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第1章 修学旅行最終日


「んんっ、、いてて」


(ん?ここは?、、手が動かないぞ)


目線を下にやると、誰かがカイトの腕で寝ている。


(セニカ、、あれ、そういえば、何でこんなとこにいるんだ)


あたりを見回すと見るからに病室だった。再び枕に頭を置き、ゆっくりと状況を整理する。


自分は確かにケニーと先程まで戦っていた、その前の事も鮮明に覚えている。


(確か、、あ、そうだ、氷漬けにされて、、、っ!)


氷漬けにされた後の記憶をゆっくりと辿って行くと胸を刺された友達を思い出す。


ゆっくりとセニカを起こさないように手を退けると…


「いたっ!」


「んぅ、、あれ?カイト起きたの!?」


「悪い!今はそれどころじゃない!」


病室を出て、すぐさま横の病室に入る。


「違う、こっちじゃねぇ!」


次から次へと病室を駆け巡っていくが、どの病室にも自分達が助けた生徒達やルフトが居たが、カイトが今心配なのはただ1人だった。駆け巡っている内に先生と出くわす。


「カイト君!?病室から出ちゃダメじゃない!」


「ジル先生!アルベルトは無事ですか!?」


「彼なら今まだ集中治療中よ」


「、、そうですか、分かりました」


「待ちなさい、今回あなたがしでかした件分かってるよね?」


「はい、、」


「友達を思う気持ちは先生にも分かるし、先生がカイト君の年齢だったら先生は行かなかったとは断言できないけど、それでも他の生徒を巻き込む事は許されないわ」


「すいません」


「そんな事を言っても、アルベルト君は治らないわ」


そう言って、ジルは静かに今のカイトに1番突き刺さる言葉を言い残し何処かへと行った。ジルの言った言葉は教育者として相応しい相応しくないは別として、カイトを本気で反省させるには1番分からせられる言葉であったのには間違いなかった。


いくら自分たちが大会で実績を残したとしても、相手の情報を何も掴めていない状態で1人ではなく、他の生徒を巻き込んで勝手に行動して危険に晒したのは他でもなくカイトの責任であった。


(考えが甘かったな、、みんなに謝らないといけないな)


病室に戻ろうとすると病室の前でセニカが立っていた。


「先生に怒られたの?」


「うん、、」


「わたしは助けてもらったからカイトの事を悪いとは思ってないよ?」


「でも危険に晒したのは事実だ、アルベルトだって、、」


「アルベルトもラゼッタもルフトもみんな自分からカイトについて来たんでしょ?あの中で誰1人として嫌々でカイトについて来た人はいないよ」


「だってそれは俺も含めセニカをみんな大事に思ってるからだよ、俺を信用しての話じゃないし」


「で、でも実際先生達よりも早く助けたじゃない!わたしは嬉しっ!」


セニカの励ましを全て躱し、最後になんとか絞り出した言葉を全て話終わる前にカイトは見ていられなくなり、セニカを抱擁する。


「頑張って励ましてくれるのは嬉しいけど、そんな無理されたら余計罪悪感に押しつぶされるよ」


「ごめん、、わたしが拐われたりなんか」


自身が拐われたりした所為で、みんなを危険に晒した罪悪感をずっと抱えていたであろうセニカの言葉をカイトは遮る。


「それだけは言わないでくれ、決して自分の所為にだけはするな、お願いだ」


「言い忘れていたけど、兎に角お前が無事で何よりだ」


「うん、、ありがとう、助けに来てくれて」


セニカを逆に慰めた後、昼まで病室で待機する。手の具合を聞かれ、問題なく治っているの動かして見せ、帰宅していいとの許可が下りた。


「ありがとうございました」


散々考えに考え、自分の何がいけなかったのか、何処が間違ってたか、ひたすら今も尚考え続けるカイト。


別荘に着くと生徒が誰1人もいなかった。


(こんな広い空間に1人か、、余計に萎えるわ〜)


リビングのソファで座っていてもリラックス出来ないので風呂に入るカイト。


(そういえばひとりでゆっくりするって久しぶりだな、学園に入ってからはひとりの時間はずっと修行してたし、いつも誰かが周りにいたしな〜)


(そう考えると、周りに誰もいなかった前の人生と180度変わったなぁ、元気かなぁすず、もう30歳くらいなんだろうなアイツも、フフッ、すずが30歳かぁ、想像できないな、わがまま治ってんのかなぁ、それより30だしもう結婚して子供とかいるんじゃないのか!?甥っ子すずに似て可愛いだろうなぁ)


