお願いしますね〜♡」
ご機嫌で注文を終えた二夕見。うん。今月のご飯は全部のりに決定だな。
「結構頼んじゃったけど、大丈夫一ノ瀬?」
「大丈夫大丈夫。任せとけって。遠慮はいらねえって言っただろ?」
「そう?じゃあ遠慮しないでもう少し頼もうかな〜」
「で、でもほら、こ、これ以上は他のお客さん可哀想だからさ?な?」
「そーね。全部食べてからでもいいか」
それで遠慮してたんかい。結局まだ頼むんかい。やべーよこいつらやべーよ。色んな意味で絶対に会わせちゃいけないやつらだったよ。
料理が運ばれてきて、食卓に並ぶ。
「美味しそ〜♡」
「一ノ瀬くん、いただきます」
俺の方を見て手を合わせてくる白銀と、料理を見てテンション上がっている二夕見。
「いただきま〜す♡」
「うーんおいし〜♡」
「美味しいねってあれ?一ノ瀬くんなにか頼んだ?」
「あー、俺はほら、あんまりお腹空いてないから。コーヒーだけでいいのよ」
「ほんとに?大丈夫なの?」
「気にすんなよ。ほら、冷める前に食っちまえよ」
2人して食べるのをやめると、俺と目の前の料理を見比べる。
そして、片手をもう片手で制しながら、歯を食いしばって、空き皿に少しずつ料理を取り分けていく。
「「ど、どうぞっ」」
2人してなんとか笑顔を浮かべながら、でも名残惜しそうに差し出す。
「い、いいのか?」
「もちろんだよ!ごめんね僕たちのせいでお金なかった?」
申し訳なさそうに見つめてくる白銀。
「いや別にそういう訳じゃ、ていうかあの、手離してもらっていいか?」
2人ともなかなかお皿を離そうとしない。
「一ノ瀬そんなに遠慮しないでさっさと食べなさいよ。私たちならいいから。ごめんねこんなに奢ってもらって」
などと顔だけは遠慮がちな表情を浮かべているが、手にはそうとう力が入っていて、離す気はない。
「いやじゃあそろそろ力入れるのやめてもらっていいか?手離してもらっていいか?」
「ほんとにごめんね一ノ瀬くん。ほら、僕らの分も食べて」
「いやだからっ。手をっ」
「一ノ瀬やっぱり無理してたのね。ほんとにあんたってやつはっ。大丈夫よ気使わなくて。私たちのも食べて」
「だから離せよっ!てめえら言ってることとやってる事が違ぇんだよ!この食いしん坊どもが!どんだけ食い意地張ってんだよ!まだまだ来るんだから待ってろ!大体頼みすぎなんだよこのデブどもが!破産するわ!」
俺にキレられようやく手を離す二人。
「ふふっ。足りなかったら出したげるわよ。無理せずあんたも頼みなさいって。ね?気使わないでいいわよ」
「ごめんついヒートアップしちゃって。あはは。注文キャンセルできるか聞いてこようか?」
「いいよもう頼んだし。なによりさっき言ったことは別にその、嘘じゃねえしな」
「え〜?なーに〜?最後なんて言ったの〜?よく聞こえなかったからもう1回言ってくれる?」
二夕見が嬉しそうにニヤニヤしながらいじってくる。
「チッ。別に何も言ってねえよ」
「さっきのいっぱい食べる女の子が好きとか、私が満腹の時に見せる顔が可愛いとか、あれのこと言ってるの〜?」
またニヤニヤしながらいちいち分かっているくせに確認してくる。
「るっせーな黙って食ってろ。デザートキャセルすんぞ」
「ふふっ。照れちゃってかーわい。一ノ瀬も男の子なんだね?」
「あーなんか腹痛くなってきたトイレいこ」
「うそうそごめんって!怒んないでよ。ほら座りなって」
まあムカつくけど上機嫌になっただけいいかさっきまでのこいつまじで怖かったもんな。
一人黙々と食べてた白銀が俺の皿の唐揚げとポテトを奪い取る。
