#3 選択肢
「戦争に参加?」
現代日本生まれにとって縁遠く、関わることもないと心の何処かで思っていたような言葉だった。
「徴兵ってことです?」
「そう捉えて貰ってかまわぬ。敵かもしれぬものをわざわざ養うほど我々は優しくない。敵対者でないなら考えもするがな」
そりゃそうか、と翔賀は納得する。敵に塩を送るなんてのは美談に過ぎない。塩が猛毒になりうるなら話も変わっただろうが。
翔賀は現状を整理する。
良く分からないところに来て、歩いていたら捕まった。帰る場所など見当もつかず、もちろんのこと食料なんてあるはずもない。これがここまでのあらすじである。相も変わらず何を言っているのか分からない。…………できればわかりたくない。
とりあえず、出た結論は選択肢などないということである。
「わ、分かりました。そちらに従います」
「うむ。では、そちらの者に付いて行くがよい。縄も切ってやれ。着替えが終わり次第、そなたに命を下す。これよりそなたはこの私、斯波嘉達の指揮下に置かれた。よいな!」
「は、はいっ!!」
斯波嘉達と名乗った男の口調が分かりやすく変化する。背に負った重みを自分で再確認し、咀嚼しなおすような、そんな重みを感じる。
純粋なる軍隊であり、よくあるゲームなんてものではない。
正真正銘の『戦争』に翔賀は昂った神経が収まらない。
時は戦。油断が招くは血の狂宴。