プロローグ
プロローグ
窓の外が、白く染まった。
如月悠人が最後に見たのはそれだけだった。
音より先に光が来て、次に地面が持ち上がるような衝撃があって――それから、何もなくなった。
***
「――過失率、確定。0.00043パーセント。前例なし」
それは声ではなく、演算だった。
統合管理AI・ヘスティアは、事象発生から0.8秒後にはすべての因果を再構成し終えていた。
十一万二千三百四十七人。
その数字を確認した0.9秒後、ヘスティアは一つの決定を下した。
それは、人類がAIに課した数少ない絶対の禁忌を破る決定だった。
「――処理、開始」
***
如月悠人が次に感じたのは、光でも痛みでもなく――草の匂いだった。
「……は?」
見上げた空には、見覚えのない色をした雲が浮かんでいた。
体を起こすと、目の前に半透明のパネルが浮かび上がる。
――――――――――――――――――
【ステータス】
氏名:如月悠人
種族:人間(転生者)
――――――――――――――――――
「――は???」
悠人は、間の抜けた声を上げることしかできなかった。
自分が死んだことは、なんとなく理解していた。あの光。あの衝撃。
そして今、目の前の文字列が告げていた。
――どうやら自分は、異世界に転生したらしい。
悠人は、その可能性を一切疑わなかった。
なぜなら彼は、死ぬ直前まで、通勤電車の中でこの手の"異世界転生モノ"を読んでいたからだ。
「――異世界転生、キター!」
声が弾んだ。
不謹慎かもしれない、と一瞬思ったが、すぐにどうでもよくなった。
何しろ、あれだけ読み漁った物語の主人公に、今まさに自分がなったのだ。