「食べないんならもらうからね」
などと低い声でつぶやく。
「め、飯まずかったか?」
「別に?美味しいよ?どうしたの?」
「いやなんか、機嫌、悪いかなって」
「そんなことないよ。ただ、二人仲良いなーって思って。さ??」
やけににっこりとした顔が非常に怖い。
「でもさいっぱい食べる女の子って僕のことも入るよね?」
「え、あ、ま、まあ。入るんじゃねえか」
「じゃあキミは僕がいっぱい食べるところも好きってこと?」
「ま、まあそうなるけど。なあもうさっきの発言はいいだろ?そろそろ勘弁してくれよ」
「まだダメー。じゃあさ、君はつまみ食いする女の子も可愛いって思うの?ありだ思う?」
「えー?まあ、それは、可愛いと思うが」
「えへへ!そうなの?そーなんだ。ふーん。そんな風に思ってたんだね君はー。あははっ」
などと機嫌よくなる白銀。
2人とも幸せそうに次々とご飯を食べていく。
そして。2人の視線が交錯した。
「バチチッ」
「パクパクパクパクッ!」
「もぐもぐもぐもぐっ!」
お互いに意識し合いながら次々と口に放り込んで、競い合い出す。
「あのすいません。お水もらえますか?ピッチャーごともらえると助かります」
「このお皿もう下げて頂いてもいいですか?ありがとうございます」
お互い睨み合いながら早食い対決が始まる。
「お前らもう少し落ち着いてだな、しっかりかんで、ゆっくり食べればーーー」
はっ。俺はここで気づく。こいつらここ潰し合わせとけば俺の財布はなんとか守られるのでは?と。
「赤コーナー。たかった相手は数しれず。収穫中に生の野菜にかじりつくなどやりたい放題。調理中?なんでもいいから持ってこい!腹に入れば食べ物だ。食べても食べてもお腹は出るが胸は出ない。東のデブとは私のこと!二夕見しお!」
「私のお腹は出てないわよ!誰がデブだ!確かに生のとうもろこしかじっちゃったことは認めるけどなんでも食べれるわけじゃないから!」
「青コーナー。盗んだ野菜は数しれず。常にお腹を空かせた野生のハイエナ。しかし食べるものはすべて雑草。盗んだ野菜もすべて熟していない。矛盾をはらんだ肉食動物。西のデブとは僕のこと!白銀ゆき!」
「うるさいよ!誰がデブさ!好きで雑草ばっか食べてるわけじゃないから!」
「どちらが本当のデブなのか!今!デブたちによる因縁の対決が始まろうとしております!デブたちのデブたちによるデブたちのためのキングオブデブ決定戦が今幕を開けます!はっけよーい残ったあ!」
「「すもうか!誰がデブだ(デブさ)!」」
「「むっ!」」
ハモったことが気に入らなかったらしく、再び睨み合うと、
「パクパクパクパクッ!」
「もぐもぐもぐもぐっ!」
なんでフードファイトが始まるんだよ。なにに対抗意識燃やしてんだよこいつら。
「一ノ瀬。このチャーハン結構おいしいわよ?1口食べてみる?ほらっ」
などと少し頬を染めスプーンを差し出して俺の口元に近づけてくる。
「あの、小皿に……」
「ほら?」
俺の手をはたくとスプーンを持ち上げて強調してくる。
「いや、その、いいよ無理して分けなくても。さっきあんなに分けるの嫌がってたんだからよ」
「今は話が別なの!いいから食べなさいよ!なによ私のは嫌なの!?」
眉をつりあげて不機嫌になり出す二夕見。
「あーんっ」
向かいから白銀が前のめりになって二夕見のスプーンを口に入れて食べてしまう。
「ほんとだ。おいしい」
「……」
お互いの鋭い視線がぶつかり合う。
ちょっとこのお店暖房弱くない?なんなら冷房入ってるよね?扇風機回してるよね?
