#1 目を開けるとそこは歴史的な町でした
目を開けるとそこには物珍しい木造住宅が建っていた。
生まれも育ちも鉄筋コンクリートにあふれていた武田翔賀にとってこのような家は田舎や歴史の資料で見る程度である。更には道を歩く人の姿である。
(わ、和服だ!!!)
お祭りなどで女子が着ている…らしい服だ!
そう思い翔賀は自分の服を見る。
(…………)
圧倒的、洋服
噓であってほしいような圧倒的ジャージである。風情もクソもない。
(どうせ夢なら俺も和服着たかったなぁ……………。にしてもずいぶんはっきりした夢だな)
過去にタイムスリップでもしているなら面白味もあるが、そんな都合のいい主人公展開は実際に起こると非常に困る。現代日本に生まれた翔賀には大したサバイバル術は備わっているわけもない。大したコミュ力もない翔賀には死活問題である。
親に貰った名前の由来ほど翔賀は偉大ではないし、そうなる気も無い。只々、平々凡々とした生活を送りたい無気力男である。
(覚めねぇ)
どれだけ待っても、夢から覚める気配は全くない。翔賀は物見遊山に浮きすぎた服装で町に赴いた。奇妙一徹の視線をほどほどの身長いっぱいに浴びながら城下町を練り歩いて行く。
「おい!そこの者!」
突然、翔賀に声がかかる。如何にも歴史ものにいそうな衛兵である。
「貴様、どこのものだ!その妙な服はなんだ!」
そう言って銃刀法フル無視の刀を翔賀の眼前に突きつけた。