第1章 憑依
「よし、それでは今日は俺が傭兵時代に使っていた技をお前達に教える」
「お!2つ目の技を教えてもらえるのか!」
「前回の天歩は凄い実用的だったから良かったしなんだろ」
「今日教える技の名前は震残といって、体全体を高速で震わせて相手に自分の残像を見せる技だ。応用として、敵の攻撃時に発動させ避けたり、自分が攻撃する時に発動させ、相手に次の動作の予測をさせない、と色々ある」
「震残?」
「一度手本を見せる」
そう言ってヴァイスは体をゆっくりと左右に振り、やがて速度が上がっていきぶれ始めた。
「とまぁこんな感じだ、身体強化で上半身を素早く左右に揺らせば相手からはぶれているように
見える、しかしこの技は1つだけ難点がある、それは」
「うぷっ」
早速試しにカイトがやると、最初はなんともなかったが、やっていくうちに吐き気を催し、地面に倒れた。
「このように、左右に体全体を高速で動かす事によって、同時に脳も揺れるため、使い過ぎると吐き気や、頭痛がする」
「早とちりするからそうなるのよカイト」
「最初は体の動かし方を慣れた後、速度を上げていき、最終的には自分が使おうと思った瞬間にはトップスピードになれば習得と言えるだろう」
「うぅ、、気持ち悪りぃ、、」
「大丈夫か?」
「はい、、次からは最初に難点をうぷっ、、」
「お前は闘気が使えるから、闘気を頭の中に纏わせるイメージで纏わせれば、吐き気や頭痛も和らぐはずだ」
「、、うっす」
ブゥゥゥンッ
「さすがだな、アルベルト」
「先生の教えが良かっただけです」
「もう出来るようになったのかよ」
「これくらい造作も無い」
「うぜぇ〜なちくしょ〜」
ブゥゥゥンッ
「やったねぇ」
次にロン、メルト、セニカと次々にクラスメイトが出来ていくなか、残りカイトだけとなっていた。
「おいおい〜しっかりしろようちのエース」
「本当に優勝したと思えないよね」
「ドゥフフフ、これでセニカたんは僕のもの」
「なんでだ、、まだ気持ち悪りぃ、、、うっ、、グハァッ!」
そのまま嘔吐したカイトだが、生徒全員がカイトを見た瞬間固まった。
「おいカイト、血が出てんぞ」
「カイト!どうしたの!?」
「大丈夫か?カイト」
「はぁ、、きゅうに、、どう、、し」
バタン
「お前達は引き続き練習だ、俺はカイトを医務室まで送ってくる」
ヴァイスはカイトを抱え、急いでラムカのいる医務室まで向かう。
「ラムカ先生!いるか!?」
「どうしたんだいそんなに慌てて」
「生徒が吐血して倒れた、急いで診てくれ」
「なんだって!?そこのベッドに寝かせな!」
カイトをベッドに寝かせ、ラムカがカイトの服を脱がせる。
「どこにも傷は見当たらない、熱はある」
ラムカは急いで氷魔法でカイトの全身を冷やす。
「ん?これは」
カイトの背中を見るとラゼッタと同じ色の痣ができていた。
「これは今朝来た女の子と同じ痣、、もしかしてこれが原因かい?」
「ラ、ラムカ先生!!いらっしゃいますかー!?」
「なんだい!?そんなに大きな声出して?」
「あ!う、うちの生徒が急に倒れまして、、」
「落ち着けバーダ」
「今は忙しいからそこのベッドに寝かせておきな」
「は、はい」
「落ち着け、手伝うからゆっくり降ろすぞ」
「ありがとうございますヴァイス先生」
「あぁ」
カイトの診終わった後、すぐさまもう1人の生徒のが倒れているベッドに向かう。
「この子は」
なんとベッドに倒れていたのはラゼッタであった。
「この子の方が熱も出てて酷いね」
首元にあった痣が頬にまで広がっている。
「私じゃどういった症状か見当もつかないよ」
「じゃあどうすれば」
「知り合いに頼んでみるから、あんた達はもう授業に戻ってな」
