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3.心変わりしたとしても

 ルイから聞かされたミケットの縁談話が、頭から離れなかった。


 何が僕を突き動かしたのかは分からない。


 無言で立ち去った日以来、途絶えた関係を修復するため、再び僕はミケットに愛を囁いた。


 「この間は、ごめんなさい」


 ミケットはそう言ってくれたが、次第に連絡が取れなくなり、自然と関係が解消された。


 その後、何度か夜会で顔を合わせたが、軽い挨拶を交わすだけだ。


 でも、僕は見逃さなかった。


 会う度に、ミケットの瞳に魔法……いや、恋の炎が灯るのを。


 ◇


 「百戦錬磨のケビンがそう感じたなら、まだ脈があるかもしれないよ!」


 ルイに背中を押され、ラキーユ伯爵家に縁談の申し込みをした。


 良い印象を持ってもらうため、とびっきりの笑顔の肖像画を送った。


 「ラキーユ伯爵家からまだ返事は来ないのか?」


 日が経つ毎に、苛立ちながら使用人に尋ねたが、答えは決まって同じだった。


 「ケビン様、返事は来ておりませんが……」


 そうしてただ時間だけが過ぎて行った。


 「ケビン! 大変だ! ミケット嬢がレイモン・タイヨ侯爵と婚約したらしいよ!」


 「えっ?」


 何か信じていたものが、ガラガラと崩れる音がした……。


 ◇


 今日も、通りを歩いてエマの元へ急ぐ。


 仕事が忙しいわけではないが、最近は足が遠のいている。


 「ケビン様……私は多くは望みません。お側に置いて頂ければ、それだけで幸せですわ」


 (初めからエマを妾に、正妻を貴族にと考えてはいたが……何だろう? このモヤモヤした感情は……)


 言葉通りエマは多くを望まず、妾という日陰の場所を望んでいるだけだ。


 僕もそう望んでいたはずなのに……なぜかパズルのピースが合うのを拒んでいる気持ちだ。


 その時だった。


 「ミケットの婚約者……タイヨ侯爵の馬車か?」


 侯爵家の爵位に相応しい、豪華で立派な馬車だ。


 タイヨ侯爵は、令嬢からの人気は高いとは言えないが、有能で元老院からも一目置かれている。


 「確か、皇室騎士団の団長の座が決まっていると聞いたな」


 馬車がゆっくりとすれ違う。


 咄嗟に馬車の窓を見たが、ミケットの姿は見えない。


 だけど、笑顔に溢れたタイヨ侯爵の横顔は、ハッキリと見えた。


 「楽しそうだな……ミケットと一緒なのか?」


 たぶんそうだろう。


 馬車の向かう先は、結婚を夢見る令嬢たちが憧れる大聖堂だ。


 「ミケット……」


 僕は大切な愛を間違えたのだろうか。


 アハハハハ!


 通りの人が驚いて、僕を避けている。

 

(違う……ただ心変わりしただけ……だたそれだけさ)


 fin

この作品は、「それぞれの恋」シリーズの一編です。 以下の順で読むと、登場人物たちの心情やすれ違いをより深く味わって頂けます。


・ミケット・ラキーユ伯爵令嬢の不条理な初恋


・ケビン・シェロー伯爵の気まぐれな恋


・ルイ・ワイス男爵のほろ苦い恋


※ 2025年7月には、レナ・ジュラン子爵令嬢の視点から描かれる物語も公開予定です。

 7月8日(火)公開予定!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

物語のどこかで心に残る場面がありましたら、ひと言だけでも感想やリアクションをいただけますと、とても励みになります。

感想へのお返事は控えさせて頂きますが、大切に読ませていただきます。

よろしくお願いします。

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