ぽかぁ〜


「やば、のぼせる前に出ないと」


大浴場から上がる。


「あ、そういえばあれまだ残ってんのかな」


『テレポート』


場所は倉庫の下にあった地下施設。


「まだこの場所はバレてないのか」


奥へと進み魔鉱石の目の前で止まる。


「なんとかこれを持ち帰りたい」


なぜかカイトはこの魔鉱石を見てから少しばかり惹かれる部分があった。勿論カイトにはこれが世界で2番目に誇る強度のある魔鉱石とは知らない。


「光ってないな、魔力も吸われないし、よし!」


『ポケットルーム』


使ったのは無属性中級魔法の空間収納術だ。空間収納術といっても無限に物を収納できるわけではなく、収納できる個数と大きさが決まっている。


今のカイトだと目の前にある大型テレビ大の魔石が限界の大きさであり、2つまでなら収納できる。


「てかこれ一応証拠品だけど持って帰ってー、大丈夫だよな!」


すぐさまテレポートで帰るカイト。そしてみんなの帰りを待つ。やがて時間は夕方になると…


ガチャ


「んむぅ?、、おぉ、ちょっと寝てしまった、帰って来たのか?」


バルコニーにあるハンモックから降りるカイト。


「フゥ〜!楽しかったねぇ〜!」

「イテテ、結構日焼けしちゃったよ」

「耳にまだ違和感あるよ、ロン風魔法で中の水吸い取ってくれよ」

「汚いよぉ」


「お〜っす」


「おぉ!カイト!もう病室から出てきて平気なのか!?」


「うん、あんまり大した傷じゃないしな、それよりみんなどこ行ってたんだ?」


「ん?この格好見て分からない?」


「ま、まさか、、海に行ったのか!?」


「せいかーい!」


「あぁあああ、、行きたかったー俺もー」


「取り敢えずご飯の準備をするわよ、、カイト君も、いいね?」


「、、はい」


女子グループと男子グループに分かれ、夕食の支度をする。


「なぁカイト、アルベルトの調子はどうなんだ?大丈夫か?」


「今集中治療らしい」


「にしてもよく大人の犯罪者集団相手からセニカ達を救出出来たな、今じゃ他のクラスじゃうちの評判だだ上がりだぜ?」


「おいメルト、、あんま無神経な事言うんじゃねーよ、カイトや俺だって大変だったんだぞ」


マシューが無神経にカイトに喋りかけるメルトを注意する。


「俺はもう大丈夫だよ、メルトもそんな申し訳なさそうな顔すんな、折角俺が優勝して勝ち取った旅行なんだ、嫌な事なんか忘れるくらいいい思い出にしようぜ」



「いいなぁ、私もセニカみたいに拐われたら助けてくれる王子様欲しいなぁ」


「いつかソロカにもそんな人が来るよ」


「それにしても見てこの野菜」


「うわ〜、誰が切ったんだろうね〜、下手くそ〜」


「不甲斐ない」


「ああいうのは気にしちゃ負けだぞグレイル」


「オルグは気にし過ぎてこんなに細く切ってるんだけどね、アッハハ!」


「おい!あんま見せんなよ恥ずかしい」


(よかった〜、、てっきりクラス全体が暗い雰囲気になってると思ってたけど、この世界じゃああんなのは慣れっこなのか?いやいやだとしても普通に誘拐された次の日に海行くか?まぁ先生が付きっ切りだから心配はないのは確かだけど)


食事も食べ終わり、最後の別荘での泊まりに全員の顔が少し暗いなる。


「来年もあるのかな、、」


「その辺は大丈夫だと思う、俺がきっちり学園長に言っておいたから俺らの代からこれからずっとだ、ただ優勝しない限りここには泊まれないけどな」


「なんか色々あったな〜生徒は襲われるし、その元凶があのサーカス集団だったなんて誰も思っても見なかったよな」


「マシューとニューロはどこで捕まったんだ?」


「俺はトイレに行っている最中」


「僕はツリーアイランド限定魔導少女ジェリカの模型を買っていた途中に」


「大変だったよなお前達も」


「みんなもうそろそろ寝なさいよ〜」


「「「は〜い」」」


「実際どれだけ大変だったんだ?」


「あ、それあたしも聞きたい」


「ん〜、どこから話そうかな」


こうしてカイトとセニカは事件の話を次の日の早朝まで喋らされる事になったのであった。



「とまぁこんな感じで、気がついたら病室だったんだ」


「「「……」」」


「最後まで聞いてたの結局わたしだけだったね」


「こいつら、、人に話させるだけさせやがって」


「ふぁ〜、わたしも眠たくなってきたな」


「少しだけしか寝れないけど取り敢えず寝るかー」


「場所が…」


「おいロン、もうちょっと右いけよ」


「んぅ〜」


ゴロン


「ちょ、お前!」


カイトの顔に腕が乗っかる。


「あ〜クソッ、もうソファで寝るよ」


「どうしよ、どこで寝たら」


「こっちに来いよ、少しスペースあるぞ」


「で、でも、流石に距離が近過ぎて…」


「だ、大丈夫だよ!変な気を起こすわけでもないからほら座れよ」


「うぅん」


「その返事はどっち?」


ポスッ


仕方なく掛け布団を共有し、2人用のソファに2人で座って寝る。


(ん〜座りながら寝た事ないし、寝にくいな〜)


(寝息うるさくないかなわたし)


少し時間が経ち、眠りに落ちると2人は互いに寄りかかった状態になり、最終的にはカイトが片足をソファの外側に置いた状態で、セニカは内側でカイトに肘枕をしてもらった状態で朝を迎える。


ひそひそひそ


「おいやっぱりこの2人」


「ぐぬぬ、僕のセニカたんとこんなにイチャラブしおって〜おのれ〜」


「おいニューロ静かにしろって2人共起きるだろ」


「ん〜、、」


「おいまずい!カイトが起きるぞ!」


「手が、、痺れ 、、、」


(うぉおおおおお!!何でだ?座った状態で寝てたくね?俺?)


