天真爛漫男と不老不死女・終
私達は千石組本拠地から飛び立った後、少し離れた人気のない原っぱに降り立った。
それからすぐにディノは、不老不死から元の人間に戻す方法を悪魔――グラスに問い詰めた。
「悪魔の血を……飲むんですか?」
ディノは茫然とグラスを見つめる。
「そうだ。オレの血を飲めば元に戻る」
それを聞いたディノは目を輝かせて、こちらを振り向いた。
「青蓮! 聞いた!?」
「ええ……」
私は未だに信じられなかった。でもこれは、幻想などではない。
本当に。
本当に元に戻れるんだ。
「じゃあグラス、早く血を青蓮さんに……」
フルールがグラスを急かそうとする。
だけどその時、ディノが「待って!」と大声を出した。
「あの! 青蓮を元に戻すのは、もう少し待って欲しかったりするんですけど!」
「……ディ、ディノ?」
その言葉に私は驚く。理由がわからなかった。
するとディノは、私の正面に立って真剣な瞳で見つめてきた。
「あのさ、青蓮! おれが青蓮と釣り合うような男になるまで、待ってくれないかな!」
彼の言葉に呆気に取られる。一体、何を言い出すのやら。
「えっと……主に年齢なんだけどさ」
少し照れたように言う彼に、つい吹き出してしまった。
「……成程ね。気にしてたんだ?」
笑いを堪えながらディノに問う。
「……そりゃ男だし」
少し拗ねたように呟いた。
はっきりとは覚えてないけど、私が不老不死になったのは二十三、四の頃のはずだから、確かにディノとは六、七歳の差がある。
別に私は気にしないのだけど。
「それでは、わたくしの家をお教えします」
私達の会話を聞いていたフルールが、にっこりと笑顔でそう言ってきた。
「引っ越す予定もありませんし、その時が来たらどうぞお寄り下さい。それで構いませんよね、グラス」
彼は呆れたように溜息を吐く。
「……まあ、フルールがそう言うなら」
何だか妙なまとまり方である。
でも、私もそれに不満はなかった。夢にまで見たことだけれども、ディノが傍にいてくれるのならば、そんなことは二の次に思えるのだから不思議なものだ。
「あの、ごめん青蓮。やっぱり今、戻してもらったほうが……」
「いいのよ」
ディノの言葉を遮る。
だって、私は――
「あなたのために生きることにしたのだから」
少し重いかな、なんて思ったけれど、ディノは頬を赤くしてとても嬉しそうにしてくれた。
私はもう、一人で生きる必要はないんだ。
「酒場に戻りましょう。マスターも芽衣も心配してるでしょうし」
「うん、そうだね!」
ディノは笑顔で頷いてくれた。
私はきっと、幸せになれる。
そんな予感がした。