「わかった」
「ほ、ほんとうに大丈夫なんでしょうか?」
「いいから早く授業に戻んな!」
「ひぃ〜」
ヴァイスとバーダは医務室を後にした。
「さてと、、どうしたもんかね」
場所は変わりウルミスト学園内にて。
「そいじゃ今日も話を聞かせて貰えるか?」
そこは学園の明るいイメージとはかけ離れた暗い監獄の様な場所。鎖に繋がれた2人の罪人と机に向かい合って話しかけるのはウルミスト学園長、ノイド・ウルミストとヴェスミス教頭であった。
「ケッ、、お前達人間に話すことなんかねぇよ」
ホウケンに成りすましていた緑の魔族が口を開く。
「貴様、学園長に向かってその態度!どうしますか?殺しましょう」
「まぁまぁそうなんども慌てるでないヴェスミス」
「すみません」
「何度同じ質問しても無駄だ」
次にゴウケンになりすましていた紫の魔族も口を揃える。
「おぬし達を殺してもいいが、ルグドラが破壊されてもなお生き残ってるという事は何かしらの方法で生き残れるのだろ?それこそうちの生徒と先生にしてみせた憑依みたいなもんで」
「、、、、」
「何か喋ったらどうだ?どうします?殺しましょうか?」
「落ち着きなさい、まだ殺さんよ」
「それにしても学園の長が学園内にあるこの様な場で監禁をするとは中々に笑えるな」
「こんなもんが学園内にあるってだけでテメェの首は危ねぇんじゃねぇのか?」
「おやおや、心配してくれとるのかね?まぁ安心せえ、バレることは万に一つも有り得んよ、それより私の質問の答えがまだ聞けてないのだが?」
「目的が何かだろぉ?教える訳ねぇだろ?バカか?」
「まぁそういう訳で口を割らんのだ、任せていいか?」
暗闇に向かって話しかけるノイド。そこから現れたのは少し紫がかった白色の肌をした男であった。
「なっ!おめぇ魔族だな!?」
「落ち着け、匂いが我らとは少し違う」
「よく気がついたな、俺は魔族と人間のハーフだ」
「尻切れか」
「久しぶりにその言葉聞いたな!そうそう!お前達と違って俺には尻尾がない、そこの緑とは違う理由でな」
「なっ!テメェ俺の尻尾の短さバカにしやがったな!!」
「なんだよ?短小の奴に短小って言って悪いのかよ?」
「んのやろぉ、今すぐにでもテメェのその舌を引きちぎってやりてぇぜ」
「まぁまぁ冗談はそこまでしておいて、頼んでよいか?」
「ファミルの頼みだから仕方なくだぞ?」
「貴様!学園長に向かってその態度!殺しましょうか?」
「やめておきなさい、相手は三賢王カイウスだぞ?」
「んなっ、、なぜ三賢王がこの様な場所に!?」
「私がファミルに頼んだのだよ」
「んじゃあ始めるぞー」
そう言って、三賢王の1人であるカイウスは紫の魔族の額に指を当てる。
「ほうほう、なるほどなるほど」
「何か分かったのか?」
「もうちっと待ってくれ」
そして3分後…
「よし」
「どうだ?」
「こいつらの目的はわかんなかったわ」
「お主でも分からなかったのか?」
「あぁ、とても強い呪力で封印されていて感知出来なかった」
「そうか」
「でも他の情報は分かったぞ」
「何が分かったんだ?」
「こっから先は料金が発生するけど〜?」
「ファミルがツケてくれるだろう」
「しゃーねーな、とりあえずこいつらには仲間がいる事が分かったのと、こいつらの依り代候補が誰かってのが分かった」
「仲間もおるのか、それより依り代の候補が気になるな」
「仲間の人数は定かじゃないが2人1組で各国に散らばっているのはわかった」
「それと依り代候補はラゼッタとカイトって生徒だ、憑依の準備は依り代の体に魔素を取り込ませて、その後拒絶反応でじっくりと体を蝕んだ後に弱ったところを、後はコイツらが死んで魂だけの存在になってから依り代に入れば終わりだ」