「ねえねえこれおいしいよ?唐揚げ丼。はいっ、あーんっ」
今度は白銀が唐揚げを箸でつまんで俺の口元に運んでくる。
「じゃ、じゃああの、お皿に……」
「はい。あーん?」
白銀は俺のお皿を押し戻すと、さらに箸を近づけてくる。
「うっ、いやそのほら、もっとたくさん食べろよ。な?俺はいいからさ」
「美味しいを君と共有したいんだよ。そういうのも幸せって言わない?」
などと可愛らしく小首を傾げてウインクしてくる。
「バキッ」
向かいから首を伸ばした二夕見が白銀の割り箸の先端ごとかじって食べてしまう。
「バキバキッバキッ。ペッ。ごっくん」
割り箸を細かく口なの中で噛み砕くと、ティッシュに吐き出し、唐揚げを飲み込む。
「まあまあね」
不敵な笑みを向かいの白銀に向けて髪をさらりと払う。
「バチバチッ」
お互いに睨み合う。
怖いよ〜。お腹痛くなってきたよ〜。っていうかお前は映画に出てくる敵役の魔女かよ。箸を食べるんじゃねえよ。
「ていうか白銀さん少し食べ過ぎじゃない?そんなに食べたら太るわよ?」
「二夕見さんに言われたくないな。そっちの方が食べてるんじゃない?僕は消化早いし太らない体質だから大丈夫だけど、女の子なら控えた方がいいよ?女の子としての自覚足りてないんじゃないかな?」
「はい?私だってどれだけ食べても太りませんけど。ていうかあなたこそ一人称ボクだし喋り方も男臭いし、女の子としての自覚足りてないんじゃないの?」
「これは個性だからそういうこと言うのよくないよ?そういうところじゃない?あと僕は普段あんまり食べないからこういう時に沢山食べさせてもらって蓄えてるだけなんだよね。君は普通に恵まれた生活を送ってて毎日3食食べてるのに、普段からこんなに食べるなんて、いやしすぎない?恥ずかしくないの?」
「っ!?このっ!」
羞恥と怒りから顔を真っ赤にした二夕見が八つ当たりして俺の足を蹴る。
「ガンッ!」
「いたあっ!?はあっ!?」
何故おれ!?
「しかも好物はバナナって聞いたんだけど、それほんとなのかな。バナナって。なん
だかゴリラみたいだね。クスッ」
白銀って嫌いな奴にはこんな態度も取るのー?怖いよー。女子怖いよー。
「ばっ!バナナは健康にいいしっ、お腹も膨れるから病院とかでもおやつとしてもよく食べられるし!スポーツ選手もよく食べるしっ!なっ、なにも恥ずかしくなんかないからっ!」
と言うわりには心底恥ずかしそうで、俺の方をちらちら確認してくる。
「でも女子高生ではあんまり見ないよね。学校で食べれる?僕はちょっと恥ずかしくて無理かな」
「そっ、それはっ!うっ。そ、そうかもだけど、私はっ」
二夕見が珍しく言い負かされて涙目になっていた。
「白銀。誰が何を好きとかそんなの個人の自由だろ。俺はバナナが好きなこいつは嫌いじゃない。そういうのはあんまり好きじゃないな」
「うっ。ごめんなさい」
俺の言葉に少し傷ついたような顔をした白銀が素直に謝る。
「い、一ノ瀬っ」
驚いたような顔をした二夕見が嬉しそうに、少し恥ずかしそうに俺を見る。
「お前もお前だ。自分から食べ過ぎだの女の子らしくないだの喧嘩をふっかけておいて、同じようなこと言い返されて泣きそうになるなよ。自業自得なところあるぞ」
