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デリーブで

マコトとイリスが村に戻るとまだ深夜ではあったが外に多くの大人達が集まっていた。

子供達が戻って来たことを聞き外に出てきたのだろうとマコトは思った。

各々が鍬や鎌といった思い思いの武器を持って何やら話をしていた。


「戻りました。」


イリスがその固まりに声をかけた。

するとその中にいた男がこちらに振り向き


「敵は来るのか?どうなった?」


その後も周りから口々に質問を二人にぶつけてきた。

どうやら戦う準備をしていたようだ。

家の方を見ると村から逃げる準備をしているのか荷物を台車に纏めている家もある。

イリスは周りを嗜めるように落ち着かせた。


「気持ちは分かりますけど落ち着いて下さい。敵は来ません。私達が追っ払いました。」

「本当か!?」


村人の誰かが叫んだ。何人もが確認するようにイリスに詰め寄った


「本当です。あいつらは何処かに逃げて行きました。」


何人もの男どもに詰め寄られてもイリスは動じる様子もなくしっかりと答えた。

その瞬間、何処からともなく歓喜の声が上がった。

それを合図に集団が歓喜の環になりイリスは感謝の握手責めにあっていた。


「俺は…………?」


その間マコトはイリスの後ろで様子をずっと眺めていたのだがどうやらヒーローになるチャンスを逃してしまったようだ。


「…………まあ、いいか。」


一瞬残念な思いを抱いたが目の前でヒーロー扱いを受けて苦笑いをしながらも村人からの感謝の言葉を真面目に受けているイリスを見ているとそんな気も何処かへぶっ飛んでしまった。


「そっちの方がイリスっぽい。」


あの森の中で見たのも彼女の一面ではあるがやはりイリスはこちらの方がいいと心から思った。


「マコト!」

「ん?」


集団の中心にいたイリスがやっと解放されたのかこちらに戻ってきた。

今までの夢中でした気が付かなかったが所々服が焦げていたり破けたりしていた。

しかし本人は全く気にしている様子もなく、


「さ。最後に村長に報告しよ。それでこの依頼は終了よ。」


いつも通りに声をかけてきた。


「OK。流石に疲れたよ。早く終らせて帰ろうぜ。」

「そういえば、マコトは環の中にいなかったけどいいの?」

「ああ、俺はいいよ。目立つの嫌いだし。」

「あっそ。意外とクールなんだね。」

「そうさ、俺は案外クールで…………おいっ!聞けよ!」

「早く帰るんでしょう。」


格好をつけてみようとしたがイリスは全く聞く耳を持っておらず先に村長の村に行ってしまった。

結局マコトは大人しくイリスの後についていくしかなかった。



「…………という訳でもう少しこの村は警護をしないと。そのためには…………」


村長の家でイリスは事細かに事の顛末を話すとその後は今後の対策方までアドバイスした。

村の警備に対しては知識が乏しかったようで村長は目から鱗が落ちっぱなしだった。

そしてこのイリスの講義はたっぷり1時間以上続いた。

その間後ろでそれを見ていたマコトは疲労と眠気に負けない方法を今度イリスに講義してもらおうと思いながら眠気と戦っていた。


「…………寝てなかった?」

「いえ、寝てません。」


村長の前では笑顔だった。

村人の前でも笑顔だった。

村を出るまで送ってくれた人に対しても笑顔だった。

しかし村人が見えなくなるとマコトに対しては笑顔ではなかった。


「全く……人が真剣に話をしてる時に後ろで寝てるなんて……」

「だから起きてたよ。…………ちょっと眠気はあったけど。」


寝てないのは本当に本当だったがイリスは信じていないようだった。


「じゃあ、許す変わりに一つお願い聞いて。」

「だから寝てないからお願いも何も…………」

「今日部屋に泊めてくれない?」

「え?なんと?」


マコトは耳を疑った。

まさかお姫様(元)が一緒の部屋何ですかとうとう疲労が限界まで来たかと思った。

がしかし…………


「今日お金ないの。お願い!」


現実であることを確認したマコトはとりあえず今から入れる宿屋はあるのだろうと現実逃避を全力で行った。

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