「成る程では余計殺しては」
ズブッ
2体の魔族の胸から腕が突き抜ける。
「グハっ」
「グッ」
「ん?」
「殺せば憑依が完遂で確かか?」
「あ、あぁ、、ぐっ、、随分と、遅かったな」
「ヴェスミス!何をしている!」
『テレポート』
「させるか」
バフンッ
「くっ、、まさか三賢王を呼ぶとは誤算だった」
「おいおい〜いきなり裏切りか〜?」
ノイドが魔力を解き放つ。
「元闘神である貴方に刃向かう日がまさか来るとは思いもしませんでしたよ」
「カイウス、学園に被害が出ぬ様結界を張っておいてくれ」
「はいよ〜」
パチン
「手は出すなよ」
「金を払ってくれるなら出してやるけどな」
「どういう事か説明してもらおうか、ヴェスミス!」
ノイドの体が徐々に膨れ、やがてその体は服を突き破り、老年の体とは思えない程の筋肉が姿を現した。
『剛破掌』
ノイドが目に見えない速度でヴェスミスの目の前まで移動し、身長が180あるヴェスミスの体の半分大の手の平が彼の目の前に飛んでくる。
『守護精霊よ、我が盾となれ』
ヴェスミスの前にノイドの体を更に凌駕する全身を黄金で纏った精霊がノイドのに立ちはだかる。
「邪魔だ」
ズパァンッ!!!!
まるで横綱力士が子供を吹っ飛ばすよりも軽く、目の前の精霊をカイウスが張った結界まで吹き飛ばした。
ピキキッ
「おいおい、もうちょっと手加減するか、地面に叩きつけ潰してくれよな!自分で壊したら意味がないだろ」
「悪い悪い、久しぶりで加減が分からんかったわ」
「私の守護精霊をあんな簡単に吹き飛ばしただと!?」
「お?言ってなかったか?」
「何をでしょうか、、」
ノイドがゆっくりとヴェスミスに近づく。
「学園の外にある有名な平らな山」
「切り株山がどうしたんです?」
「あの山平らにしたのワシ」
「え、、」
再びヴェスミス目の前で止まる。
「お前とは長い付き合いだ、悲しいが半殺しで済ましておいてやる」
ズドォン!!!
「がはっ!」
口から血を吹き出すヴェスミス。
「はぁ、はぁ、、これまでか」
カリッ
「なっ!ヴェス!!」
「貴方達の様な人間にあのお方の苦しみや、理想は到底理解できん、、私は先に逝って貴方様の行く末を見させて頂くとしよう」
バタン
「自決か、それをする程にあんたを裏切って忠誠を尽くしている人物がいるってのか」
「、、、」
「これから荒れ出すぞ、この世界は」
「最愛の妻と、息子夫婦を同時に失ってから、此奴は人が変わりよった、あんなに心が優しかった彼奴の心を一体誰が漬け込みここまでするよう至らしめたのか、、」
「そろそろいかないとまずいぞ」
「あぁ、分かっておる」
「カイトとラゼッタって奴らの魔力を特定した、飛ぶぞ」
『テレポート』
「おや?どうして先輩が?」
「お、ラムカか、というかその先輩と言うのはもうこの歳にして言うものじゃないぞ」
「そうでしたねぇ、ついつい忘れてしまて、、」
ラムカはいつものような不機嫌そうなではなく、柔らかい表情になりノイドに接する。
「それよりその2人の子は無事なのか?」
「誰だい?あんたは」
「説明は後でいいだろ、取り敢えず様子を見せてくれ」
「なっ、勝手にその子達に触ると、、」
「魔素の侵入が早まっているな、痣も広がっている。男の方は体が丈夫か知らないけど、無意識でなんとか耐えてるな」
「ほほっ」
「なに笑ってるんですか?子供達が危ないんですよ?」
「すまんな、この子らしいと思ってな」
「まるで昔の先輩ですね」
「もういっそタメ口でいいのに」
「ダメですよ、どれだけ年をとっても先輩は先輩なんですから」
「、、、」
「どうしたんですか?」