「な、なによっ!うるさい!分かってるし!わ、私もごめんなさい。言い過ぎたわ」
お互いにしゅんとする2人。もーこれなんなのなんの罰ゲーム?帰らせて神様。
「でも、一ノ瀬くん、やっぱりかばうのはそっちなんだね」
しんみりした顔で白銀が床を見ながらぼそっとつぶやくり
「いや別にそういうわけじゃねえよ。どっちかが言い過ぎだと思ったら口挟んでるだけだ。ていうかお前ら少し冷静になれよ。どうした。いつもらしくないぞ。いつはもっと優しいし誰かにそんな態度取らねえだろ」
「「誰のせいでこうなってると思ってるの!?」」
2人とも厳しい声音でキッとこちらを睨みつけてくる。
「ひいいっ!?ごめんなさいっ!!」
よく分からないがとりあえず謝っておく。
「これは戦いなのよ。臆した方が負けるの。甘いことは言ってられないの」
「そうだよ。優しいだけじゃ欲しいものは手に入らないことだってあるの。大切なものは自分の手で掴むんだ」
強い意志を込めた目で俺を射抜いてくる。
「そ、そっか。あんまり気負いすぎるなよ」
2人して呆れたような怒ったような顔で見出す。
「こいつどうしようかしら?ボコボコにして川に捨てる?」
「僕は野犬の餌にした方がいいと思うな」
などと急に仲良く話し出す。
ここで店員さんが追加の料理を運んできた。
「あ、ありがとうございますー」
「いえー。ごゆくっくりどうぞー」
綺麗なお姉さんがにっこりたおやかに微笑んで去っていく。やっぱり女の子はこうじゃないとね。久しぶりの穏やかさに癒されていると。
「「……」」
やけに視線が刺さり、見ると2人してじとーっとした目で俺を見ている。
「なんか今デレデレしてなかった?」
「私もそう思った。ちょっと色目使ってたわよね?」
「は、はあ?別に使ってねえよ。丁寧な接客だなーって感心してただけだろ?」
「嘘。一瞬だけど横目で追ってたわ」
「僕も一瞬だけど『ちょっと癒されるな〜』みたいな顔してるの見逃さなかったよ」
2人の表情がどんどん曇っていく。
「そんなことねえってまじで」
やべえよこいつら死ぬほど鋭いよ。あまりにピリピリしてるからちょっと和んだだけですぐに気づかれたよ。怖すぎるよ。
「なに?あんたああいう人がタイプなわけ?」
二夕見が腰に手を当てて威圧するように尋ねてくる。
「別にそんなことはねえよ」
「ああいう大人のお姉さんみたいな人男の子は好きだもんね」
「だから違うって」
「じゃあどういう女の子が好きなの?教えなさいよ」
「僕も気になるな。一ノ瀬くんはどんな子がタイプなの?」
「は、はあっ?なんでそんなことお前らなんかに教えなくちゃーー」
「「いいから答えて」」
ひどく冷たくて低い声で威圧される。
「いやだね。教えない。ていうか俺は別にそういうの興味ねえーーー」
「へえ?」
「ふうん?」
「びくっ!?」
恐ろしく冷たい笑顔を浮かべた2人がそっと立ち上がる。
「なら体に聞いてみないとね」
「そうだね。しょうがないよ」
「おい待て何する気だっ!?近づくんじゃねえ!やめっーーー」
ギランッ。
二夕見が投げたフォークが壁に突き刺さり、グラグラ揺れている。
「あんまり動かない方がいいわよ。危ないから」
「僕もこういうの慣れてないから、早く吐いた方が楽だよ」
ひいいいいいいいっ!
