エピローグ音のない奇跡
エピローグ:音のない奇跡
それから数年が経った。
世界は静かに再生し、戦いの記憶は少しずつ物語になった。
英雄たちは伝説となり、彼らの名を知る者も少なくなっていった。
けれど、ある村にはこんな噂が残っていた。
「昔、この地に“世界を救った歌姫”がいた」と。
今、その村では、彼女――セレスが、日々を穏やかに過ごしていた。
白い花が咲く丘の上。
セレスは小さな木の椅子に腰掛けて、子どもたちの歌に耳を傾けていた。
「う〜ん……ちょっと音外れてるかも。そこは、こう――ね?」
そう言いながら、自分でも歌ってみる。
けれど。
「……あれ?」
声が、うまく出ない。
昔のように透き通った高音も、聴く者の心を震わせた歌も、もうどこにもなかった。
「セレス、声変わり……したのかも?」
子どもが首をかしげる。
「……え、うそ。わたし……声変わりしたの……?」
セレスが青ざめる。隣のルカが吹き出した。
「いや、普通逆でしょ。声変わりは男の子が……」
「ど、どゆこと!? えっ、じゃあ……え!? 歌えないの!? わたし一生、歌う側でいたかったのに……!」
「セレス、焦りすぎ。ほら、昔から“上手すぎた”んだよ。今くらいがちょうどいい」
クロウが笑いながら肩を叩いた。
「そ、そんなぁ……! あんなに世界を救ったのに……! わたし、これからどうすれば……!」
セレスは崩れ落ちるように膝をつく。
でも、その姿すら子どもたちは楽しげに笑っていた。
主人公が、木陰からそれを見つめていた。
優しい笑みを浮かべながら、小さく呟く。
「歌えなくても、君が“笑って”いれば、それで十分さ」
セレスが子どもに囲まれ、笑いながらじゃれあう姿は、どこまでも平和だった。
もしかしたら、あの奇跡の歌は――世界を救ったあと、そっと役目を終えたのかもしれない。
そして、いま響いているのは。
奇跡でも、伝説でもない。
ただ、“生きている者たち”が紡ぐ、日常の音――。
それこそが、本当の“歌”なのかもしれなかった。
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これにて――完結。
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補完話書こうと思います。すみません完結ってやって。ただ、補完話みてなくてもちゃんと繋がってます。話にちょっと付け足したいなと思った時に補完話追加します。前書きには補完話と追記しようと思います。みてくれる人はどれくらいいるのかわからないのですが、ただの自分の自己満足なのであんまり面白くはないと思いますが、それでもみてくれる人には敬意を。