「ヴェスミスが裏切ってな、自決しよった」
「ヴェスが!?」
「お主とも付き合いが長がかったろう?」
「はい、、一応2年後輩で、よく治癒魔法を教えていました」
「彼奴を影で動かしている奴がおる、其奴を必ず見つけてワシが殺す」
「気をつけてください、体も昔みたいに若いわけではないのですから」
「あぁ」
「それとこの前の検診、また来てませんでしたね?どういう事ですか?」
「そ、それは、ちぃーとばかし用があって、、」
「いつもそう言って言い訳する所、変わってませんわね」
「それでどうだカイウス、何か分かったのか?」
ラムカから逃げるように、カイウスに話を振るノイド。
「もう魂が入ってしまってるな」
「どうすればいいのだ」
「ラゼッタとカイトの魂はまだ残っている、今は多分魂同士で争いあっていて、どちらかの魂が消えれば死ぬ事になる」
「無理やり魔族の魂を引き剥がすことは可能か?」
「そんな魔法を使える奴は恐らくファミルぐらいしかいない」
「ではエルグランドへ向かうぞ」
「待て待て、エルグランドは誰も立ち寄るが出来ないんだぞ」
「安心せえ、あの国はワシに一つ大きな借りがある」
「でも場所わかんのか?」
「あぁ、昔ファミルに教えてもらった事がある。取り敢えず、この子達をワシの部屋にもう一度連れて帰るぞ、それではラムカ!今度はちゃんと検診いくからあんしんせい」バシュン
「あ、ちょっとまっ、、まったく」
「確かここにー、、あったぞ」
ノイドは自分のつくえのあさり、一枚の紙を取り出した。
「大陸地図だな」
「確か、ワシが聞いた話だとー、、、サンリカとルマリアの間でー、、えーと、そうじゃ!タミネイトの瘴気の森のど真ん中といってたな!」
「タミネイトって、あの大昔から濃い瘴気で溢れかえってるってって言われているあのタミネイトか?」
「あぁ、確かファミルがそう言っておった」
「あんな所だれも住めっこねぇだろ、、冗談じゃねーのか?それとも歳で記憶がごっちゃになったとか?」
「誰も近づけないから、未だかつて誰も足を踏み入れた事がないと言われておるのかもな」
「そうだけど、俺らが入ると1分ですら体がもたねぇぞ」
「まぁどうにかするわい、取り敢えずテレポート頼むぞ」
「絶対大金請求してやるからな」
『テレポート』
ラゼッタとカイトを持ち上げノイドと共にタミネイトと呼ばれる濃い瘴気が辺り一面に充満している事で誰も近づく事が出来ず、国が自然災害として立ち入り禁止エリアに指定した所にテレポートした。
「瘴気の森は確かここを道なりに歩いて1時間のとこじゃ」
「1分ももたねぇのにどうやって行くんだよ」
「先ずは生徒の安全の確保じゃ、お主確か空間収納が使えたじゃろ?」
「なんで知ってんだよ」
「ファミルからは色々と聞いておる」
「あの口軽女め、、請求書絶対にぼってやるからな」
文句を言いながらカイトとラゼッタを空間収納で安全な場所に移動させる。
「それとワシにマーカーを2つ付けておけ」
「何すんだよ」
「ワシが目的地までひとっ飛びしてくる、お主はワシがマーカーを一つ消したらテレポートで飛んでこい」
「なるほど、んじゃあ俺はマーカーが消えるまでここで待ってればいいんだな?」
「そうじゃ」
『マーキングニードル』
トスッ トスッ
「んじゃあ待ってるぜ」
「それじゃあ行くかのぉ」
ノイドは足に魔力を集中させ、地面を蹴る。
ズドォン!!
「無茶苦茶だな相変わらず」
空中で目的の森を探す。
(お、あったあった)
『天歩』
バシュンッ!!
「あ、そういえば俺瘴気を防ぐ魔法この前覚えたばっかだったんだ、、まぁいいか」
誰もいない場所で1人呟くカイウスであった。