逃げ出そうとした俺の逃げ場をさっと塞ぐ。
「優しい子!こんなことしない子がタイプ!」
「ダアンッ!」
今度はフォークが耳の横に突き刺さる。
「それも許されないわね。ちゃんと私が納得いく答えじゃないと私、どうなるか知らないわよ?」
ふふふ。などと微笑んでいる。
白銀はピッチャーを持ち上げて近づいてくる。
「さあどのくらいでしゃべる気になるかな〜」
「やめっ!?やめろおおおおおお〜!?」
数分後。
「ガボゴボゴボゴボボッ」
俺は口に水を押し込まれ、拷問されていた。
「あんた早くしゃべんないときついわよー?」
口に押し込まれていたピッチャーが離される。
「ゲホッゴホッ!?ガハッ!!喋れるかあ!この状態でどうやって話すんだよ!?て
いうか殺す気か!?やっていいこととダメなことの違いもわかんねえのーーー」
「ダアンッ!」
今度は首のすぐ横の壁に、またフォークが刺さる。俺の体の周りは、もう壁に刺さったフォークとナイフだらけで、洋服ごとしっかりとめられ逃げられないようになっている。
「一ノ瀬くん。まだ足りないんだ?」
「分かったー!分かりました!言う!言います!俺のタイプの女の子!言うから!も
うやめて!やめてください!まじで!勘弁してください!」
「やっと言う気になったわね。手間取らせてくれちゃって」
「でもちょっと怖いな。聞きたいような聞きたくないような」
などと自分たちが今の今までなにをしていたかなど忘れたかのように乙女のようにソワソワしだす。
「そ、それで?ど、どういう女の子がタイプ?」
「ゴクリっ」
「まあ、好みとかあんまりねえけど、強いていえば、面白い女が好きだ。それと、よく食べる子」
ポリポリ。ちっくしょう言っちまった〜!こいつらぜってえ許さねえからなあ!必ず仕返しして半泣きにさせてやる!!
「「えっ!?」」
「「それって!?」」
2人して頬を赤く染めてソワソワしだす。
んだこいつら急に。などと俺が復讐に燃えていると、奥から偉そうな方がやってきた。
「君たち。高校生?何があったのか知らないけど、こんなびしょびしょにフロア汚してくれたね。フォークとナイフもこんなにボロボロにして、弁償してくれるんだよね?」
今日一怖い笑顔で優しく告げる恐らくこの店のオーナーさん。
「「こいつ(この人)が払います」」
2人して瞬時に俺を売る。
「てめえらあ!!」
そしてその後事務所まで連れていかれ、正座させられこっぴどく叱られた俺たちは、親と先生を呼ばれそうなところをすんでのところで回避した。しかししっかり弁償してもらうことになったのだが。
「お金ねえ」
財布には今日の飯代以上の金は入っていなかった。
「う、嘘でしょ?私もゲーム買ったばっかりでら今飲み物1杯くらいしかのお金しかないんだけど……」
「そんなこと言える空気じゃないよお!親呼ばれちゃうよ!?」
「親ならまだしも河瀬先生なら終わりよ!」
「「どうするの!?」」
などと、ひそひそしていると。
「お金、ないんだ?」
聞こえていたようでオーナーがまたにっこり微笑む。
「「「……」」」
というわけで俺たちは制服に着替えさせられ、厨房で3人仲良く皿洗いをさせられていた。
「おらおせえぞ!もっとちゃっちゃと洗え!」
「「「はいいっ!!」」」
「おめえらまじで覚えとけよ!?」
「元はと言えばあんたがさっさと言わないからあんたが悪いのよ!」
「そうだよ!君が変に意地張るからでしょ!」
「いいや!お前ら今日はずっと空気悪いし、俺に当たってくるし!全部お前らが悪いね!」
「「それも全部あんた(君)のせいよ(せいだよ)!」」
「喋ってねえで手動かせ!」
「「「はいっ!」」」
「でも良いこと聞いちゃったかも」
うふふっとなぜか嬉しそうな二夕見。
「僕もなんだか全然苦じゃないやっ」
あははっとこちらも嬉しそう。
「なんだお前ら気持ちわりぃ」
「「別にー?」」
ハモったかと思えばまた睨み合う。
「ゴシゴシゴシゴシゴシゴシッ!」
そして今度は皿洗いの競争が始まる。
「うんこ行ってきまーす」
「てめえは何回トイレ行くんだ!?」
「パクパクパクッ」
バレないと思ったのか後ろの料理に手を伸ばしつまみ食いする二夕見。
「だからつまみ食いするなって言ってんだろうが!」
「パリンパリンパリンッ」
白銀はすごい勢いで次から次はとお皿を割っていく。
「だから割すぎだろ!?お前ら一体なんなんだまじで!?」
「「「すいません!!」」」
結局夕方まで洗い物させられ、その日は帰った。この3人では二度と出かけないと誓った。