(にしてもちかいすぎるってえええええ!)


「んっ」


(んっ、ってマジでこの距離はマジで天使だって!うぉおおマジでやべー!)


「んぅ」


パチパチ


「ん?」


カイトと目が合うセニカ。あたりを見回し、次第にその表情は噴火寸前の火山のような色をしていた。すぐさま慌ててカイトはソファを降りる。


「悪りぃ、、正直俺も起きてから気付いたしワザとじゃないんだ」


「か、顔洗ってくるね!」


「お、おう」


顔を洗い、帰宅の準備をする。


「それじゃあみんな〜?荷物を纏めたら迎えの竜車に乗るわよ!」


ジルの指示で全員が竜車に乗る。勿論カイトは特等席に乗っている。


「ふぅ〜!いつ見ても良いものだな〜この島も」


やがて竜車は港に到着すると、1日目のタキシードで身を包んだ男と別の男性が立っていた。


「始めまして、この島の総合支配人、ラグー・エスピスと申します」


「島1番のお偉い様がどうして?」


「この度は私達の管理不足でお客様に危害が及んだ事、それについての謝罪が遅れてしまった事を深くお詫び申し上げます」


「確かにそちらの警備が行き届いてなかったのは事実ですがこちらも同じです、顔をお上げください」


「そう言って頂けると少し有り難いです」


そこからラグーと名乗る総合支配人の男は少し遠い所でジルと話をし始めた。


(多分あいつらの情報についてだろうな)


「これでしばしお別れだな」


「グルゥゥゥ」


「来年もまた会えるって!そんな悲しい声出すなよ」


カイトの顔に自分の顔を擦り付ける。少し地竜とじゃれ合っているとジルがラグーと話終わり船へと乗る。


「久しぶりっす先輩」


「おう坊主!」


軽く船員と挨拶をし、1番奥の部屋に自分の荷物を置きに行くと…


ガチャ


「、、、」


「なんだ?その顔は」


部屋にはアルベルトがいた。無心で彼に歩み寄り、抱擁をする。


「なっ、、貴様!俺にそんな趣味はない!離れろ!」


「よかった、、無事で、、てっきり、グスッ、、俺のせいで、、、死んだかと、、グスッ」


「、、ふん、貴様が俺の心配など10年早い」


「ばがやろぉ!こっちはクソほどしんばいしたんだぞ」


「俺は見ての通り大丈夫だ、それに誰もお前のせいになどしていない、ああなったのは全て自分の力不足だ、泣くなら俺の心配じゃなく、自分の弱さに泣け」


「取り敢えず何より無事でよかった」


「あぁ、だから離れてくれないか?誰かに見られる」ガチャ


「へ?」


「ん?セニカ?」


「アルベルト君?よかった〜!無事だったんだね!」


「あぁセニカも無事みたいだな」


「うん!にしてもなんでカイトは目が赤いの?」


「そ、そうか?ちょっと塩水の塩が目に入って〜」


「なんだその言い訳」


「あ、そうだ今から船の上でバーベキューするみたいだから2人も早くおいで!」


「おう、すぐ行く」


セニカが部屋から出て、再び2人になる。


「てか、よく胸を刺されて無事だったな」


「あぁ、多分だが意識してない内に闘気が軌道を逸らしたのだろ」


「なるほどな、闘気様様だよな」


「あぁ、にしてもあいつらの目的は結局なんだったんだ?」


「さぁ、でも攫った人間は全員ウルミストの生徒だったし、何かウルミストに因縁みたいなのがあったんじゃねー?」


「その線も十分にあり得る、もしくは生徒を攫って何か交渉でもしようとしたのか?」


「ただの金が欲しそうな奴らには見えなかったけどな、あ!そうだ!これ見せたかったんだけど」


そう言ってポケットルームから魔石を取り出した。


「これなんだと思う?」


「お前!これは!」


「ん!?なんだ?知ってんのか?」


「敵から盗んだのか?」


「あぁ!それでなんだ?これは?」


アルベルトはカイトに自信が盗んできた石の説明をする。


「へぇ〜、どうりで惹かれるわけだ俺が」


「返した方がいいだろ」


「いいや、これは俺のもんだ、あんな思いさせられたんだぞ?少しは報酬もあっていいだろー」


「やれやれ、お前と話していると疲れる、食事に行くぞ」


「うし、行くか」


こうしてカイト達の波乱万丈な修学旅行旅行は終わりを迎えたのであった。























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